BAD LANDS バッド・ランズの映画専門家レビュー一覧

BAD LANDS バッド・ランズ

『破門』で第151回直木賞を受賞した黒川博行による小説『勁草』を「ヘルドッグス」の原田眞人監督が映画化した犯罪サスペンス。大阪で特殊詐欺に加担し暮らす姉ネリと弟ジョー。ある夜、思いがけず億を超える大金を手にしてしまい、様々な巨悪が二人に迫る。特殊詐欺を生業とする橋岡煉梨(ネリ)を「怪物」の安藤サクラが、ネリの弟・矢代穣(ジョー)を「燃えよ剣」でも原田作品に出演したHey! Say! JUMPの山田涼介が演じるほか、宇崎竜童、生瀬勝久、江口のりこら豪華俳優陣が集結し、くせ者たちがひしめき合う悪の巣窟を描く。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    90年代に原田眞人作品を追いかけた身としては、ただただ嬉しい犯罪映画。地べたを這いずる小悪党が勝負に出る、そして大いに追われ、逃げる、監督得意の作劇に高揚。それをまた、原作の設定を変えてまで女性を主役にしたのも英断。安藤サクラの醸す「しぶとさ」に胸踊り、サリngROCKという新鮮な才能との出会いも嬉しい。関西弁のセリフの応酬も小気味よく、場所によっては他県にセットを建てたという大阪描写もムード満点。瑕疵がないとは言わないが、好きが全部上回った。

  • 映画評論家

    北川れい子

    原田監督の前作「ヘルドッグス」は、キレのいいアクションと遊びごころのある演出が際立っていて、ハラハラ、ニヤニヤ、大いに楽しんだが、今回はニヤニヤ的な場面はほとんどない。演出もストレートで、主演の安藤サクラも前屈みでツンのめるように動き回っている。大掛かりな特殊詐欺グループのメンバーで、弟がいる。そんな彼女が組織の裏をかこうとしたことから、出口なしの状況に。その過程で見えてくる彼女の生まれ育ちが壮絶で、観ているこちらも前のめり。そして嗚呼、弟。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    毎回原田映画を好ましく観つつ、カットが細かすぎる編集、脱線しすぎる挿話、情報量過多といった近作の不満が一掃され、Vシネマ時代が甦ったよう。ヒロインの逗留地として大阪を描き、ここではない世界へ向かおうとするのは渋谷を描いた傑作「バウンス」と同様だが、安藤の身体性を生かした撮影が大阪の空気感を作り出す。大胆な配役は相変わらず素晴らしく、天童よしみまで良い。未知のサリngROCKの存在感にも圧倒。原田組最古参の宇崎竜童が見事な老いを見せ、助演男優賞確実。

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