BAUS 映画から船出した映画館の映画専門家レビュー一覧
BAUS 映画から船出した映画館
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評論家
上野昻志
青森で活動写真の魅力に嵌まった兄弟が上京して、ひょんなことから、東京の郊外、吉祥寺の映画館「井の頭会館」で働き始めた1927年から、ムサシノ映画劇場を経てバウスシアターになるという、かの名物劇場の90年に及ぶ歴史を、兄弟を巡る家族の物語に重ねて語っていく。もともとは、青山真治が書いたシナリオを、甫木元空が改稿・監督したものだというが、冒頭に示される老人の回想というかたちにしたことで、どこか夢物語ふうな色合いを帯びることになった。
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リモートワーカー型物書き
キシオカタカシ
「逃走」にて居直ったかのように現代の風景がそのまま映し出されるたび現実に引き戻されてしまったのだが、限られた予算で“歴史”を描こうとすれば物理的アナクロニズムが避けられない。本作も制約の中で工夫を凝らしているものの限界は明らか。しかし逆に一種の異化効果と言うべきか、過去と現代がオーバーラップした存在として立ち上がる作用が生まれていた。過去からの想いを受け取り、その普遍性を今のものとして瑞々しい感性で語り直す――そんなタイプのアナクロニズムは大歓迎。
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翻訳者、映画批評
篠儀直子
活動家ではなくカツドウ屋しか出てこないけれど、映画を観ることも生活することも、すべては政治的な営みだという姿勢が全篇を貫く。そのまま朝ドラの題材にスライドできそうな物語にエッジが立つのはそのためであり、しかも出てくる人々は、たいして背景が描きこまれているわけでもないのに、みな熱い血がかよっている。そして驚くべきは、この映画がまぎれもなく甫木本監督の演出力を証明するものでありながら、なお青山真治の存在を強烈に感じさせることだ。この監督の早世があらためて惜しまれる。
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評論家
上野昻志
青森で活動写真の魅力に嵌まった兄弟が上京して、ひょんなことから、東京の郊外、吉祥寺の映画館「井の頭会館」で働き始めた1927年から、ムサシノ映画劇場を経てバウスシアターになるという、かの名物劇場の90年に及ぶ歴史を、兄弟を巡る家族の物語に重ねて語っていく。もともとは、青山真治が書いたシナリオを、甫木元空が改稿・監督したものだというが、冒頭に示される老人の回想というかたちにしたことで、どこか夢物語ふうな色合いを帯びることになった。
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リモートワーカー型物書き
キシオカタカシ
「逃走」にて居直ったかのように現代の風景がそのまま映し出されるたび現実に引き戻されてしまったのだが、限られた予算で“歴史”を描こうとすれば物理的アナクロニズムが避けられない。本作も制約の中で工夫を凝らしているものの限界は明らか。しかし逆に一種の異化効果と言うべきか、過去と現代がオーバーラップした存在として立ち上がる作用が生まれていた。過去からの想いを受け取り、その普遍性を今のものとして瑞々しい感性で語り直す――そんなタイプのアナクロニズムは大歓迎。
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翻訳者、映画批評
篠儀直子
活動家ではなくカツドウ屋しか出てこないけれど、映画を観ることも生活することも、すべては政治的な営みだという姿勢が全篇を貫く。そのまま朝ドラの題材にスライドできそうな物語にエッジが立つのはそのためであり、しかも出てくる人々は、たいして背景が描きこまれているわけでもないのに、みな熱い血がかよっている。そして驚くべきは、この映画がまぎれもなく甫木本監督の演出力を証明するものでありながら、なお青山真治の存在を強烈に感じさせることだ。この監督の早世があらためて惜しまれる。