アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ アレハンドロゴンサレスイニャリトゥ

  • 出身地:メキシコ・シティ
  • 生年月日:1963/08/15

略歴 / Brief history

【世界の不寛容にメッセージをぶつけるメキシコの奇才】メキシコ、メキシコ・シティの生まれ。最初のキャリアはラジオ局のDJ。番組の演出や製作にも手を拡げ、数本の映画の作曲も担当する多才ぶりを見せる。20代でメキシコ最大のテレビ・ネットワーク、テレビザのクリエイティヴ・ディレクターに転身するが、間もなく自身のプロダクションを設立。CMや番組を演出しながら短編「ElTimbre」(96)を発表する。この間、アメリカで映画製作について学んだ。2000年、脚本家のギジェルモ・アリアガと3年間話し合った末に、30回以上の改稿を重ねて3つのストーリーが交差する脚本を完成、PV的なスピードの映像処理と暴力描写に満ちた「アモーレス・ペロス」を監督する。この長編デビュー作でカンヌ映画祭の批評家週間グランプリ、東京国際映画祭ではグランプリと監督賞をダブル受賞するなど世界各国60以上の映画賞を獲得して、瞬く間にメキシコ映画界を代表する存在となった。BMWのプロモーション短編「PowderKeg」(01)を手がけたのち、9.11がモチーフ、11分9秒1フレームが条件のフランス製作オムニバス「11.09”01/セプテンバー11」(02)に世界の巨匠とともに参加。ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロらハリウッド・スターが主演を熱望したアメリカ資本の長編第2作「21グラム」(03)ではさらに高い評価を集めた。ロドリゴ・ガルシア監督「美しい人」(05)をプロデュースしたのち、世界各地でロケを敢行した「バベル」(06)を発表。東京が重要な舞台のひとつとなり、聾唖の女子高生役を演じた菊地凜子がアカデミー助演女優賞にノミネートされたことで日本でも大きな話題を集めた。同作でメキシコ人初となるカンヌ映画祭監督賞を受賞。10年の同映画祭に出品された新作「Biutiful」では、主演のハビエル・バルデムが男優賞を受賞した。【グローバルな視点の作風】50年代に国際的作家を輩出するようになったメキシコ映画では、ブニュエルが牽引した60年代に“新しい映画”の波が興り、70年代にアレハンドロ・ホドロフスキーが代表する次の山場を迎えた。その後90年代の新政権によって開放政策が実施されると、またあらたに新世代の一群が登場。イニャリトゥも、アルフォンソ・アラウ、アルフォンソ・キュアロンなどに並ぶこの“新しいメキシコ映画”作家のひとりである。「アモーレス・ペロス」公開当初の世評は、時制操作の作劇法の点から、タランティーノ・フォロワーのメキシコ代表とみられる大雑把なものだった。しかしまもなく、新潮流の影響を契機にオリジナルの才能と創造の野心を覚醒させたという評価に変化。手持ちカメラの肉感的なリアリズムを駆使しながら現代におけるコミュニケーションの困難と渇望を巨視的かつ寓話的に描き続ける。皮肉な結びつきに人々が支配される運命論めいた作風は、「バベル」では和解と希望へのヴィジョンの提示へと変化してきたが、同作を最後に、作家性の構築を支えてきた脚本家アリアガとのコンビを解消。今後はどんな物語でモラルを示すのか世界中から注目されている。同世代の監督のキュアロン、ギレルモ・デル・トロと製作会社“チャ・チャ・チャ・フィルムズ”を設立。メキシコ映画界の人材育成にも動いている。

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • バルド、偽りの記録と一握りの真実

    制作年: 2022
    「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」(2014年)が第87回アカデミー賞の作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞の4部門を獲得、続く「レヴェナント:蘇えりし者」(2015年)でも主演男優賞、監督賞に輝いた巨匠アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが7年ぶりに放つ長編映画。イニャリトゥ監督の体験を反映した作品で、故郷のメキシコで長編デビュー作「アモーレス・ぺロス」(2000年)以来の撮影を行った。そんな“魂の物語”で主人公のシルベリオ・ガマを演じるのは「バッド・エデュケーション」のメキシコ人俳優ダニエル・ヒメネス・カチョ。シルベリオはアイデンティティ、成功、死の必然性、メキシコの歴史、妻や子どもたちとの家族の絆など、普遍的かつ本質的な問いと感情豊かに向き合っていく。「セブン」「ミッドナイト・イン・パリ」の撮影監督ダリウス・コンジが65mmフィルムで撮影した風景にも心揺さぶられる。2022年・第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品。2022年・第35回東京国際映画祭ガラ・セレクションにて上映。Netflixで2022年12月16日から配信。11月18日より一部劇場にて公開。
  • レヴェナント 蘇えりし者

    制作年: 2015
    レオナルド・ディカプリオと「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のアレハンドロ・G・イニャリトゥ監督が初タッグを組み、実話を基にした小説を映画化。荒野に取り残された男が復讐のため、過酷なサバイバルに挑む。ゴールデングローブ賞作品賞、監督賞、主演男優賞受賞。撮影監督は、「ゼロ・グラビティ」のエマニュエル・ルベツキ。音楽は、「ラストエンペラー」の坂本龍一。
    70
  • バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

    制作年: 2014
    かつて「バードマン」というヒーロー映画で一世を風靡したものの今や落ち目になった俳優が、再起を図りもがくブラックコメディ。あたかも全編1カットかのように撮影されている。監督は「バベル」のアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。主演は「バットマン」のマイケル・キートン。本作で第72回ゴールデングローブ賞ミュージカル・コメディ部門主演男優賞を受賞した。ほか、「ハング・オーバー」シリーズのザック・ガリフィアナキス、「アメリカンヒストリーX」のエドワード・ノートン、「アメイジング・スパイダーマン」のエマ・ストーン、「21グラム」のナオミ・ワッツらが出演。第87回アカデミー賞作品賞、監督賞など計9部門にノミネート。
    60
  • エルヴィス、我が心の歌

    制作年: 2012
    「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で共同脚本を務めたアルマンド・ボーの長編初監督作。自分がエルヴィス・プレスリーの生まれ変わりと信じて疑わない男が、家族と離れ離れになりながらも大きな夢を追い続ける姿を映し出す。主人公カルロスを演じるのは、アルゼンチンでエルヴィスのトリビュート・アーティストとして実際に活躍しているジョン・マキナニー。撮影は「人生スイッチ」のハビエル・フリア。
  • BIUTIFUL ビューティフル

    制作年: 2010
    バルセロナの闇社会で生きる男が余命2ヶ月と知らされ、子供たちのために奮起する姿を描く感動の人間ドラマ。監督は、「バベル」のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。出演は、「ノーカントリー」のハビエル・バルデム。第63回カンヌ国際映画祭主演男優賞受賞、アカデミー賞主演男優賞・外国語映画賞ノミネート。
    98
  • 愛する人

    制作年: 2009
    36年間、互いを知らずに生きてきた母娘が、ある出来事をきっかけに巡り会う様子を描いたヒューマンドラマ。出演は「イースタン・プロミス」のナオミ・ワッツ、「アメリカン・ビューティー」のアネット・ベニング。監督は「彼女を見ればわかること」のロドリゴ・ガルシア。第39回ドーヴィル映画祭でグランプリを受賞。
    74