フリッツ・ラング フリッツ・ラング

  • 出身地:オーストリア、ウィーン
  • 生年月日:1880年12月5日
  • 没年月日:1976年8月2日

略歴 / Brief history

【過酷な運命に必死に抗う人々を描く】オーストリアのウィーン生まれ。建築家を志し、工科大学に学ぶ。パリで漫画家、ファッション・デザイナー、画家として青春時代を過ごし、1914年にウィーンに戻って2年間の軍隊生活を経験する。除隊後、映画の脚本家となり、18年にベルリンに移住し、デクラ社で脚本読みとストーリー編集の仕事に従事。19年に“Halbblut”で監督デビューを果たす。以後、「黄金の湖」などミステリー色の強い作品を監督、日本を舞台にした“Harakiri”(19)などでは日本趣味も取り込み、日本人にはいささか奇異な印象を抱かせる描写も織り込まれていた。21年に「死滅の谷」を監督。死神に愛する人を奪われた女性の愛の強さを謳いあげた内容だが、過酷な運命に必死で抗う人々はラング作品に共通するテーマとなった。「ドクトル・マブゼ」(22)と「スピオーネ」(28)はともに稀代の犯罪王を描く作品で、「ドクトル・マブゼ」は32年、60年と二度リメイクしている。24年にはゲルマン民族の叙事詩を描く「ニーベルンゲン」二部作を高予算をかけて撮りヒットしたので、続く「メトロポリス」には500万マルクという空前の製作費をかけた。SF映画の金字塔という高い評価を受けたが、興行的には失敗。29年には宇宙SF「月世界の女」、31年にはスリラー「M」を監督。【戦時中はナチ批判映画を連発】24年に再婚した脚本家のテア・フォン・ハルボウはナチ党員で、母親がユダヤ人であるラングとは33年に離婚している。ナチのゲッベルス宣伝相は彼にナチの映画を撮らせようとしたが、ラングはそれを避けてフランスに脱出する。フランスで「リリオム」(34)を撮ったあと、アメリカに渡り、35年に市民権を取得。30年代後半は「激怒」(36)、「暗黒街の弾痕」(37) などで運命に翻弄される主人公を描き、「地獄への逆襲」(40)といった西部劇も手がけている。戦時中は「マンハント」(41)、「死刑執行人もまた死す」(43)、「恐怖省」(44)といったナチ・ドイツに反対する映画を撮り、40年代半ばにはエドワード・G・ロビンソン、ジョーン・ベネット共演でサスペンス映画「飾窓の女」(44)と「緋色の街/スカーレット・ストリート」(45)を監督、以後はフィルム・ノワールが増えていく。58年に帰独し、インドを舞台にした「大いなる神秘」(59)と「怪人マブゼ博士」(60)を監督。64年にはジャン=リュック・ゴダール監督の「軽蔑」に映画監督の役で出演している。

フリッツ・ラングの関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • メトロポリス 完全復元版

    制作年: 1927
    富裕層と労働者の格差が著しい未来都市・メトロポリスで地下の工場を支配するジョーの息子・フレーダーは、労働者たちに希望を与える女性・マリアと出会い…。フリッツ・ラング監督が手掛けた名作SF。公開直後に短縮版が作成され、オリジナル版フィルムは長らく散逸したとされていた。2008年にブエノスアイレスで発見された16ミリ映像から失われたシーンを加えた復元版。2010年製作。オリジナル版は3時間半とも言われている。2013年1月18日より、東京新宿・紀伊國屋サザンシアターにて開催された「第1回 紀伊國屋レーベル名画祭」にて上映。
  • スカーレット・ストリート

    制作年: 1945
    暴漢に襲われた女を助けた銀行員の男が犯罪者に堕ちていく悲劇を描くサスペンスドラマ。監督はフリッツ・ラング。出演はエドワード・G・ロビンソン、ジョーン・ベネットほか。。2012年9月22日より、東京・シネマヴェーラ渋谷にて開催された「フィルム・ノワールの世界」で日本初上映。(デジタル上映)
  • パパラッツィ

    制作年: 1963
    ジャン=リュック・ゴダールの「軽蔑」(1963)の撮影現場を取材したドキュメンタリー。主演女優ブリジット・バルドーと彼女を狙うパパラッツィとの攻防戦を撮影した作品。2010年1月23日より東京・ユーロスペースにて開催された「ジャック・ロジエのヴァカンス」で日本初上映。
  • バルドー/ゴダール

    制作年: 1963
    ジャン=リュック・ゴダールの「軽蔑」(1963)の撮影現場を取材したドキュメンタリー。当時噂のあったゴダールとブリジット・バルドー、ふたりの姿を追った作品。2010年1月23日より東京・ユーロスペースにて開催された「ジャック・ロジエのヴァカンス」で日本初上映。
  • 条理ある疑いの彼方に

    制作年: 1956
    死刑廃止のキャンペーンのため自ら死刑囚となった男がたどる数奇な運命を描くサスペンス。監督は「死刑執行人もまた死す」の巨匠フリッツ・ラング。脚本はダグラス・モロー。撮影はウィリアム・スナイダー。音楽はハーシェル・バーク。出演は「我らの生涯の最良の年」のダナ・アンドリュース、「レベッカ」のジョーン・フォンテーンほか。
  • マンハント(1941)

    制作年: 1941
    ヒトラーに銃を向けたハンターと、彼を狩り出そうとするゲシュタポの追跡を描いた本格サスペンスの一編。本作のあと「死刑執行人もまた死す」「恐怖省」「外套と短剣」と続く、フリッツ・ラング監督のナチスものの最初の作品。従来のアメリカ映画にないナチスのリアルなイメージを米国の大衆に与え、以後のプロパガンダ映画のあり方に大きな影響を与えた。原作はジョフリー・ハウスホールドの小説『Rogue Male』で、「男の敵」「駅馬車(1939)」などジョン・フォード作品でお馴染みのダドリー・ニコルズが脚色。監督は当初、そのフォードが予定されていたが彼が難色を示したため、36年に渡米後、「暗黒街の弾痕」「西部魂(1941)」などを撮っていたフリッツ・ラングが当たった。スタッフには、撮影に「わが谷は緑なりき」のアーサー・ミラー、音楽を同作のアルフレッド・ニューマンが手掛けるといった具合に当代の名匠が担当。主演はこの作品で評価され、先述の「わが谷は緑なりき」や「ミニヴァー夫人」に起用された名優ウォルター・ピジョン。対するは本作以外でもナチスの将校役を何度か演じた、「イヴの総て」で知られる悪役俳優ジョージ・サンダース。また紅一点として、本作を契機に「飾窓の女」『Scarlet Street』「扉の影の秘密」と以後も3本のラング作品でヒロインを務めるジョーン・ベネットをはじめ、ナチスの追跡者役で怪演を見せる、「駅馬車(1939)」の他ホラー作品への出演で知られるジョン・キャラダイン、さらに後年「ヘルハウス」などホラー作品でも名を挙げる子役時代のロディ・マクドウォールなど個性的な役者が脇を固める。
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