ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)の映画専門家レビュー一覧

ジャン=リュック・ゴダール 反逆の映画作家(シネアスト)

映画監督ジャン=リュック・ゴダールの謎に包まれた作家人生を紐解くドキュメンタリー。彼の革新的な功績を整理し、網羅的に紹介するほか、家族や友人、元パートナーたちによる証言や、豪華な出演陣によるインタビューを織り込み、その知られざる素顔に迫る。監督・脚本・編集は、ドキュメンタリーの編集を数多く手掛けてきたシリル・ルティ。第79回ヴェネツィア国際映画祭ヴェネツィア・クラシック・ドキュメンタリー部門上映作品。
  • 映画監督

    清原惟

    ゴダールが持つたくさんの顔たちを、まとめたり結論づけることなく、バラバラなまま提示しているのがよかった。ハンナ・シグラやナタリー・バイなどの大女優たちが、昔ゴダールと過ごした時間を、ついこの間のことのよう話している姿に感動する。親友のように分かり合えた女優たちと、そうじゃない人たちがいるというのも、ゴダールの闘争のひとつだったのかもしれない。偉業や孤独をヒロイックに描いているところがやや気になるが、ゴダールの膨大な活動を振り返るよい機会になった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    ゴダールの矛盾に満ちた生涯を簡潔に描いた秀逸なドキュメンタリーだ。盟友トリュフォーは60年代の神格化されたゴダールをビートルズに準えるが、思春期からすでに家族に見棄てられた存在であった二人は極めて似ている。だが理不尽な〈女性嫌悪〉を指摘するM・メリル、プロポーズされて断ると二度と口を利かなかったと述懐するM・ヴラディ。大半の主演女優と親密な関係をもったトリュフォーとは対照的である。改めて神話の淵源である60年代ゴダールに思いを馳せてみたくなる。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    “ゴダール伝説”を強化するのとも偶像を壊すのとも異なるドキュメンタリー映画。描かれるのは「人間ゴダール」。初期作に感じたあの遊び心、偏屈ものの人懐こさといったものを思い出させてくれた。ゴダールといえば孤高の映像美だが、同じくらい発言に影響力があり、心酔者は軽く触れただけで酔っぱらってしまう。ぼくにも忘れられない「発言」があって、いま思い出すのは米誌『ローリングストーン』に自らの「伝説」について語った言葉――「ぼくの伝説は、伝説と戦う人物、という伝説だ!」

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