ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナーの映画専門家レビュー一覧
ジョン・ガリアーノ 世界一愚かな天才デザイナー
2011年、反ユダヤ主義的暴言が原因で逮捕された天才ファッションデザイナー、ジョン・ガリアーノの素顔に、ケヴィン・マクドナルドが迫ったドキュメンタリー。本人の言葉を交え、デビュー以来の栄光の道のりと、事件の裏に秘められた真実を解き明かす。トップモデルのケイト・モスやナオミ・キャンベル、俳優のペネロペ・クルスやシャーリーズ・セロンといった錚々たる顔ぶれも証言者として登場。メガホンをとったのは、「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞に輝いたケヴィン・マクドナルド。
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映画監督
清原惟
ジョン・ガリアーノが差別的発言をしてしまうという自らの過ちについて語るシーンから始まり、彼のキャリアを包括的に描いている映画。ガリアーノの発言は許されるものではないし、その後の行動にも疑問を感じるが、人が過ちを犯してしまったあとに、どのように再び歩むのか、という部分にフォーカスしていたのは興味深かった。ガリアーノだけではなく、傷つけてしまった相手にもインタビューするなど、この難しい題材を扱うにあたって多角的な視点も入れていたのがよかった。
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編集者、映画批評家
高崎俊夫
眩いばかりの栄光の絶頂に君臨していたファッションデザイナーがふと口にした〈反ユダヤ主義的な暴言〉ゆえにキャリアを?奪される。その?落と再起を追ったドキュメンタリーだが、ガリアーノが崇拝するアベル・ガンスの「ナポレオン」(27)の映像を、彼の栄枯盛衰に重ね合わせる手法はいささか鼻白む。K・マクドナルドは、こうしたハッタリめいたテクニックを除けば、ガリアーノの貧しい出自から掘り起こし、オーソドックスな語り口で、その屈曲に富む境涯を浮き彫りにしている。
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映画批評・編集
渡部幻
革命的だがビジネスには不向きな男の波乱に富んだ軌跡をガリアーノ本人が振り返るドキュメンタリー。80年代のロンドンに始まり、スリップドレスを流行らせた94年のブラックショーへ……最盛期のコレクションを見ていると素人のぼくでも天才の二文字が思い浮かんでくる。ディオールのデザイナーに選ばれ、一時代を築くが、仕事上の右腕を亡くしたことから心が荒み、酒と処方薬漬けになった末に、2011年の反ユダヤ発言のスキャンダルへと至る。この贖罪と再起への願いが彼自身の言葉で語られる意欲作。
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