フレッド・ジンネマン

  • 出身地:オーストリア、ウィーン
  • 生年月日:1907年4月29日
  • 没年月日:1997年3月14日

略歴 / Brief history

【反戦・反権力の完璧主義者】オーストリア、ウィーンの生まれ。幼少期からヴァイオリンを習い、音楽家になろうと思うが、ウィーン大学に入る頃は弁護士になるために法科を選んだ。だが、この頃見た2本の映画が彼の未来を変えた。エリッヒ・フォン・シュトロハイムの「グリード」(23)と、キング・ヴィダーの「ビッグ・パレード」(25)である。27年、パリに映画撮影技術学校が創立されると第1期生として入学。1年半の技術修得ののち、ベルリンへ行き1年間、撮影助手を経験、そして助監督になった。29年、アメリカへ渡る。31年、ドイツからやって来たベルトルト・ヴァイアテル監督の助監督になり、彼からドキュメンタリーの巨匠ロバート・フラハティを紹介され、彼の助手としてベルリンに戻り、中央アジアの少数民族のドキュメンタリーの準備にとりかかった。結局、この作品は実現しなかったが、その後の彼の作風に大きな影響を与えることになる。35年、メキシコのヴェラ・クルスの漁村の漁師を描いたセミ・ドキュメンタリー“Redes”を撮り好評を得た。その後、短編をいくつか撮り、“That Mothers Might Live”(38)ではアカデミー賞短編賞を受賞する。【アカデミー賞の常連監督】34歳で初の長編“Kid Glove Killer”(42)を撮り、48年、ナチの収容所から救出された少年とアメリカ兵の交流を描いた「山河遥かなり」(48)を撮った。当時のアメリカは思想弾圧が激しくなり、左翼系映画人の海外追放が露骨となるが、ジンネマンは52年、スタンリー・クレイマー(製作)、カール・フォアマン(脚本)、ディミトリ・ティオムキン(音楽)ら問題児たちと西部劇「真昼の決闘」を作った。主演のゲイリー・クーパーがアカデミー賞主演男優賞受賞。続く「地上より永遠に」(53)は、真珠湾攻撃直前のハワイのアメリカ軍を舞台に様々な人間模様を描いた作品。アカデミー賞作品・監督賞など6部門を受賞した。スペイン内乱の後日談という形で人間の憎しみと執念を描いた「日曜日には鼠を殺せ」(64)、そして権力に抵抗し信念に生きたトーマス・モアの生涯を描いた「わが命つきるとも」(66) で再びアカデミー賞作品・監督賞など6部門を受賞した。ドゴール暗殺を目論む“ジャッカル”の行動を冷徹に描いた「ジャッカルの日」(73)、女性二人の生涯にわたっての友情を描いて感動的な「ジュリア」(77)、そして、アルプスの氷壁を目指す男女の屈折した関係を描いた「氷壁の女」(82)。ジンネマンの作品は、時代の先端を走り、作品数は少ないが、1作ごとに問題を提起し話題となった。常に反戦・反権力を訴え、その律儀なほどの製作態度、そして完全主義は生涯変わりがなかった。

フレッド・ジンネマンの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • あの日の声を探して

    制作年: 2014
    1954年公開のフレッド・ジンネマン監督作「山河遥かなり」を原案に「アーティスト」のミシェル・アザナヴィシウスが監督するヒューマンドラマ。チェチェンで両親を殺され、声を失った9歳の少年が、EU職員と共に生き別れた姉弟を捜す姿を描く。出演は「ある過去の行方」のベレニス・ベジョ、「キッズ・オールライト」のアネット・ベニング。
    100
  • 氷壁の女

    制作年: 1983
    アルプス登山にやってきたイギリス人男女と、スイス人ガイド、この三人がいっしょに過した五日間を描くドラマ。製作・監督は「ジュリア」のフレッド・ジンネマン。エグゼクティヴ・プロデューサーはピーター・ビール。ジンネマンが50年に読んで以来、映画化を希望していたケイ・ボイルの掌編『メイドン、メイドン』の一部を基にしてマイケル・オースティンが脚色。撮影はジュゼッペ・ロトゥンノ、音楽はエルマー・バーンスタイン、第二班監督及び登山に関するテクニカル・アドバイザーをノーマン・ディーレンハースが担当している。出演はショーン・コネリー、ベッツィ・ブラントリー、ランベール・ウィルソン、ジェニファー・ヒラリーなど。日本版字幕は岡枝慎二。テクニカラー、ビスタサイズ。1983年作品。
  • ジュリア

    制作年: 1977
    アメリカ演劇界の女流劇作家として知られるリリアン・ヘルマンが74年に出した回顧録(「ジュリア」パシフィカ刊)の映画化で、ヘルマンに絶大な影響を与えた女性ジュリアとの美しい友情とハードボイルド作家ダシェル・ハメットとの愛が描かれる。製作指揮をジュリアン・デロード、製作はリチャード・ロス、監督は「ジャッカルの日」のフレッド・ジンネマン、脚色を「ボビー・ディアフィールド」のアルビン・サージェント、撮影は「華麗なるギャツビー」のダグラス・スローカム、編集はウォルター・マーチ、音楽はジョルジュ・ドルリューが各々担当。出演はジェーン・フォンダ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ジェースン・ロバーズ、マクシミリアン・シェル、ハル・ホルブルックなど。
  • ジャッカルの日

    制作年: 1973
    ドゴールフランス大統領暗殺を請け負った1匹狼の殺し屋ジャッカルと、これを阻止せよとフランス警察の全権を委任された警視ルベルの戦いを描いたフレデリック・フォーサイスのベストセラー小説「ジャッカルの日」の映画化。製作はジョン・ウルフ、デイヴィッド・ドイチェ、ジュリアン・デロード、監督はフレッド・ジンネマン、脚本はケネス・ロス、撮影はジャン・トゥールニエ、音楽はジョルジュ・ドルリュー、編集はラルフ・ケンプランが各々担当。出演はエドワード・フォックス、エリック・ポーター、デルフィーヌ・セイリグ、ミシェル・ロンスダール、シリル・キューザック、オルガ・ジョルジュ・ピコ、アラン・バデル、デレク・ジャコビ、ミシェル・オールレール、バリー・インガム、ロナルド・ピカップ、デイヴィッド・スイフト、デニス・ケリー、アントン・ロジャース、ジャン・マルタンなど。
  • わが命つきるとも

    制作年: 1966
    「ドクトル・ジバゴ」のロバート・ボルトが彼自身の戯曲を脚色、「日曜日には鼠を殺せ」のフレッド・ジンネマンが製作・監督した作品で、アカデミー賞の作品賞に輝いているほか、数々の賞を獲得している。撮影は「モール・フランダースの愛の冒険」のテッド・ムーア、音楽は「カトマンズの男」のジョルジュ・ドルリューが担当した。出演は英国舞台俳優のポール・スコフィールド、「息子と恋人」のウェンディ・ヒラー、「モール・フランダースの愛の冒険」のレオ・マッカーン、「バルジ大作戦」のロバート・ショウ、「パリは燃えているか」のオーソン・ウエルズ、スザンナ・ヨークほか。総指揮はウィリアム・N・グラフ。
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  • 日曜日には鼠を殺せ

    制作年: 1964
    エメリック・プレスバーガーの同名小説を「酒とバラの日々」のJP・ミラーが脚色、「尼僧物語」のフレッド・ジンネマンが製作・演出したレジスタンスの活劇ドラマ。撮影はジャン・バダル、音楽は「アラビアのロレンス」のモーリス・ジャールが担当した。出演は、「アラバマ物語」のグレゴリー・ペック、「アラビアのロレンス」のアンソニー・クイン、「ローマ帝国の滅亡」のオマー・シャリフ、「橋からの眺め」のレイモン・ペルグラン、「山猫」のパオロ・ストッパ、ミルドレッド・ダンノック、ダニエラ・ロッカなど。
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