カラオケ行こ!の映画専門家レビュー一覧
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文筆家
和泉萌香
面白かったので原作も買った。ヤクザが真面目な中学生男子に歌の教えを乞うという斬新な設定が第一、名前や組員たちの選曲、などなど小さなエピソードもそんなわけあるか、というユーモアの積み重ね(組長も、この人かい!という実写化ならではの楽しさ嬉しさ)。映画に付け加えられた学校生活の様子、思春期の葛藤なども大人視点のノスタルジーに浸かりすぎないのがいい。カラッとしつつも一定したチャーミングなトーンを支える、ポーカーフェイスの齋藤潤さんはじめ若手俳優たちに拍手!
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フランス文学者
谷昌親
青春映画にヤクザ映画を足してコメディの要素を引き出したとでも言える、おもしろい味わいの作品になっている。しかし、それが可能になったのは、カラオケ大会で組長を前に歌を披露しなければならないヤクザが、中学生の合唱コンクールを聞きに来た、という設定があってのことだ。要するにシチュエーションコメディとしてのおもしろさを前面に出した作品なのである。だが、山下敦弘監督であれば、そうした特異な状況に頼らずとも、彼ならではのとぼけた味わいを出せたのではあるまいか。
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映画評論家
吉田広明
ヤクザが合唱部の中学生に歌を教えてもらうためカラオケに日参する。こんな無茶苦茶な話が通用するのはコミックの中だけであろう。実写で見るとこれはいかにもキツい。その設定の無理は無理としても、そこを出発点に映画的な何かが生まれるわけでもない。ヤクザといっても怖い顔でガナるだけの表面的な造形、中学生たちもただの人形、また二人の関係が人間的に進展し、新たな様相が現れもしない。映画が所詮暇つぶしに過ぎないにしても、もっと上等な作りの作品に費やしたいものだ。
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