違国日記の映画専門家レビュー一覧
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文筆家
和泉萌香
両親を失った少女の、世界に一人ぼっちになってしまったような感覚、足湯の暖かさや食事の美味しそうなこと、朝日の美しさなど、視覚と聴覚をくすぐる魅力は実写映像化ならでは。ただ、エピソードや、登場人物たちが紡ぐたくさんの言葉、心の移り変わりとがじっくりと積み重ねられていく原作漫画を思うと、作中での台詞も切り貼り、すべてを短く縮めたことにより(仕方がないことだが)テーマが不明瞭なのも否めない。槙生の複雑さと、愛に対する葛藤にもう少し注力してほしかった。
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フランス文学者
谷昌親
他人またはそれに近い関係の2人が同居することになるという物語は珍しくはないが、この映画の場合、徐々に変化する2人の関係性が丹念に描かれていて心地よい。新垣結衣が槙生役かと当初はやや疑問を感じたが、引きこもり気味でぶっきらぼうでありながらも誠実な小説家をうまく演じているし、朝役の早瀬憩は、その初々しさが槙生といいバランスを生み、高校でのミニライブのシーンにも活かされている。スタッフやキャストの充実した仕事ぶりがそのまま画面に反映しているかのようだ。
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映画評論家
吉田広明
新垣と早瀬の二人が一緒に暮らすことで共に変化するドラマ。ただ、死んだ母=姉がどういう人物かが不明瞭なため、二人が迎える変化の違いが明確な像を結ばない。新垣から見れば、姉は彼女を抑圧した「世間一般」=仮想敵ゆえ、姉との和解とは世間を知り大人になることを意味する。そんな変化は必要だったかの疑問は措き、理解は可能。一方早瀬の視点からすれば母への屈託はない以上、母を嫌った新垣=叔母の視点を通じて母を見ることがもたらした変化がどんなものなのか今一つ判然とせず。
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