ボーはおそれているの映画専門家レビュー一覧

ボーはおそれている

「ミッドサマー」のアリ・アスター監督×「ジョーカー」のホアキン・フェニックス主演によるスリラー。さっきまで電話で話していた母が突然、怪死したことを知るボー。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出るが、そこはもう“いつもの日常”ではなかった……。共演は「マイ・プレシャス・リスト」のネイサン・レイン、「ワース 命の値段」のエイミー・ライアン、「教授のおかしな妄想殺人」のパーカー・ポージー。
  • 文筆業

    奈々村久生

    「ヘレディタリー/継承」から連綿と受け継がれる母性神話と生殖への徹底した懐疑。それこそがアリ・アスターの哲学であり、本作はその結実の一つを提示する。主人公ボーが直面するカオスは、映像から得られる情報以外には一切の説明を欠いており、これがドッキリだとすれば観る者はネタバラシをされないまま不安と焦燥を延々抱え続けることになる。だが理性を凌駕する圧倒的なイメージの力によって、家族というものの本質に逆説からたどり着いた結末が悲劇であるとは思わない。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ

    星10個。いまどき、こんな精神分析的な喜劇映画を作っていいのか。いいのです。母を愛しすぎてたり、親からひどい目にあって今でも親を憎んでいたり、親のせいで人を愛することも適切な距離をとることもできなくなって人生が滞ってる、すべての人のための映画だから。「へレディタリー/継承」の答え合わせでもあり、「へレディタリー」より怖い。往年の筒井康隆ファンも必見。ラース・フォン・トリアーのファンも必見。日本のSNS上の冗談概念〈全裸中年男性〉をホアキンが演じてるのにも感動。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    非常に難物だが、基本の型は「ヘレディタリー/継承」と同じで、家族が下の代に災難をもたらす物語である。アスターは本作をブラックジョークと言い、確かにそうではあるものの、母親が息子を心身ともに破壊する話を笑うのは難しい。世界は暴力に溢れ荒涼としており、劇団の映画内演劇にしか落ち着ける場所はない。確かに我々も内心、この世界を生きづらいと思っていても、アスターの家族観の極端さは死に至るので、さすがに戸惑いを覚える。ただ家族が災厄というのは、恐ろしいが真実ではある。

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