カラーパープル(2023)の映画専門家レビュー一覧
カラーパープル(2023)
ピューリッツァー賞を受賞したアリス・ウォーカーの小説を、1985年のスティーヴン・スピルバーグ版に続いて二度目の映画化。ブロードウェイで大ヒットしたミュージカル版をベースに、父に疎まれ、10代で望まぬ結婚をした黒人女性の不屈の生き様を描く。出演はブロードウェイ版でも主演を務めたグラミー賞受賞歌手のファンテイジア・バリーノ、「ドリーム」のタラジ・P・ヘンソン、「ラスティン:ワシントンの『あの日』を作った男」のコールマン・ドミンゴ、「リトル・マーメイド」のハリー・ベイリー。
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文筆業
奈々村久生
シスターフッドと女性たちの連帯。1985年版のリメイクだが驚くほど昨今の時流に乗っている。この40年間は一体何だったのか。ヒロインの義理の娘ソフィアが男性陣に強烈な皮肉を浴びせるシーンで、鑑賞時に男性の笑い声が聞こえたが、出所後である彼女がどんな思いで自分を取り戻そうとしているかを考えたらとても笑えなかった。その痛みがわかることをよかったと思える日がいつか来ればいい。ミュージシャンのH.E.R.がこんな顔だったっけ?と思うほどのあどけなさで新鮮。
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アダルトビデオ監督
二村ヒトシ
太った黒人女性たちの、その太りかたの美しさ。舞台版では寄りで見れない肌の美しさ、そして力強い歌声とリズム。僕にはミュージカルを味わう感性がないのだが、すばらしかった。スピルバーグ×ウーピーのストレートプレイ版は悲惨で暗かった。おなじ重い物語を、軽くではなく明るく伝えられるのが歌だ。黒人女性に生まれてしまった人生は過酷だという話が、すべての女は支配してくる男(暴力に限らず、経済、愛情搾取など)に対してもっと素直に怒っていいんだぜという話に再生した。
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映画評論家
真魚八重子
個人的にミュージカルは得手ではなく、サブスクから映画の歌曲を敢えて落とすことはない。そのため本作も歌が秀逸なのはわかるが、その間、物語の停滞を感じる人間なので、同類の方はしんどいと思う。また強烈なDVとモラハラが描かれ、黒人と信仰の結びつきの強さも前面に出される。妻をずっと侮辱し暴力を振るった男性を、妻が贖罪を認めてあっという間に赦すのは釈然としない。現代的なのはシスターフッドが重視され、肉体的な関係も仄めかされることで、全体に女同士のシーンは魅力的だ。
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