宮藤官九郎 クドウカンクロウ

  • 出身地:宮城県栗原郡若柳町(現・栗原市)
  • 生年月日:1970/07/19

略歴 / Brief history

【脚本家・俳優としても活躍する演劇畑出身のマルチな異才】宮城県栗原郡若柳町(現・栗原市)の生まれ。本名・俊一郎。日本大学芸術学部放送学科を中退後、1991年から松尾スズキ主宰の劇団“大人計画”に参加。舞台俳優として活躍するとともに作・演出も手がけるようになり、“クドカン”の愛称で小演劇界では注目の存在となっていった。並行してバラエティ番組の構成作家などもつとめ、俳優業だけでなく作り手としてもテレビの世界に深く関わっていく。深夜ドラマの脚本を数本手がけたのち、2000年の『池袋ウエストゲートパーク』で脚本家として一躍脚光を浴びた。その後も俳優業と並行しながら「GO」(01)、「ピンポン」(02)、「アイデン&ティティ」(03)、「69/sixtynine」(04)などの映画、『木更津キャッツアイ』(02)、『ぼくの魔法使い』『マンハッタンラブストーリー』(03)などのテレビドラマの脚本を次々と手がけ、コメディを中心とした構成力の冴えと卓抜な台詞のセンスで若い観客の支持を獲得していった。2005年には満を持して、しりあがり寿原作の「真夜中の弥次さん喜多さん」で監督デビュー。精神世界を具象化する幻想的な原作コミックをポップな感覚でまとめ上げ、一部で高い評価を受けた。以降も人気脚本家として、映画「舞妓Haaaan!!!」(07)、「カムイ外伝」「なくもんか」(09)、テレビドラマ『タイガー&ドラゴン』(05)、『吾輩は主婦である』(06)、『未来講師めぐる』『流星の絆』(08)など作品を重ねていく。監督第2作は09年の「少年メリケンサック」。今度は自身のオリジナル脚本により、中年パンクバンドを題材にしたハイテンションコメディで独特のドライブ感を発揮した。【屈折して“情”を描くシャイな作家】2000年代に入って急増した小演劇から映像ジャンルへ参入する作り手たちの先駆的な存在。多くの演劇人が作・演出だけでなく俳優としても活躍するのと同様に、宮藤も脚本家・俳優・構成作家などさまざまな顔で映画、テレビの世界に関わっていった。出世作となった『池袋ウエストゲートパーク』や、キネマ旬報ベスト・ワンを獲得した「GO」(宮藤自身も脚本賞を受賞)など、若者のリアルな生態を反映した描写や台詞が、まずは脚本家・宮藤の特徴として絶賛された。しかし、本人の資質は必ずしも若者風俗にすり寄った作劇を得意としておらず、むしろ人と人との繋がりや互いを思う気持ちなど普遍的な“情”の要素を、ストレートにではなく、やや屈折した形で投げかける“シャイ”な作家であった。見た目はトリッキーな構造でハイテンションな作品でも、その実、根源的な人間の感情を描くことに秀でた宮藤の資質は、映画監督としても変わらず発揮され、原作にもあるホモセクシャルな友情をさまざまな愛の形へと昇華させた「真夜中の弥次さん喜多さん」も、中年パンクバンドと若いOLとの珍道中を年齢性別を越えた心の交流として描いた「少年メリケンサック」も、見た目のいびつさや喧騒の向こう側に、爽やかな“情”のドラマが透けて見える。

宮藤官九郎の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 海辺へ行く道

    制作年: 2025
    アーティスト移住支援をうたうある海辺の街を舞台に描く、横浜聡子監督の最新作。原作は三好銀の連作集。
  • 時には懺悔を

    制作年: 2025
    「告白」の中島哲也監督による7年ぶりの新作。西島秀俊と満島ひかりが中島組初参加にして初共演。原作は打海文三の同名小説で、重度の障がいを抱える子どもを通して描く、親子の絆の物語。20年ほど前にこの小説に出会った中島監督は「見る人の気持ちを動かす映画ができるのでは」という想いをずっと抱き続けた。「過去に大きな傷を負った大人たちが、今を必死に生きる“たったひとつの小さな命”と出会い、人生の活路を見出す物語」を独自の視点と緻密な演出で描き出す。出演は黒木華、宮藤官九郎、柴咲コウ、塚本晋也、片岡鶴太郎、佐藤二朗、役所広司など。
  • サンセット・サンライズ

    制作年: 2024
    楡周平による同名小説を原作に、宮藤官九郎脚本、菅田将暉主演で、「あゝ、荒野」「正欲」の岸善幸監督が映画化。コロナ禍に都会から宮城県・南三陸に移住した釣り好きのサラリーマン・西尾晋作は海で釣り三昧の日々を過ごすが、よそ者の晋作に町の人たちは気が気でなく、町のマドンナをめぐってある騒動が起きる。共演は「白ゆき姫殺人事件」の井上真央、「永い言い訳」の竹原ピストル。2024年11月、第37回東京国際映画祭にてワールド・プレミア。
  • ゆとりですがなにか インターナショナル

    制作年: 2023
    日本テレビ系列で2016年4月期に放送されたドラマ『ゆとりですがなにか』の劇場版。“ゆとり世代”と名付けられた正和、山路、まりぶのゆとり3人組も30代半ばを迎え、人生の岐路に立たされていた。そんな彼らに、想像を超える新時代の波が押し寄せる。「1秒先の彼」の岡田将生、「耳をすませば」の松坂桃李、「さかなのこ」の柳楽優弥らドラマのキャスト陣に加え、「シャイロックの子供たち」の木南晴夏、「アキラとあきら」の上白石萌歌らが出演。監督は、「アイ・アム まきもと」の水田伸生。脚本は、「1秒先の彼」の宮藤官九郎。
  • こんにちは、母さん

    制作年: 2023
    「男はつらいよ」シリーズをはじめ、時代の変遷と人びとの暮らしを見つめ続けてきた山田洋次監督の91歳にして90本目の劇映画。墨田川のほとりで、スカイツリーを見上げる東京下町を舞台に、現代の令和を生きる「母と息子」の新たな物語を心情豊かに描き出す。主演を務めるのは、1972年公開の「男はつらいよ 柴又慕情」をはじめ、「母べえ」(08)「おとうと」(10)「母と暮せば」(08)など、約50年間にわたって山田洋次作品に出演してきた吉永小百合。下町に暮らす母・福江を演じ、映画出演123本目にして、山田洋次の『母』3部作の集大成となった。その息子・昭夫を演じるのはNHK大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』の好演が記憶に新しい大泉洋。山田洋次と吉永小百合と初タッグを組んだ。原作は劇作家・永井愛(二兎社)が手掛けた同名の舞台作品。変わりゆく都会の片隅で、中間管理職の悲哀、シニアの淡い恋、地域とホームレスの問題、若者の生きがいの問題など、今日的なテーマを織り込みながら、それでも変わらぬ思い合う人びとの心を描く、おかしくも切ない人情喜劇。
  • 1秒先の彼

    制作年: 2023
    台湾アカデミー賞で作品賞、監督賞などを含む歴代最多受賞を果たした「1秒先の彼女」の日本版リメイク。何をするにも人より1秒早いハジメと1秒遅いレイカの、絶妙にタイミングが合わない「時差(タイムラグ)」ラブストーリー。監督・山下敦弘と脚本家・宮藤官九郎が初タッグを組み、男女の設定をオリジナルから反転させ、舞台を日本の京都に移した。W主演を務めるのは、ハジメ役の岡田将生とレイカ役の清原果耶。岡田将生は山下監督の「天然コケッコー」(07)では、都会から来たクールな中学生を、宮藤脚本のドラマ『ゆとりですがなにか』(16)では、コミカルでまじめなサラリーマンを演じたが、それらのキャリアが生かされた「残念なイケメン」を関西弁で演じた。清原は世間の速さになじめない、どこか「どんくさい」ヒロインを演じきった。