ディア・ファミリーの映画専門家レビュー一覧

ディア・ファミリー

1970年代、娘のために人工心臓の開発を始めた家族の実話を大泉洋主演で映画化。生まれつき心臓疾患を持っていた娘・佳美は、余命10年を告げられる。小さな町工場を経営する父・宣政は医療の知識も経験もなかったが、自分が人工心臓を作ると立ち上がる。出演は、「明日の食卓」の菅野美穂、「今夜、世界からこの恋が消えても」の福本莉子、「変な家」の川栄李奈、「DTC 湯けむり純情篇 from HiGH&LOW」の新井美羽。監督は、「君の膵臓をたべたい」の月川翔。原作は、清武英利の『アトムの心臓『ディア・ファミリー』23年間の記録』。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    「実話ベースのお涙頂戴もの」というイメージで甘く見てはいけない良作。日本人好みの『下町ロケット』的な熱血技術開発秘話と、常に哀歓を湛えた家族の年代記が並行して描かれる物語は、現実の悲劇に対して不謹慎な物言いだが、秀逸な構造である。それに対してオーソドックスに徹する演出の賢明さも好ましい。ただ、IABPバルーンカテーテルという名称を劇中であれだけ連呼するなら、もっと専門的ディテールを見せてもよかった。観客の知識欲も満たすことが作品の厚みになるのだから。

  • 映画評論家

    北川れい子

    かつてのNHKの看板ドキュメンタリー『プロジェクトX 挑戦者たち』が、『新プロジェクトX〜』としてこの4月から復活したが、本作はさしずめ“プロジェクトX“の個人版。町工場の経営者が、心臓に疾患のある娘のために、自ら時間と資金を注ぎこんで医療器具の開発に挑み、やがて多くの命を救う器具を完成するまで。むろんその過程で大学の研究者や専門家なども関わり、具体的な器具がいくつも作られる。主人公の飽くなき探究心と家族愛には頭が下がるが、大泉洋の見え見えの熱演が煩くも。ごめん。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    冒頭でカテーテル開発をめぐる映画であることが明かされるので、人工心臓の開発に四苦八苦する前半に、いつカテーテル開発に切り替わるのかとやきもき。しかし、大泉の軽やかさが猪突猛進型のキャラを暑苦しくさせない。川栄、福本ら姉妹の関係性もさり気なく描かれ、押しつけがましい感動映画にならないよう慎重に計算されている。菅野美穂の吐息芝居が妙に引っかかった点を除けば流石は月川翔。70年代から現代へと時代性を程よく表出させた見せ方も大味にならず好感。

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