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略歴 / Brief history
【小劇場からテレビドラマ、映画へと活動の場を拡げる才人】東京都世田谷区の生まれ。世田谷学園高校卒業後、日本大学芸術学部演劇学科に進学。在学中の1983年、劇団“東京サンシャインボーイズ”を結成。座付き脚本家兼俳優として活動開始し、その洗練された笑いから小劇場ブームの中心的存在となる。この時期より放送作家としてもキャリアを積み始め、『お笑いマンガ道場』『サザエさん』など多くの番組の構成や脚本に参加。88年に始まったフジテレビ深夜ドラマ『やっぱり猫が好き』の脚本を担当し、三谷の回が特に好評を博したことから続く『子供、ほしいね』(90~91)にも続投。93年、『振り返れば奴がいる』で連続ドラマの脚本家デビューを飾る。翌94年、『警部補・古畑任三郎』で人気に火がつき、以後『王様のレストラン』(95)、『総理と呼ばないで』(97)、『今夜、宇宙の片隅で』(98)、『合い言葉は勇気』(00)と、主にフジテレビ系列のドラマを手がけ、90年代後半のテレビドラマ界を席巻する。これらと並行して91年、東京サンシャインボーイズの同名舞台を映画化した中原俊監督「12人の優しい日本人」で脚本を担当。キネマ旬報脚本賞を受賞するなど、映画界でも三谷の名は注目を集めた。97年にはやはり自作舞台を原作とする「ラヂオの時間」で映画監督デビュー。ブルーリボン賞新人賞とベルリン映画祭特別表彰を受賞し、好調なスタートを切る。2000年代に入ると三谷脚本の映画化ブームが起き「竜馬の妻とその夫と愛人」(02)、「笑の大学」(04)が映画化され“集客力のある脚本家”として確固たる地位を確立した。自身のオリジナル脚本による映画を周期的に発表し、「みんなのいえ」(01)、「THE有頂天ホテル」(06)、「ザ・マジックアワー」(08)ともに興行・批評の両面で成功を収め、邦画界になくてはならない存在となった。異業種から映画監督になった先人・伊丹十三と和田誠の薫陶を受け、伊丹には『古畑任三郎』で哀悼を捧げている。【あらゆる世代に通じる笑いと物語を】三谷の成功によって宮藤官九郎など小劇場の才能がテレビで活躍する機会が増え、演劇界とテレビドラマ界の風通しをよくした功績は大きい。作風の主軸はシチュエーション・コメディ(三谷自身言うところのシットコム)。主な特徴としては、〈限定された空間を舞台〉とし、〈理詰めによる笑い〉を生み、〈セックスや暴力描写を入れない〉ことが挙げられる。これらに関しては、自分の本質は劇作家であること、情緒に頼る笑いを好まないこと、あらゆる世代の観客にも通じる作品づくりを旨としていることが、自身の口から語られている。初期から中期にかけては“ものづくりの苦労”を主題に据えた作品が多く、現在30歳前後のクリエイターやその志望者に与えた影響は絶大。自身の立場と年齢が上がるにつれそうした生々しさは消え、代わりにオールスターキャストによるウェルメイドな群像劇へと作風が変化しつつある。
三谷幸喜の関連作品 / Related Work
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スオミの話をしよう
制作年: 2024三谷幸喜が「記憶にございません!」依頼5年ぶりに脚本・監督を務め、長澤まさみを主演に迎えたミステリー・コメディ。大富豪の妻・スオミが行方不明になる。彼女を愛した男たちが屋敷に集まるが、彼らが語る思い出の中のスオミは別人のようだった。出演は、「ドライブ・マイ・カー」の西島秀俊、「流浪の月」の松坂桃李、「首」の遠藤憲一、「記憶にございません!」の小林隆、「審判」の坂東彌十郎。 -
九十歳。何がめでたい
制作年: 2024現在100歳を超えた直木賞作家・佐藤愛子が90歳を過ぎて執筆したベストセラーエッセイ集を、昨年90歳を迎えた草笛光子主演で映画化したパワフル・コメディ。作家生活を引退した愛子の元に、中年の編集者・吉川がエッセイの依頼を持ち込んだことで、人生の薄暮に変化が訪れる。作家の佐藤愛子の姿を草笛光子がユーモラスに痛快に演じている。また、編集者・吉川真也を唐沢寿明、愛子の娘・響子を真矢ミキ、孫・桃子を藤間爽子、吉川の妻を木村多江が演じたほか、片岡千之助、宮野真守ら個性的な面々が総出演。監督は「老後の資金がありません!」の前田哲。 -
老後の資金がありません!
制作年: 2020垣谷美雨によるベストセラー小説を原作に、天海祐希が「狗神」以来、19年ぶりの単独主演を果たしたコメディ。コツコツと老後の資金を貯めてきた平凡な主婦・篤子。だが舅の葬式、娘の派手婚、さらには夫婦そろって失職し資産は激減。篤子は窮地に立たされる。監督は「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の前田哲。 -
シネマ歌舞伎 三谷かぶき 月光露針路日本 風雲児たち
制作年: 2019歌舞伎の公演をHD高性能カメラで撮影しスクリーンで上映するシリーズの第36弾。みなもと太郎による歴史漫画『風雲児たち』を三谷幸喜の演出・脚本で歌舞伎化。江戸時代、商船神昌丸は伊勢を出帆するが、江戸に向かう途中で激しい嵐に見舞われ漂流してしまう。出演は「シネマ歌舞伎 女殺油地獄」の松本幸四郎、市川猿之助、「七つの会議」の片岡愛之助。2019年6月、歌舞伎座にて上演。96点 -
記憶にございません!
制作年: 2019三谷幸喜監督が放つポリティカルコメディ。演説中に石を投げられ記憶を失ってしまった総理大臣・黒田啓介。史上最低の支持率を叩き出した彼の記憶喪失は極秘事項で、知るのは秘書官3人のみ。人の顔も政策も家族も思い出せないなか、アメリカ大統領が来日する。主演の黒田を「嘘八百」の中井貴一が演じるほか、「空飛ぶタイヤ」のディーン・フジオカ、「コーヒーが冷めないうちに」の石田ゆり子、「体操しようよ」の草刈正雄、「64 ロクヨン」の佐藤浩市、「SUNNY 強い気持ち・強い愛」の小池栄子が出演。74点