サイレントラブの映画専門家レビュー一覧
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ライター、編集
岡本敦史
キャストもスタッフも一流どころが揃っているが、中身は度肝を抜くほど古くさい。洗脳かと思うほど何度も繰り返される「住む世界が違う」というセリフも含め、いまどき格差社会をこんな類型的に描くことに驚く。かといって古典的メロドラマを突き詰めるかと思いきや、過剰な暴力シーンがアンバランスに盛り込まれたりするのは、やはり北野武オマージュ? これだけ確信犯なら何を言っても馬耳東風かもしれないが、いろいろかなぐり捨てた代わりに何を達成したのかさっぱり理解できない。
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映画評論家
北川れい子
メロドラマやラブストーリーにはルールなし。とは言えここまで嘘っぽいといささかゲンナリしてくる。喉の怪我で声をなくし、今は音大で雑用をしている若者が、交通事故で視力を失った音大生のために「街の灯」のチャップリンのように、あるいは何度も映画化されている谷崎潤一郎の「春琴抄」の丁稚のように、自分を無にして尽くしましたとさ。さすが周辺のエピソードには今風な要素を盛り込んでいるが、少女漫画だって扱わないような話を臆面もなくやっている内田監督、いい度胸。
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映画評論家
吉田伊知郎
目の不自由な浜辺を、声を失くした山田が密かに助けていたという設定は良いが、ステレオタイプな障がい者描写を忌避した結果、見えない・喋れないという部分がおざなりに。山田が声を失くした理由は安易なフラッシュバックではなく、浜辺がある段階で知るべきではなかったか。音楽が久石譲ということもあり、描写面でも北野武の影がチラついてしまうが、「アナログ」がどの時点で謎を明かすか計算されていたことを思えば、本作の後半の展開は台詞で説明してばかりで釈然とせず。
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