ポトフ 美食家と料理人の映画専門家レビュー一覧

ポトフ 美食家と料理人

「青いパパイヤの香り」の名匠トラン・アン・ユン監督による第76回カンヌ国際映画祭 最優秀監督賞受賞作。19世紀末フランス。料理人ウージェニーは、美食家ドダンのもとで20年間働いている。ある日、2人は最もシンプルな料理“ポトフ”で皇太子をもてなすことに。出演は「真実」のジュリエット・ビノシュ、「愛する人に伝える言葉」のブノワ・マジメル。
  • 文筆業

    奈々村久生

    料理の工程をじっくりと丁寧に見せるだけで画が持つ、まさに映像を味わう一本。料理人の手元と食材の変化がどんな言葉よりも雄弁に物語る。絵画のような画づくりは、自然光をメインにしたとは思えない豊かな陰影が見事。本作はプロデュース・衣裳・アートディレクションにも名を連ねる監督の妻イェン・ケーに捧げられ、劇中のウージェニーとドダンの関係は、監督夫婦になぞらえられていると思われる。それは婚姻関係よりも共に作品を作るパートナーとして相手を尊重する、最大限のラブレターだ。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    おだやかだが迫力に満ちた台所。うまそうなのに観客は食べられないのが料理映画だが、調理の過程をこれだけ異様に時間かけて見せられてると不思議なことに口中で味がしてくる。音楽は一切なく庭の鳥のさえずり、包丁や食器の響き、煮える鍋、はぜる脂、遠い鐘の音。仕事場なのに日常にパワハラはない。人生なので熟女のエロスはある。白人ばかりだからハリウッドでは撮れない。古すぎて、かえって新しい男女関係の型式。先の読めないあざやかな展開。「ナポレオン」観た人、これも絶対観て!

  • 映画評論家

    真魚八重子

    料理というのはつくづく際限のないハードワークだ。愛の成り行きを見守る映画としては、ビノシュを取り巻く薄っすらとした影と、彼女の後を継げるような、絶対音感ならぬ絶対味覚を持った少女の早い登場で、展開はおおよそ感じ取れる。期限のわからない愛や夢を抱えて、不安とともに我々は生きるしかない。マジメルとビノシュの書類上のパートナーにならない、緩やかゆえの緊張感がいい。既婚の料理人が食事を作るのは、妻の義務になりかねず、彼女はあくまでプロの料理人の立場を貫いたのだろう。

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