首(2023)の映画専門家レビュー一覧

首(2023)

北野武が原作・監督・脚本・編集・出演を務め、本能寺の変を独自の歴史観で描いた時代劇。信長が天下統一を掲げ、毛利軍、武田軍、上杉軍などと戦っていた最中、家臣の荒木村重が反乱を起こし、姿を消す。信長は秀吉、光秀ら家臣に村重の捜索を命じるが……。出演は、「ドライブ・マイ・カー」の西島秀俊、「MINAMATA-ミナマタ-」の加瀬亮、「怪物」の中村獅童。第76回カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門出品。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    「いつの世も“天下人”などと呼ばれるヤツらは、ろくでなしばかり」という北野武監督らしい歴史観を、北野作品らしからぬ超大作ルックで見せるという大がかりな転倒に、まず面食らう。かつて「血と骨」で共闘した撮影の浜田毅が堂々たる仕事をしている。合戦シーンになると普通の映画に見えるきらいもあるが、「乱」を撮ったころの黒澤明とほぼ同年齢だと思えば、この大作志向と「昔ほど遊ばない感じ」にも納得がいく。欲を言えば、衆道の描写にはもっと繊細さと実感が欲しかった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    北野監督が戦国時代と戦国武将たちを好き勝手に切り刻んだ血まみれスプラッターホラーである。ビートたけしが演じている秀吉はただの生首フェチで、加荑亮の信長も気まぐれで残忍な変質者、人気俳優たちが勢揃いした武将役はどいつもこいつも裏ありの二枚舌野郎、まさに生首ゴロゴロ、血の量も半端ない。北野監督がどういう意図で脚本、編集まで手掛けたのかは不明だが、悪趣味な笑いを含めもう最悪! とはいえ、血まみれ狂気は世界の現実でもある。監督はそれを予感した!?

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    北野映画としては最長の空白期間を経たものの時代劇版「アウトレイジ」を期待するなら十分満足させる。方言を多用する残虐で狂的な信長(加瀬亮が絶品!)、狡猾かつ武士の格式ばった振る舞いを嘲笑う秀吉、とぼけた家康のキャラ付けも良く、史実との年齢差も気にならない。ウエットになりかけると瞬時に冷徹な裏切りや死が訪れるドライな視点が徹底されるのも良い。ただし、初期作に見られた色気のある同性愛描写に較べれば、今回の衆道描写は即物的すぎて取って付けたよう。

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