内田けんじ ウチダケンジ

  • 出身地:神奈川県
  • 生年月日:1972

略歴 / Brief history

【時制を組み替えた脚本で人間ドラマの妙を楽しませる】神奈川県生まれ。本名は“健二”。高校時代に映画製作を志し、日本大学芸術学部を受験するも失敗。海外留学の道を選んで、1992年、サンフランシスコ州立大学芸術学部映画科に入学する。大学では8ミリから35ミリに至る映画製作技術や脚本技術を学んだという。その周囲における自主映画はもっぱら映像先行型であり、この状況に反発して98年の帰国後、脚本優先の自主映画を制作開始、2001年にデジタルビデオ作品として完成させた。この、時制を前後させつつ、平凡なサラリーマンがドラッグで失った1日の記憶を捜し求めるさまをユーモラスに描いた「WEEKEND BLUES」は、PFFアワード02で企画賞・ブリリアント賞・観客賞(in仙台)の3賞を獲得。続いて提出した脚本がPFFスカラシップの選考も勝ち抜き、04年製作の「運命じゃない人」で商業映画デビューを飾ることとなった。35ミリ作品「運命じゃない人」は05年に単館系劇場で公開され、ノンスター作品ながらキネマ旬報ベスト・テン第5位および脚本賞、報知映画賞監督賞ほかの高評価を獲得。またカンヌ映画祭の批評家週間でも4賞に輝き、多くの海外映画祭をめぐって評判を呼んだ。08年には第2作「アフタースクール」を発表。本作もこれまでと同様、断片的に時制を組み替えた話法のミステリー・コメディであり、キネ旬ベスト・テン第10位、日本アカデミー賞では脚本賞の一本に表彰されている。【構成の妙+演出の妙】ジャッキー・チェンに映画館に誘われ、チャップリンで監督になることを決心したと語り、好きな映画にビリー・ワイルダーやニール・サイモン、古典的ハリウッド映画を挙げる。しかしながら手がけた作品はいずれも、断片化した物語パーツが時間軸を行き来し、進行にあわせて観客に物語の全容を読み解かせていく、ミステリー風味の凝った構成を採った。どんでん返しの驚きも抱えたこの趣向は特に高く評価され、“ポスト・タランティーノ”のさらにそれ“以後”の確たる才能として受け止められている。また構成の妙ばかりが注目されるのでもなく、物語の中で右往左往する朴訥な人物の可笑しみも内田作品の魅力とされた。なお「運命じゃない人」のインパクトは多分に強く、内田けんじイコール“脚本の妙”との評価が常に先行している。しかし「アフタースクール」では、ミスリードを仕組んだ脚本を活かすための、必要以上のものは読み解かせない映像作りに一層の冴えをみせ、演出力を背景にしての脚本力であったことを知らしめた。留学経験をふまえて“日本人には日本特有の劇の形が合う”とも語り、21世紀の日本型エンターテインメントを開拓するひとりとして期待されている。

内田けんじの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • LUCK-KEY/ラッキー

    制作年: 2016
    内田けんじ監督のコメディ「鍵泥棒のメソッド」を「ベテラン」のユ・ヘジン主演で韓国リメイク。伝説の殺し屋ヒョヌクは銭湯で頭を強打し、記憶喪失に。その場に居合わせた売れない役者ジェソンがロッカーの鍵をすり替えたことから、二人の人生が入れ替わる。依頼を完璧に遂行する殺し屋にユ・ヘジンが、思わぬ事態を呼ぶ貧乏役者を元アイドルグループMBLAQのメンバーで「俳優は俳優だ」などに出演するイ・ジュンが扮する。「野獣と美女」(未)で監督デビューし、同じく内田けんじ監督の「運命じゃない人」をリメイクした「カップルズ 恋のから騒ぎ」(未)で製作を手がけたイ・ゲビョクがメガホンを取る。
    90
  • 名探偵コナン 江戸川コナン失踪事件 史上最悪の2日間

    制作年: 2014
    青山剛昌原作の人気TVアニメシリーズのTVスペシャル版。2014年12月26日に日本テレビ系『金曜ロードショー』にて放映された。1926年にアガサ・クリスティが失踪した事件を下地に、記憶をなくした江戸川コナンが巻き込まれる事件を描く。「鍵泥棒のメソッド」の内田けんじ監督が脚本を担当、同作品のキャラクターやモチーフが登場する。監督は『名探偵コナン』TVシリーズ第119~332話や2004~2010年の劇場版などを手がけた山本泰一郎。
  • 鍵泥棒のメソッド

    制作年: 2012
    第58回カンヌ国際映画祭フランス作家協会賞、鉄道賞、最優秀ドイツ批評家賞、最優秀ヤング批評家賞の4冠に輝いた「運命じゃない人」や「アフタースクール」でトリッキーな構成を構築し、国内外で高い評価を受けた内田けんじ監督のコメディ。殺し屋が転倒事故により記憶を失う場に居合わせた売れない役者が、こっそり立場を入れ替えてしまうことから起こる騒動を描く。「アフタースクール」「ツレがうつになりまして。」の堺雅人が後先考えずに行動してしまう売れない役者を、「キサラギ」「劔岳/点の記」の香川照之が殺気みなぎらせる殺し屋だったものの記憶を失くし自分が役者だと思い込む男を演じる。他、「おくりびと」の広末涼子らが出演。
    69
  • ライブシネマ YOSHII CINEMAS

      制作年: 2012
      THE YELLOW MONKEY活動休止後、2003年10月にYOSHII LOVINSON名義でシングル『TALI』を発表し、ソロ・アーティストとして活動する吉井和哉初の映像ドキュメンタリー。過去の記録に撮り下ろし映像も加え、吉井和哉の歴史と進化を追う。監督は、「グッモーエビアン!」の山本透。
    • アフタースクール

      制作年: 2007
      大人になったかつての同級生たちが織り成すサスペンス・コメディ。監督・脚本は「運命じゃない人」の内田けんじ。出演は「ゲゲゲの鬼太郎」の大泉洋、「ぼくと駐在さんの700日戦争」の佐々木蔵之介、「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」の堺雅人、「魂萌え!」の常盤貴子、「黄色い涙」の田畑智子ほか。
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    • 運命じゃない人

      制作年: 2004
      2005年カンヌ国際映画祭 批評家週間正式出品作品。サスペンスなのに、ハートフル、まったく新しいニッポン的エンターテインメントムービー。監督は本作が劇場用長編デビュー作となる内田けんじ。「WEEKEND BLUES」がPFFアワード2002にて企画賞(TBS)とブリリアント賞(日活)をダブル受賞。第14回PFFスカラシップの権利を獲得し、本作を制作した。出演は、「ジョゼと虎と魚たち」「花とアリス」など多くの日本映画に出演している中村靖日、テレビを中心に活躍中の霧島れいか、「ハッシュ!」「火火」の山中聡、ベテランの山下規介、テレビ、モデル、ラジオと幅広く活躍中の板谷由夏ら。
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