エターナル・ドーターの映画専門家レビュー一覧

エターナル・ドーター

ティルダ・スウィントンが一人二役ですれ違う母娘を演じたミステリー。年老いた母ロザリンドを連れて人里離れたホテルを訪れた映画監督のジュリー。彼女は謎めいたこの場所で、母についての映画を作ろうとするが、やがて母の隠された秘密が明らかになり……。マーティン・スコセッシが製作総指揮を務め、ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門にも出品された。
  • 映画監督

    清原惟

    古めかしい洋館のようなホテルにやってくる母と娘。何かが起きそうな雰囲気があるが、なかなかその正体は分からない。恐怖の予感だけが日々繰り返されて、小さな謎に耳をすましたり、様式美的なリズムに気持ち良さを感じていたそのとき、一つの結末が訪れた。ティルダ・スウィントンが母と娘の両方の役を演じるが故に、二人が同じカットに映ることはない。しかし、その仕掛けには映画的なギミックだけではない、聖者と死者を隔て、そして繋いでくれるものでもあるモンタージュがあった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    ティルダ・スウィントンは能面のような無表情を湛えている一方、内面に無尽蔵な激情を秘めている神経過敏なヒロインも似合う稀有な女優だ。深閑とした森にそびえる古式ホテルに逗留する映画監督とその母を一人二役で演じた本作は、そんな彼女のミステリアスな両義性の魅力が遺憾なく発揮されている。迫りくる老い、死の予感、そして鏡、階段、風の音、窓の不気味な活用。ミニマリズムに徹した語り口によって「レベッカ」「らせん階段」などの古典的ゴシック・ホラーの格調を感じさせる逸品。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    ティルダ・スウィントンとのコラボでも知られるジョアンナ・ホッグは評価の高い監督だが、日本では重視されてこなかった。その作品は個人的・半自伝的で、コロナ禍に撮影された新作もまた独立しつつ、前作「ザ・スーベニア」と未公開の「PartⅡ」と同名の母親役をスウィントンが演じる連続性を持つ。古いホテルを舞台にジャック・ターナー的なゴシックホラー演出―霧、鏡、壁紙、階段―を華麗に纏いながら、中年女性監督と死を意識させる老母の絆を伝えるこの注目作は魅惑的な入口になると思える。

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