ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディの映画専門家レビュー一覧

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

「サイドウェイ」のアレクサンダー・ペイン監督とポール・ジアマッティが再タッグを組んだヒューマンドラマ。1970年、アメリカの寄宿制高校。それぞれの事情で寮に残り、クリスマス休暇を過ごす非常勤教師と生徒、料理長の3人の間に小さな繋がりが生まれてゆく。共演は、本作で第96回アカデミー賞 助演女優賞を受賞したダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、第29回放送映画批評家協会賞 若手俳優賞など数々の新人賞を獲得したドミニク・セッサ。
  • 映画監督

    清原惟

    人間は自分以外の誰かのために自分の人生をつかうことができる。そのことを信じさせてくれる素晴らしい作品だった。初めは気軽な学園コメディだと思い観ていたが、少年が一人取り残されるあたりから、クリスマスの神聖な空気も相まって映画全体が神秘的な空気で包まれた。出てくる人たちは、別にみんな善人というわけでもない。それでも、たとえ人生の中の一瞬の出来事であっても、人間と人間の儚く強い結びつきが存在できたことに心震える。クリスマス映画の定番になってほしい!

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    1970年という映画の時代背景はアメリカン・ニューシネマの全盛期にあたるが、既成のヒットポップスを一見、無造作に垂れ流すような手法はまるで「卒業」のようである(映画館でD・ホフマンの「小さな巨人」を見るシーンあり)。無論下敷きになっているのはハル・アシュビーの「さらば冬のかもめ」だろう。互いに反撥しあう師弟関係が繊細な感情教育によって変容を遂げてゆく。こんな深い味わいをもったロードムービーは本当に久しぶりだ。ポール・ジアマッティの新たな代表作である。

  • 映画批評・編集

    渡部幻

    アレクサンダー・ペインは今もロードムービー作家であり続けていて、世がどうであろうとも人間主義を手放さない。名優ポール・ジアマッティも同様だ。例えば同じペインとの「サイドウェイ」、あるいはクローネンバーグの「コズモポリス」終盤で映画全体をさらったあの人間臭さ。1970年のクリスマスが舞台の教師と生徒の物語。冬の映画であり、70年代のハル・アシュビー好きは気に入るのではないか。我が道をゆくアメリカ監督による小さな宝石。ぼくならオスカーはジアマッティに投票しただろう。

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