ゆとりですがなにか インターナショナルの映画専門家レビュー一覧

ゆとりですがなにか インターナショナル

日本テレビ系列で2016年4月期に放送されたドラマ『ゆとりですがなにか』の劇場版。“ゆとり世代”と名付けられた正和、山路、まりぶのゆとり3人組も30代半ばを迎え、人生の岐路に立たされていた。そんな彼らに、想像を超える新時代の波が押し寄せる。「1秒先の彼」の岡田将生、「耳をすませば」の松坂桃李、「さかなのこ」の柳楽優弥らドラマのキャスト陣に加え、「シャイロックの子供たち」の木南晴夏、「アキラとあきら」の上白石萌歌らが出演。監督は、「アイ・アム まきもと」の水田伸生。脚本は、「1秒先の彼」の宮藤官九郎。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    あらゆる多様化についていけない、アップデートできない世代の悲哀を描いた諷刺コメディ……にしたかったのかもしれないが、アップデートできてる側との対等な相対化がなされないので、学びも成長もなく、総じて自己憐憫と開き直りに終始する。加えて、ドラマ版で全部やりつくしたのに無理やり作った劇場版の典型のような、弛緩した構成も苦痛。これだけ当代一の人気俳優を揃えながら、ちっとも面白くならないのは逆にすごい。「だから映画って嫌い」とドラマファンにも言われそう。

  • 映画評論家

    北川れい子

    映画というよりは、人騒がせなゆとりキャラ三羽烏に、流行や世相、国籍や世代の違いなどを絡めた連携プレイ仕立てのテレビコント集でも観ているよう。当然、俳優陣の演技もテンション高めの上っ面。むろん、脚本の宮藤官九郎も、水田監督も、あえて上っ面路線でシニカルな笑いを狙っているのだろうが、土下座や小学生たちの大人顔負けの正論など、かなり悪ノリ。ゆとり世代には女性もいるのに、ボクたちだけでドタバタして、だからなのか、見終わっても何一つ残らない。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    ドラマ版は未見ながら、映画に親しい俳優たちがクドカン脚本でワチャワチャする姿を見るうちに、すんなり坂間家へ入り込めてしまう。柳楽が自由奔放に振る舞い、安藤が強烈な磁場を発揮する。それをすべて受け止める岡田、松坂も見事。過剰なまでに今の風潮を取り入れた作劇は、後世に2023年の時代感を伝えるのでは。若者にウザがられる年齢になった世代が、若者ぶることと、精神的な若さを維持することの差異を鮮やかに映し出す。2作同時期公開される水田監督、本領発揮の一本。

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