墓泥棒と失われた女神の映画専門家レビュー一覧

墓泥棒と失われた女神

「幸福なラザロ」のアリーチェ・ロルヴァケル監督が手掛けたドラマ。80年代のトスカーナ地方。古代エトルリア人の遺跡を見つける特殊能力を持つアーサーは、埋蔵品を売って日銭を稼ぐ日々。ある日、美しい女神像を発見し、闇のアート市場も巻き込む騒動に。出演は、「帰らない日曜日」のジョシュ・オコナー、「複製された男」のイザベラ・ロッセリーニ、「3つの鍵」のアルバ・ロルヴァケル。第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品、第95回ナショナル・ボード・オブ・レビュー外国語映画トップ5選出。
  • 文筆業

    奈々村久生 |墓泥棒と失われた女神

    現時点の自分は、多くのロルヴァケル支持者に比べて、その美しい映像叙情詩を愛していない。ダウジングの能力を持つ主人公は「エル・スール」(83)を思い出させるが、あの父親もやはり喪失に囚われた男であった。失われた過去を幻想化して神聖視することは目の前の現実を容易に下に見ておろそかにする。ジョシュ・オコナー演じる男性のナイーブさは村上春樹的でもあり、幻想を取り戻すことがゴールではあまりに救いがない。その中で圧倒的な現在と現実を担う女性・イタリアの存在が希望だ。

  • アダルトビデオ監督

    二村ヒトシ |墓泥棒と失われた女神

    導入部で「幸せの黄色いハンカチ」みたいな人情話かと思ったら全然ちがった。超能力というものがあるとしたら(あるのだと思うが)それは正義のためや戦いのためには使われず、日々こういうことに使われているのだろう。もう死んでいる人から盗む泥棒は何を盗んでいるのか。泥棒にならざるをえない人々は誰から何を盗まれているのか。死んでいる人に恋し続けることは美しいことなのか。美術館や写真や一瞬の夢の中で見る過去の遺跡や過去の恋人は、どこから掘りだされてきたものなのか。

  • 映画評論家

    真魚八重子 |墓泥棒と失われた女神

    撮影は35ミリ、16ミリ、スーパー16を使っていて、時折左右にぼやけた黒味が出る。特に使い分けに法則は感じず、適当な割り振り方に好感が持てた。そもそも主人公のアーサーがダウジングで古代の墓を探り当てる時点で、マジックリアリズムのような映画だ。昔の墓に入っていくシーンの供えられた動物の人形の魅力。アーサーはこの世とあの世の狭間にいる人間だが、失ってしまった恋人、魅了される古代の遺物と、過去に引っ張られているようだ。それゆえのラストシーンがまばゆかった。

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