ボレロ 永遠の旋律の映画専門家レビュー一覧

ボレロ 永遠の旋律

天才作曲家モーリス・ラヴェルの名曲『ボレロ』の誕生秘話を描く音楽映画。1928年、パリ。深刻なスランプに陥ったラヴェルはバレエの音楽を依頼されたが、一音も書けずにいた。過ぎ去った人生を振り返り、すべてを注ぎ込んで『ボレロ』を作曲するが……。監督は、「夜明けの祈り」のアンヌ・フォンテーヌ。出演は、「黒いスーツを着た男」のラファエル・ペルソナ、「ベル・エポックでもう一度」のドリヤ・ティリエ、「バルバラ セーヌの黒いバラ」のジャンヌ・バリバール。
  • 映画監督

    清原惟

    作曲家ラヴェルの代表曲〈ボレロ〉が生まれるまでにフォーカスした伝記映画。冒頭のたくさんの〈ボレロ〉のカバー曲のつなぎが楽しく、今に至るまで愛されてきた曲だと改めてわかる。演奏シーンが長めで贅沢な時間だったが、もう少しラヴェル独特の曲作りについて見てみたかった。クラシックの文脈だけではなく、様々な背景を基に作られたラヴェルの独自の作曲や、同時代の音楽家との交流についての言及は少なめで、生みの苦しみや私生活のウエートが高かったのが少し残念だった。

  • 編集者、映画批評家

    高崎俊夫

    〈亡き王女のためのパヴァーヌ〉をピアノトリオで聴いて興奮したことがある。劇中、ラヴェルがNYで黒人が演奏するガーシュインの〈私の彼氏〉に聴き惚れ「ジャズは単純ではない。複雑で力強く絡み合うものだ」と呟く。〈ボレロ〉の永劫に反復されるようなメロディの源泉にジャズがあったのではないかと夢想するのは愉しい。ラヴェルの生涯は母、ダンサー、愛人、家政婦と様々な女たちに囲繞されるも、そこには〈性〉が希薄で、倒錯にも似た依存関係が断片的な語り口で表出されるばかりだ。

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