グランツーリスモの映画専門家レビュー一覧
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文筆業
奈々村久生
ゲーマーからレーサーへの転身はいわば異業種からの参戦で、本流からすれば邪道。そのプロジェクトに目新しさはあるものの、映画としてはほぼオーソドックスなサクセスストーリー。実話ベースではあるが、ゲームのスキルと経験を生かしたドライビングテクはロジック的な要素と描写にとどまり、映像表現だからこそ、ゲームと実戦の垣根やつながりに体感レベルで説得力を持たせる難しさも浮き彫りに。主人公のガールフレンドが「主人公のガールフレンド」以外の何者でもなさすぎて困惑した。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
楽しかった。CMというか企業PVだなあとは思ったが、もしフィクションで作られたんだったら成功の裏で必ず起きる無意味な出来事や矛盾したことが何もないのは甘すぎてシラけただろう。敗者や死者のその後も追わない。しかしこれは実話だからこそ、そのへんはカットいたしました!とサワヤカなので腹は立たない。監督の商品への愛が凄いし演出の腕もいい。テレビやWebで見たくもない面白くない短いCMをタダで見せられるより全然いい。CMは金を払って見る時代で、これでいいのだ。
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映画評論家
真魚八重子
ある意味定番なのだ。しかし市井の才能を持った若者が、紆余曲折を経て実践的なプロとして成功に向かう、その大定番のドラマツルギーが完全に押さえられていて、見事な青春映画となっている。部屋でゲームをしていた青年が、実際のレーサーとしてスカウトされ努力する。だが徐々に評価を受け、手応えを感じ始めた矢先、束の間の幸福が挫折を迎える。慢心、傷心、自己を見つめ直す、鍛錬、再挑戦という教本のような抑揚の見せ場。おやっさんとの熱い絆も完璧。ル・マンの夢のような晴れやかさに泣く。
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