身代わり忠臣蔵の映画専門家レビュー一覧

身代わり忠臣蔵

「超高速!参勤交代」「引っ越し大名!」を生み出した土橋章宏による同名小説を原作に「総理の夫」の河合勇人監督が映画化。吉良上野介が城内で斬りつけられ死亡した。逃げ傷で死んだとなれば、お家取り潰しは避けられない。家臣は主君の弟・孝証を替え玉にするが……。出演は「神は見返りを求める」のムロツヨシ、「怪物」の永山瑛太、「九月の恋と出会うまで」の川口春奈、「犬部!」の林遣都。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    ムロツヨシの芝居を楽しみたい人には満足度の高い内容だろう。最大の見どころは柄本明との共演シーン。かつて劇団東京乾電池の研究生時代に柄本の厳しい指導を受けたというムロが、今度は主演俳優として対峙する場面には愉しい緊張と興奮が走る。映画自体は「忠臣蔵」の大胆な脚色に見えて、武士道は特に否定しない保守系コメディ。仇討後の赤穂浪士たちの末路も含めて本来ひどい話だと思うので、もっと主人公の生臭坊主の視点から「美談」を派手にひっくり返してほしかった。

  • 映画評論家

    北川れい子

    忠臣蔵も世につれ、作者につれ。今回は敵役・吉良上野介の実弟である生臭坊主が、金に釣られて床に伏した吉良の影武者になってのドタバタ忠臣蔵で、影武者役のムロツヨシも、大石内蔵助の永山瑛太も、重厚、風格とは一切無縁のカジュアル演技。二人が以前、出会っているというのが、いざ討ち入りのネックに。とはいえ幕府の非情さや家臣の動きなどは最低限描いていて、忠臣蔵に馴染みのない若い世代の入門書にもなるかも。四十七士の数もしっかり抜かりなく、オチも悪くない。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    近年に限らず、90年代に市川崑と深作欣二が競作した頃から忠臣蔵映画は外伝傾向が強くなっていったが、本作は最も跳ねた内容かつ、笑える。忠臣蔵に「影武者」を混在させるアイデアが良く、偽物の吉良が大石と討ち入りを共謀したりするが、史実との駆け引きもうまい。ムロツヨシが往年の日本の喜劇人的存在感を増し、出てくるだけで面白くなる。終盤は北野武の「首」を観た後では物足りなくなり、吉良と大石の衆道まで描けたのではないかと思えてくる。東映京都の美術が際立つ。

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