Cloud クラウドの映画専門家レビュー一覧

Cloud クラウド

黒沢清が菅田将暉の主演で贈るサスペンス・スリラー。“転売ヤー”の吉井良介が知らないうちにバラまいた憎悪の粒は、ネット社会の闇を吸って成長し、誹謗中傷やフェイクニュースを経て、どす黒い集団狂気にエスカレート。やがて、“狩りゲーム”の標的となった吉井は……。共演は「お母さんが一緒」の古川琴音、「PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~」の奥平大兼。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    「蛇の道」リメイク版よりもずっと“みんなが好きな黒沢清”を感じた快作。クレショフ効果のごとくプレーンな表情から自業自得以上の意味を読み取られ、市民の憎悪の対象となる菅田将暉がまさにハマり役。シャブロル「ふくろうの叫び」を思わせる悪意の醸造劇にゾクゾクし、「CURE」にも通じる“異常者に認められること”がスイッチとなる構成に笑い、まさかの活劇展開になだれ込む無邪気な不自然さにワクワク。この監督・主演チームでサイコな「勝手にしやがれ」シリーズのような連作希望!

  • 映画評論家

    北川れい子

    現代は、生きているだけで誰でも加害者、誰でも被害者、と誰かが書いていたが、ネットを使って転売を繰り返している主人公が、集団暴力に曝されるという本作、極端な設定、極端な展開だが、奇妙な説得力がある。もともと黒沢清作品はかなり無口で、言葉より人物たちの黙々とした行動やその映像で話を進め、いつの間にか、観ているこちらをとんでもない世界に引きずり込み、というのが得意なのだが、今回はさらに過激化、後半のアクションなど、背景といい、戦場さながら。アンチヒーローものとしても痛快。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    2階の窓から下の道を見下ろせるアパートの一室、湖の傍の一軒家、巨大な廃工場。突如として降り出す雪も含め、相変わらず黒沢が作り出す空間は映画らしさにあふれ、あれよあれよという間に地獄の入り口へ突き進む。ネットを介した憎悪を無機質な菅田を通して肥大させる前半と、戦場さながらの銃撃戦が展開する後半へ。出鱈目なまでの過剰さがたまらない。窪田、岡山ら30代の実力派たちが明らかに乗って演じ、洞口依子的存在感の古川も良い。次世代が刷新した黒沢清的世界を堪能する。

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