傷物語 こよみヴァンプの映画専門家レビュー一覧

傷物語 こよみヴァンプ

西尾維新による小説を劇場アニメ化した「傷物語」三部作を再構成した総集編。高校2年生の阿良々木暦はある夜、血も凍るような美女と遭遇する。彼女は四肢を失い、痛々しくも無残な伝説の吸血鬼、キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードであった。声の出演は『進撃の巨人』の神谷浩史、「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の坂本真綾、『モンスターストライク THE MOVIE ルシファー 絶望の夜明け』の堀江由衣。監督は「傷物語」三部作の尾石達也。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    これほど「本来熱狂するべき映画ファンに観られていない傑作アニメ」はないと思っていたので、再びチャンスが訪れたのは本当に喜ばしい。元の三部作を一本の長篇に再構築した鋭利な編集、よりムードを増し輪郭が明確になった音楽・音響設計など、このバージョンだけの魅力も大きい。何より尾石達也という鬼才の仕事をいまこそ認識してもらいたい。クライマックス、国立競技場を舞台に繰り広げられる吸血鬼同士の壮絶なバイオレンスの応酬は、映画史に残る一大流血残酷絵巻。眼福!

  • 映画評論家

    北川れい子

    すでに公開されたアニメシリーズを1作にまとめた作品だそうで、知る人ぞ知るアニメらしいが、こちらは初見、不穏な空気が充満するオープニングからしてただごとではない。ダークで殺風景なのに奇妙な重量感のある空間と、禍々しくも人間的な吸血鬼たちの葛藤とアイデンティティー。とはいえキャラの立場を飲み込むまでにかなり時間を要したのだが、絵の動きよりも、ラジオドラマのように台詞を軸にした進行は、声優たちの力演で説得力があり、口元のアップの多用も効果的。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    原作も未読なら、三部作で公開された元の映画も未見では、とても良い観客とは言えないが、一見さんお断り映画かと恐々として観ると、これが出色の吸血鬼映画で堪能する。地下鉄、廃墟ビルなどの都市空間を巧みに生かし、繰り返される四肢切断と鮮血を下品になることなく見せる。カットの短さに文字の挿入の多さも含めて、かなりのガチャガチャ編集だが、市川崑の編集に通じるスマートな繋ぎが際立ち、ギャグも邪魔にならない。予備知識なしでも魅了されるだけに、ファン以外もぜひ。

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