カタオモイの映画専門家レビュー一覧
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文筆家
和泉萌香
家出理由の中身だけはマルチバースのごとくの主婦。見始めてすぐ、ここまで大事故大犯罪に巻き込まれることなくやってこれたのが不思議な(知らない人から、ものをもらっちゃいけません!)ふわふわお姉さんキャラに少々びっくりするも、渾身のタックルなどは我慢できずに笑ってしまう。アルコール漬けの判断力、あなたに夢中!ほどの熱さには至らない、勘違いを楽しむ気楽な恋は、誰へでもなく、既に失われたものへの片想いだったりして。彼らの隣をのっぺり流れる川が静かに物語る。
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フランス文学者
谷昌親
女性のほうがかなり年上とはいえ、失意の男女がたまたま出会うボーイ・ミーツ・ガールであり、ロマンチック・コメディ的な物語を期待させる。そしてほぼ予想どおりの展開なのだが、終わってみると、いまおかしんじならではのツイストが効いていたと気づくことになる。大向こうを唸らせようとするような映画ではないが、だからこそ、川べりの町という設定をもっと生かすとか、重要な要素となるネギなどの細部にこだわったりすると、それこそ愛すべき小品になったかもしれない。
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映画評論家
吉田広明
ヒロインのブリっ子が最初は鼻につくが慣れるとその臭みがむしろ良い、と思えてくるわけでもなく、それは最後までキツいのだが、男の元カノになりすましてのライン交換で、それぞれが幻想の相手とカタオモイ、男と女のことだから、それがなし崩し的に本物になってゆくだらしなさも、それが年の差なのでちょっとイタい感じも、あれ、この二人ほんとにヤっちゃうのか、とこっちが狼狽えてしまう感じも、決して悪くはなく、しかしすべてが成立するのはあの女優の肉体ゆえだと最後に気づく。
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