ブルーピリオドの映画専門家レビュー一覧
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ライター、編集
岡本敦史
絵描きの映画は難しい。この作品も観ながら「そういうことかなぁ」と思うところ多々だったが、尺の問題もあるのだろう。絵を描くことの喜び、独自の視点の獲得など、見せ場にとっておきたいのもわかるが、そんな基本的なことは序盤で描いてしまって、どんどん高度な挑戦や障壁を惜しみなく描いてほしかった。とはいえ、トランスジェンダーの登場人物を単なる彩り以上(またはコメディリリーフ以外)のキャラクターとして掘り下げた青少年向けドラマが普通に全国公開されるのは喜ばしい。
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映画評論家
北川れい子
共感度の高い青春映画である。いや間口の広さは青春に止まらない。映画はこれまで、音楽でもスポーツでも恋でもゲームでも、何かに本気でぶつかっていく人の姿を無数に描いてきたが、本作の場合は“絵”。しかも実証的、立体的に描いているのが素晴らしい。茶髪にピアスの高校生が、放課後の美術部で偶然目にした一枚の絵に触発され、才能や将来性など一切度外視、絵という難物に体当たり。美術部員のエピソードや彼らの絵も説得力があり、主人公が唯我独尊的ではなく、聞く耳を持っているのも頼もしい。
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映画評論家
吉田伊知郎
美大系青春映画は数あれど、ここまで描くことのみに徹した作りは異色。学校、友人、ライバル、家族も登場するが、一線を引いた距離感になっており、描くことからブレない作劇が素晴らしい。画架に置かれた紙を見つめ続ける画面が続くだけに、眞栄田のドラマチックな眼差しが本作ではいっそう際立つ。ユカちゃん役の高橋が見せる繊細な演技は自暴自棄になる姿にも品があり魅了。「ルックバック」との共通項も多いが、あちらは実写ではなくアニメが相応しかったが、本作は実写が合う。
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