傲慢と善良の映画専門家レビュー一覧

傲慢と善良

直木賞作家・辻村深月のベストセラー小説を、Kis-My-Ft2の藤ヶ谷太輔と「先生の白い嘘」の奈緒の主演で映画化したラブ・サスペンス。マッチングアプリで出会って婚約した男女の傲慢と善良、虚偽と真実に切り込む。監督は「東京喰種 トーキョーグール」の萩原健太郎。脚本を「ホテルローヤル」やTVドラマ『リバース』などを手がけた清水友佳子が担当。共演は「OUT」(2023)の倉悠貴、「有り、触れた、未来」の桜庭ななみ、1964年に舞台デビュー、2024年第49回菊田一夫演劇賞特別賞を受賞した前田美波里ほか。
  • ライター、編集

    岡本敦史

    え、そっち側の視点で進むの?という戸惑いは「スオミの話をしよう」と同様。こちらは途中で作劇的ルール違反とも言える視点の変化もあるが、遅きに失した感は否めず、壁ドン青春ラブコメのような結末の陳腐さも残念。醜悪な人間ばかり出てくる話に辟易するが、すべて狙いどおりと言い返されそうな嫌らしさもある。ミステリとしての興趣を優先したような小説的構成が、映画では嫌悪感を濃縮する結果となった。そのカメラ位置合ってる?といった小さな苛立ちも蓄積し、思わず痛飲。

  • 映画評論家

    北川れい子

    逃げられたから追う、追わせるために逃げるという、マッチングアプリで出会った相互依存的カップルの、安手の恋愛ゲームのようなメロドラマで、ムダにミステリ仕立てなのも人騒がせ。おまけに自己実現とか、承認欲求とかの匂いもプンプン。しかも逃げ出した彼女サン側の親や関係者がみな濃いめのキャラクターで、仲人を生きがいにしているらしい前田美波里など、まるで横溝正史の“金田一耕助”シリーズから抜け出してきたみたい。彼氏サン側の女友だちたちの嫉妬交じりのお喋りはけっこうリアル。

  • 映画評論家

    吉田伊知郎

    「四月になれば彼女は」と同じく、結婚を目前に彼女が消えて男が探すパターンだが、こちらは闇が深そうで惹きつける。奈緒の被虐的な存在感や、終始戸惑いを隠さない藤ヶ谷が良い。ホームパーティの場面は「パラサイト」風で、何かが起きそうな予感を漂わせ、その不穏感は全篇に広がっていく。だが、予感だけでなく、起きるところまで観たかったのが人情だが。婚活アプリを用いた映画が増えてきたが、男女ともに結婚に何を求めているかは省略されてしまう。愚直にそこを描いて欲しい。

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