湖の女たちの映画専門家レビュー一覧

湖の女たち

吉田修一による同名小説を「日日是好日」の大森立嗣監督・脚本で映画化。湖畔の介護施設で百歳の老人が殺された。事件を追う若手刑事・圭介とベテランの伊佐美。週刊誌記者・池田が過去の事件を探るなか、圭介は取り調べで出会った介護士・佳代と密会を重ねてゆく。出演は「旅猫リポート」の福士蒼汰、「夜、鳥たちが啼く」の松本まりか、「あの娘は知らない」の福地桃子。
  • 文筆家

    和泉萌香

    同時期に鑑賞した他作品にもあったが、他人を好きになることを半ば「決める」、周囲は理解し難い二人だけの倒錯的な関係に身を投じてみるのは現代において一番──本作の台詞を借りるなら頭がおかしい、おかしくなれる、ような──体験であるかもしれないし結構なこと。施設での殺人事件と関係者の愛欲関係という場所から出発し、戦時中の日本軍の残虐さにも話は触れるも深まりはなく、バランスを崩したまま、突如発せられる「世界は美しいか否か」の問いにはひたすら違和感があった。

  • フランス文学者

    谷昌親

    介護療養施設での殺人と強引な捜査があり、男女のインモラルな関係があり、それらが最終的には戦時中の731部隊にまでつながっていくという、深さと広がりのある物語が、ぎくしゃくしながらもなんとか映画に仕立てられている。逆に言うと、ぎくしゃくしているからこそ成り立つ作品なのかもしれない。集落のなかをめぐる水路を生活用水として使い、介護の合間に琵琶湖の夜明けを眺め、その琵琶湖に最後は身を投じるヒロインの佳代が、なんとも不可思議な潤いを画面にもたらしている。

  • 映画評論家

    吉田広明

    731から相模原を経て、名を記すも筆の穢れ杉田某に至る、生産性なき者死すべし論の系譜と、これも731につながる薬害捜査を権力で握りつぶされて精神が歪んだ刑事の部下へのパワハラ、その部下の事件関係者への性強要という権力の負の連鎖。この二つの系譜の接合がいささか強引な印象はあるが、作り手の怒りはひしひしと伝わる。ただ、弱者への卑劣な性強要にしか見えない福士と松本の関係を、生産性から外れるオルタナな愛の形を提示しているとするのはかなり強弁な気がする。

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