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略歴 / Brief history
【多彩なスタイルで新世紀の韓国映画を牽引するエース】韓国、ソウルの生まれ。西江大学哲学科在学中、ヒッチコック作品に影響を受けて映画製作を志し、1984年に仲間と西江映画共同体を結成する。卒業後の88年よりクァク・チェヨン(のちに「猟奇的な彼女」など)の助監督として映画界入り。92年、異なった道を歩むヤクザの義兄弟を複雑な展開で描いたノワール「月は…太陽が見る夢」で監督デビューを果たす。同作はシネフィルの強い支持を得るが興行は振るわず、あらゆるジャンルに精通する理論家の面を活かして映画評論家としても活動。94年には評論集『映画を見ることの密かな魅力』を出版した。99年、持ち込み脚本が評価されて韓国映画史上最高予算の大作に抜擢。南北兵士の交流を描いた「JSA」は2000年に公開されると、前年にカン・ジェギュ監督の「シュリ」が作った国内の観客動員記録を塗り替え、韓国映画界の将来を担う監督と注目された。続く「復讐者に憐れみを」(02)は批評家からも絶賛されるが、凄惨な描写が続く重い内容のため興行は苦戦。しかし、再びヘヴィな復讐劇に挑戦した「オールド・ボーイ」(03)が大ヒットとなり、カンヌ映画祭でも審査員特別賞を受賞する快挙を成し遂げた。さらに「親切なクムジャさん」(05)をいわゆる“復讐三部作”の最終作として仕上げ、国民的清純派女優イ・ヨンエの4年ぶりの映画復帰作という話題もあり、やはりヒットを記録。“復讐三部作”のあとは一転、別のジャンルを求めて、スタイリッシュなメルヘン「サイボーグでも大丈夫」(06)、10年越しの企画である異色バンパイア映画「渇き」(09)を発表。「渇き」は製作段階でハリウッドが共同出資と北米配給を決めた初の韓国映画となった。【罪を描く作家性と映画マニアの共存】60年代に生まれ、80年代の民主化運動過渡期に大学生活を送り、2000年当時に30代であった韓国ニューウェーヴ、いわゆる“386世代”の先頭ランナー。実験的スタイルを取った初期の頃はアート系作家とみなされたが、「JSA」以後は商業作で個性を発揮する人気監督へと転じた。作品ごとに多彩な映像テクニックを駆使しつつ、平凡な人物が修羅の道に引きずり込まれる物語が常に激しく強いパッションを湛え、ダークで不条理なユーモアが同居する作風は「JSA」から「渇き」に至るまで共通している。少年時代はドストエフスキーやカフカ、シェイクスピアを好んで読み、カトリック聖堂に毎週通って聖職者になる可能性もあったという。“復讐三部作”に代表される怒りの熱情と贖罪意識との劇的な相克は、その経験が下地になっている。一方で「監督である前にひとりの映画マニアでありたい」と語る身軽さと、仲間の監督を積極的にサポートするリーダーシップを併せ持つ。自身のプロダクション、モホフィルムの“モホ”とは“模倣”のこと。シネフィルらしくさまざまなジャンルやスタイルを横断しながら作り続ける願いを込めている。
パク・チャヌクの関連作品 / Related Work
作品情報を見る
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別れる決心
制作年: 2022「オールド・ボーイ」「お嬢さん」のパク・チャヌク監督6年ぶりの最新作にして、カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞したサスペンスロマンス。崖から転落死した男の妻と、その女の調査を始めた生真面目な刑事。疑惑が深まるほどに二人の視線は絡み合い、惹かれ合っていく。主演は「殺人の追憶」(03)「神弓 -KAMIYUMI-」(11)のパク・ヘイルと、「ラスト、コーション」(07)で注目され、「ブラックハット」(15)でハリウッドにも進出したタン・ウェイ。共演は「新感染半島 ファイナル・ステージ」のイ・ジョンヒョン、三池崇史監督のドラマ『コネクト』のコ・ギョンピョ。韓国の権威ある青龍賞で2022年度の最優秀作品賞、主演男優賞、主演女優賞など6冠に輝いた。2024年8月2日より恵比寿ガーデンシネマにて「お嬢さん」と2本立て特別上映決定。70点 -
お嬢さん スペシャル・エクステンデッド版
制作年: 2016サラ・ウォーターズの小説『荊の城』を原作に「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク監督が映画化した「お嬢さん」に、24分におよぶ未公開カットを追加。1939年の朝鮮半島。支配的な叔父と豪邸で暮らす華族令嬢・秀子のもとへ、新しいメイドのスッキがやって来る。彼女は秀子の莫大な財産を狙う詐欺師の手先だった。出演は「泣く男」のキム・ミニ、「暗殺」のハ・ジョンウ、「チャンス商会 初恋を探して」のチョ・ジヌン。美術は「グエムル 漢江の怪物」「母なる証明」のリュ・ソンヒ。80点 -
お嬢さん(2016)
制作年: 2016サラ・ウォーターズの小説『荊の城』を原作に「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク監督が映画化。1939年の朝鮮半島。支配的な叔父と豪邸で暮らす華族令嬢・秀子のもとへ、新しいメイドのスッキがやって来る。彼女は秀子の莫大な財産を狙う詐欺師の手先だった。出演は「泣く男」のキム・ミニ、「暗殺」のハ・ジョンウ、「チャンス商会 初恋を探して」のチョ・ジヌン。美術は「グエムル 漢江の怪物」「母なる証明」のリュ・ソンヒ。2024年8月2日より恵比寿ガーデンシネマにて「別れる決心」と2本立て特別上映決定。80点 -
荊棘(ばら)の秘密
制作年: 2015「イノセント・ガーデン」のパク・チャヌクが脚本を担当し、「私の頭の中の消しゴム」のソン・イェジンが主演したサスペンス。選挙直前に政治家の娘が失踪。必死にその行方を追う母が、手掛かりを求めて娘を知る人々に聞き込みを進める中で、衝撃的な真実を知る。ソン・イェジンと共演のキム・ジュヒョクは、「妻が結婚した」以来の顔合わせとなる。70点 -
秘密はない(仮)
制作年: 2015『私の頭の中の消しゴム』のソン・イェジン主演、『オールド・ボーイ』のパク・チャヌク脚本によるミステリースリラー。【スタッフ&キャスト】監督・脚本:イ・ギョンミ 脚本:パク・チャヌク 撮影:ジュ・スンリム 音楽:チャン・ヨンギュ 出演:ソン・イェジン/キム・ジュヒョク/キム・ソヒ/チェ・ユファ -
スノーピアサー
制作年: 2013「母なる証明」「殺人の追憶」のポン・ジュノ監督が、フランスのコミック『LE TRANSPERCENEIGE』を映画化。氷河期に突入した近未来、人類唯一の生存場所となった列車内での階級差別に耐え切れなくなった者たちが反乱を起こすSFアクション。貧困層の乗る列車最後尾から革命を企てるリーダーを「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」や「アベンジャーズ」でキャプテン・アメリカに扮したクリス・エヴァンスが、列車を作った権力者を「ポロック 2人だけのアトリエ」のエド・ハリスが演じるほか、「エレファント・マン」のジョン・ハート、「殺人の追憶」のソン・ガンホ、「フィクサー」のティルダ・スウィントンら錚々たる俳優陣が集結している。73点