夜の外側 イタリアを震撼させた55日間の映画専門家レビュー一覧

夜の外側 イタリアを震撼させた55日間

イタリアの巨匠マルコ・ベロッキオ監督が、「夜よ、こんにちは」でも描いたアルド・モーロ誘拐事件を関係者の多角的な視点を交え6エピソード構成で綴ったドラマ。1978年、極左武装グループ『赤い旅団』に誘拐された元首相解放に向け周囲は奔走するが……。アルド・モーロ元首相を「甘き人生」のファブリツィオ・ジフーニが演じるほか、「3つの鍵」のマルゲリータ・ブイ、「LORO 欲望のイタリア」のトニ・セルヴィッロらが出演。2022年第75回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門出品作品。2023年、イタリア映画界最高峰の賞である第68回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞にて最優秀監督賞、最優秀主演男優賞(ファブリツィオ・ジフーニ)、最優秀メイクアップ賞、最優秀編集賞を受賞。イタリア映画祭2023上映作品(映画祭題「夜のロケーション」)。
  • 映画監督

    清原惟

    イタリアで実際に起きた誘拐事件を基にした、5時間40分もの超大作。議員、テロリスト、家族、教皇など様々な立場の視点をもって多層的に描いている。実際の多くの出来事が起こっているときにはわからないことが多いように、渦中にいる人間の感じる混乱がそのまま描かれているような臨場感があった。長い映画でありながらどのシーンもスマートに作られていて、疲労はあっても飽きることはない。一人ひとりの物語の片鱗がたくさんあって、もっと彼らを知りたかったと思うくらいだった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    20年前に「夜よ、こんにちは」で描いたアルド・モーロ元首相誘拐・殺害事件を340分という長尺で再話するマルコ・ベロッキオの意図は奈辺にありや。確かなことは単純な二項対立的なイデオロギーに依拠しない、真の《政治映画》の可能性が極限まで追求されていることだ。過去にフランチェスコ・ロージのような逸材を生んではいるが、ベロッキオは、もっと歴史、宗教が複雑に絡み合う人間性の深層に錘鉛をおろす壮大なフレスコ画のような映画を撮った。まさに前代未聞の試みである。

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