フェラーリの映画専門家レビュー一覧

フェラーリ

フェラーリ社の創設者エンツォ・フェラーリの波乱と激動の1年を映画化。1957年、愛息を前年に亡くし、妻ラウラとの仲は冷め切っていたが、密かに愛し合うリナとの息子の認知は叶わない。会社は破産寸前のなか、エンツォは起死回生を賭けたレースに挑む。監督は、「パブリック・エネミーズ」のマイケル・マン。出演は、「アネット」のアダム・ドライバー、「355」のペネロペ・クルス、「ダイバージェント」シリーズのシャイリーン・ウッドリー。
  • 文筆業

    奈々村久生 |フェラーリ

    P・クルスの妻が息子の死という夫婦最大の試練から目をそらせないのに対して、愛人との二重生活に苦悩の証しを求めるエンツォは、A・ドライヴァーがまとう煮え切らない空気と相まって絶妙に愛され難い人物像となっている。特筆すべきは終盤の事故シーン。スピード、カット割り、犠牲者をとらえる描写の切れ味は戦争映画の爆撃シーンにも匹敵し、皮肉なことに、カーレースの熱狂とスリルと迫力を最も実感したのはここだった。その容赦ない凄惨ぶりにマイケル・マンの本気を見た気がする。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ |フェラーリ

    アダムくん老け役でも顔つきも物腰もやっぱり変でいい。家父長制を煮詰めたような哀れな成功者。速度が経済になり、競うことに愛や死を賭けるなんて地獄だよ。自動車の映画だと思って観に来た人が期待するのだろう男のロマンという糞みたいなものがほぼ描かれない(クライマックスで少し描かれたと思ったら、すぐ最悪の悲劇が起きる)のがいい。ペネロペさんのサレ妻もいい。お金持ちの妻や愛人やってる女性、それと「がんばれ。命がけでやれ」と人に指図するのが仕事の人はみんな観てね。

  • 映画評論家

    真魚八重子 |フェラーリ

    アダム・ドライヴァーは魅力的な俳優だし、役に入ると雰囲気も変わる傑出した存在だけれども、「ハウス・オブ・グッチ」から「フェラーリ」と、名門の実在の人物を立て続けに演じるのはどうなのか。他の才能ある俳優たちの、世に出る機会を奪っているのではないか? 車へのフェティシズムよりビジネスを優先しており、世知辛い話題が続くのも面白いとは言いづらい。事故のシーンは丁寧で非常にリアリティを持っていたが、基本的には車のフェラーリではなく会社としてのフェラーリの話だ。

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