ラストマイルの映画専門家レビュー一覧
ラストマイル
人気ドラマ『アンナチュラル』『MIU404』と同じ世界線で、物流センターを舞台に連続爆破事件を描いたサスペンス。大規模セールが行われるブラックフライデーの前夜、某ショッピングサイトの関東センターから配送された箱が爆発し、連続爆破事件へと発展する。『アンナチュラル』『MIU404』の塚原あゆ子監督と脚本家・野木亜紀子が、再びタッグを組む。世界的ショッピングサイトの関東センター長・舟渡エレナを「海辺の生と死」の満島ひかりが、同センターのチームマネージャー・梨本孔を「ゴールド・ボーイ」の岡田将生が演じ、『アンナチュラル』の石原さとみ、『MIU404』の綾野剛&星野源といった、『アンナチュラル』『MIU404』のキャスト総勢16名が集結。
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ライター、編集
岡本敦史
確かにこれは現代日本の縮図かも、と思わせる大舞台で展開する犯罪サスペンス大作として、出色の出来。多くの問題提起を喚起するイマドキの社会派娯楽作としても秀逸で、野木亜紀子脚本のうまさを全篇堪能できる。家族連れで賑わう商業施設の爆弾テロ発生シーンも「よくやった!」と言いたい。観客の反感や疑惑を買うことも臆さず、謎めいた主人公を演じてのけた満島ひかりが素晴らしい。ドラマとのリンクは別段気にならないが、本篇自体がTVドラマの劇場版っぽい必要はなかった。
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映画評論家
北川れい子
お客のために少しでも安く早く。舞台となる巨大な物流倉庫の俯瞰映像には目を見張る。ベルトコンベアで選別された無数の荷物は一瞬も止まることなく流れ続け、まさに人が荷物に使われているの図。ともあれ物流業界の厳しい実情を背景に、慌ただしくも賑々しい娯楽サスペンスに仕上げた脚本の野木亜紀子と監督・塚原あゆ子のお手並みに感心する。もし業界のシステムの闇に本気で首を突っ込んだら、ドラマ『アンナチュラル』『MIU404』チームのファンサービス的な出番もないだろし。ただちょっと後味が。
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映画評論家
吉田伊知郎
いやはや面白い。「新幹線大爆破」「太陽を盗んだ男」を視界に捉えるところまで肉薄した快作。モデルも露骨な巨大ショッピングサイトの倉庫を舞台に、物流、配送の問題と爆弾テロを巧みに組み合わせた野木亜紀子の脚本と、脇に主役級の俳優たちを顔出しさせつつノイズにしない演出も良い。火野正平と宇野祥平の委託ドライバーを湿っぽくせずに描き、派遣社員をわかりやすい悪役にしない見識も買う。ここまでできるなら、さらに求めたくなる面もあるが、一夕の娯楽としては申し分なし。
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