憐れみの3章の映画専門家レビュー一覧

憐れみの3章

「女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」に続いて、ヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンがタッグを組んだ愛と支配をめぐる三つの物語のアンソロジー。「哀れなるものたち」にも出演したウィレム・デフォーやマーガレット・クアリーのほか、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のジェシー・プレモンス、「ザ・ホエール」のホン・チャウ、「女王陛下のお気に入り」のジョー・アルウィンが共演。彼らが三つの物語の中でそれぞれ異なる役柄を演じ、それぞれの物語が不協和音で通底する。
  • 俳優

    小川あん

    ランティモスがいよいよ映画界の問題児にモデルチェンジしている! 悪趣味を乱発し、次にどんな球が投げられるのか分かりゃしない。そして、見手は大打撃を受ける。原題「Kinds of Kindness」のブラックジョークを超えた意地悪さよ……。3章共通テーマを「親切味」として捉えるならば、どう考えたって狂っているし、許容しづらい。しかし、一周回れば意外とメルヘンなお話かも、とも思えてしまう。映画の矛盾を思い知らされ、結果、この策士の才能に翻弄されている私。

  • 翻訳者、映画批評

    篠儀直子

    何かにとり憑かれた人物や、支配と従属、共依存のさまが、3つのエピソードで共通して描かれる。共感できる人物がほぼ出てこないのだけれど、「嫌映画」というよりは、突き放したブラックコメディという印象(特に最終話の幕切れ)。第1・第2エピソードで、人物の顔を意図的に見せないようにしているショットが頻出するが、これは、俳優たちが次々役を乗り換えていくのと同様、誰もが交換可能な存在だということだろうか。ランティモスは「足」と「人の歩き方」にフェチがあるのかもなあと今回発見。

  • 編集者/東北芸術工科大学教授

    菅付雅信

    「哀れなるものたち」で世界の映画祭を席巻したヨルゴス・ランティモスの新作。前作にも出演したストーン、デフォー、クアリーが引き続き出演し、3つの章でそれぞれ異なる役を演じる三部作構成。3つともアメリカ郊外を舞台にした奇妙な筋書きで不穏なムードに満ちている。原作モノの映画化で大ヒットした反動か、新作でランティモスは彼の初期作と同じ脚本家と組み、現代の不条理劇を描かんとするが、最後まで映画的カタルシスのないままに終わる。登場人物の生死を極めて軽く扱う世界観も肯定し難い。

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