美しき仕事の映画専門家レビュー一覧

美しき仕事

「Stars at Noon」でカンヌ国際映画祭グランプリを、「愛と激しさをもって」でベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞したクレール・ドゥニ監督が1999年に発表した戦争ドラマ。元・外国人部隊所属上級曹長ガルーは、アフリカのジブチに駐留していた時代を回想する。「ポンヌフの恋人」などレオス・カラックス監督作品の常連であるドニ・ラヴァン、「何がなんでも首ったけ」のミシェル・シュボール、ドゥニ監督作「愛と激しさをもって」にも出演しているグレゴワール・コランらが集う。日本では長らく劇場未公開だったが、2024年5月31日より4Kリマスター版が公開される。横浜フランス映画祭2024上映作品(4Kリマスター版)。
  • 俳優

    小川あん

    見る人を選ぶ。クレール・ドゥニかドニ・ラヴァンのファンか、もしくはフランス映画史を愛する人など。そうでなければ、まずこの大胆さと繊細さを楽しむことができないと思う。軍隊を中心に置く作品を「集団映画」と勝手に呼んでいるが、(例えば「フルメタル・ジャケット」とか) 総体的な意味での整列から個の乱れを描く。本作は肉体的な反応に目が向けられ、理解よりも先に生々しい感覚を獲得できる。あらすじから決して想像できないように魅せ、一筋縄ではいかないのがクレール・ドゥニ。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    いまごろわたしごときが褒めてもかえって作品に失礼なんじゃないかと思えて申し訳ないのだけれど、やっぱり褒めないわけにはいかない。故郷を離れた男たちの特殊な場に監督が向ける視線や、嫉妬の研究といった面も重要だが、それ以上に、一つひとつのショットの美しさと生々しさ、およびそのつながりが生み出す生々しさ、画面から独立して機能するナレーションなど、すべてが思考と感覚を触発する。あと、すでにネットミームになってるらしいけどやっぱりドニ・ラヴァンの突然のダンスは必見。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    仏クレール・ドゥニ監督の未公開作で、アフリカのジブチにおける外人部隊の訓練の日々を描く。主人公の指揮官をカラックス作品で知られるドニ・ラヴァンが演じ、新入りの兵士との複雑な愛憎が物語の軸になる。アフリカ、外人部隊、ラヴァンといい材料が揃っているのだが、映画は極めて単調に展開する。ラヴァンならではのシーンが随所にあるが、エンディングを含めて彼の役者力に頼りすぎで脚本の詰めが甘い。退屈なポエムのような脚本を作家主義と見なすフランス作家主義映画病の典型。

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