宮本信子 ミヤモトノブコ

  • 出身地:北海道小樽市生まれ、愛知県名古屋市で育ち
  • 生年月日:1945/03/27

略歴 / Brief history

北海道小樽市で生まれ、愛知県名古屋市で育つ。愛知淑徳高校卒業後の1963年、父親のいとこである俳優・千秋実を頼って上京。文学座附属演劇研究所に3期生として入所し、翌64年に劇団青俳に入団する。別役実作『三日月の影』で初舞台を踏み、木村光一作・演出『地の群れ』、今井正演出『神通川』に出演。72年よりフリーとなり、ニューヨーク公演も行った『人形姉妹』など舞台を中心に活動する。映画デビューは67年の大島渚監督「日本春歌考」で、のちに結婚する伊丹十三(当時は伊丹一三)扮する教師・大竹を慕う女子高生三人組のひとり、里見早苗を演じた。以後、山田洋次監督「男はつらいよ・純情篇」71では旅する寅さんに助けられる人妻、森谷司郎監督「放課後」73では女子高生に惑わされる男の妻、山田典吾監督「ユッコの贈りもの・コスモスのように」82では白血病で死にゆく少女の母、森田芳光監督「ときめきに死す」84では旅館の女将役など、助演が続く。この間の69年に伊丹と結婚。84年、夫・伊丹が、舅である宮本の父の葬式で喪主をつとめた経験から脚本を執筆し、初監督した映画「お葬式」に山崎努と俳優夫婦役で共演。おっとりしながら夫の浮気を冷静に勘づく妻・千鶴子をユーモラスに演じて好評を得る。以降、監督として次々と新作を発表する伊丹の映画では欠かせないヒロインとなり、数々の傑作・快作を世に放つ。ラーメン通のトラック運転手(山崎努)に弟子入りする宮本扮するタンポポの物語を縦軸に、食と性を横軸にした「タンポポ」85。伊丹が自身の納税体験を基に“脱税”をテーマとした「マルサの女」87では、前2作のヒロインとは大きく異なるハードボイルドな国税局査察官・板倉亮子を演じ、敵役・山崎努と緊迫した攻防を繰り広げる中にも男女の情感をほのかに絡ませ、キネマ旬報賞主演女優賞、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、シカゴ国際映画祭最優秀主演女優賞ほか多数の映画賞を受賞。女優としての実力を知らしめた。同作の成功以降、伊丹は宮本が主人公の「~の女」シリーズを次々と作り、鋭敏な社会風刺性と洗練されたエンタテインメント性で、日本映画界に“伊丹映画”というジャンルを確立した。続編「マルサの女2」88では宗教法人の脱税に挑む板倉亮子役で続投。「あげまん」90では男に幸運をもたらす芸者・ナヨコ。「ミンボーの女」92では民事介入暴力、通称“ミンボー”専門の弁護士・井上まひる。「大病人」93では癌で余命1年の年長の夫(三國連太郎)を支える妻。伊丹の高校時代からの友人であり義弟の作家・大江健三郎が、実生活をモデルに執筆した私小説の映画化「静かな生活」95では、渡部篤郎演じるイーヨーに作曲を教える先生(岡村喬生)の妻。「スーパーの女」96ではスーパー大好き主婦・井上花子。伊丹の遺作となった「マルタイの女」97では、殺人事件を目撃して警察の護衛を受ける女優・磯野ビワ子。97年、伊丹の自殺によって、この夫唱婦随の映画作りには終止符が打たれたが、宮本は伊丹の全10本の監督作品すべてに出演し、キャリアウーマンから主婦、芸者、女優などさまざまな役柄を強烈かつ鮮烈に演じきった。この間、伊丹作品以外では、黒沢清監督のメジャーデビュー作「スウィートホーム」89で、洋館に巣くう悪霊と対峙するテレビディレクター役。向田邦子の代表作を映画化した「あ・うん」89では、親友の妻を愛する実業家(高倉健)の妻。「マルサの女」シリーズのメイキングを演出した周防正行監督の一般映画デビュー作「ファンシイダンス」89では、主人公(本木雅弘)の母。晩年の伊丹と懇意にしていた三谷幸喜の映画監督デビュー作「ラヂオの時間」97では清掃員役など、現在の日本映画界の第一線で活躍する監督たちの初期作に多く出演している。伊丹の死後は映画が途絶えていたが、2007年、犬童一心監督「眉山」で10年ぶりに映画出演。松嶋菜々子演じる主人公を温かく見守る母・龍子を滋味あふれる演技で見せた。11年にはさらに4年ぶりとなる三宅喜重監督「阪急電車・片道15分の奇跡」にも出演。年を経るごとに女性の可愛らしさ、ひたむきさ、強靱さをしなやかかつ情感豊かに表現してゆき、伊丹映画での強さを感じさせる自立したヒロイン像とはちがった魅力を発揮している。テレビドラマでは、NHK『本日も晴天なり』81、『ゆっくりおダイエット』94、『毛利元就』97、『さよなら五つのカプチーノ』98、『まんてん』02、『農家のヨメになりたい』04、『どんど晴れ』07、テレビ朝日『芸者小春の華麗な冒険』91、テレビ東京『飛んで火に入る春の嫁』98などに出演。ことに『どんど晴れ』の老舗旅館を切り盛りする重責を担って主人公と対立する女将と、『飛んで火に入る春の嫁』の下町の寿司屋に嫁いだ途端、夫に先立たれる主人公の奮闘記は心に残る。自身の出発点である演劇活動も健在で、『家族熱』91・93、『夫婦善哉』92、『出口なし』94、『佐渡島他吉の生涯』97、『うさぎ一座物語』99、『あげまん』00・01、『紙屋町さくらホテル』01、『おやすみの前に』02、『港町十三番地』03・04、『しあわせのつぼ』06、『王様とおばさん』08、『眉山』07・09など多数に出演するかたわら、近年はジャズシンガーとしても活躍。ライブ活動も旺盛に展開している。

宮本信子の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • チョコレートな人々

      制作年: 2022
      多様な人が働くチョコレートブランド『久遠チョコレート』のドキュメンタリー。全国に52の拠点を持ち、こだわりのフレーバーや彩り豊かなデザインが人気の久遠チョコレートは、心や体に障がいがある人など様々な人たちが働きやすい職場づくりを続けている。「人生フルーツ」の東海テレビによる2021年日本民間放送連盟賞テレビ部門グランプリ受賞作を映画化。監督は、「青空どろぼう」の鈴木祐司。ナレーションは、「メタモルフォーゼの縁側」の宮本信子。
    • ハウ

      制作年: 2022
      「ナミヤ雑貨店の奇蹟」などの脚本家・斉藤ひろしによる小説を原作に、「引っ越し大名!」の犬童一心監督が映画化。婚約者に別れを告げられた市役所職員・赤西民夫。空虚な日々を送る彼だったが、真っ白な保護犬ハウと出会い、いつしかかけがえのない存在となっていく。出演は「女子高生に殺されたい」の田中圭、「真夜中乙女戦争」の池田エライザ。
    • メタモルフォーゼの縁側

      制作年: 2022
      文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞など数々の賞に輝いた鶴谷香央理の同名コミックを芦田愛菜と宮本信子のダブル主演で映画化。BL漫画を読むことが趣味の女子高生うららと、書店で偶然出会ったBL漫画に魅了された75歳の老婦人・雪の交流の物語。共演は、なにわ男子の高橋恭平、「偶然と想像」の古川琴音。監督は「青くて痛くて脆い」の狩山俊輔。
    • キネマの神様

      制作年: 2020
      松竹映画100 周年を記念した、山田洋次監督による人間ドラマ。助監督として撮影に明け暮れる青春を送ったゴウだったが、今ではすっかりダメ親父となっている。半世紀前にゴウが監督するはずだった映画の脚本が出てきたことから、彼とその家族は再び動き始める。志村けんの逝去を受け、新型コロナウイルス感染症の肺炎により亡くなった、志村けんが務める予定だった主人公のゴウ役を、志村の遺志を継ぎ沢田研二が演じる。また、若き日のゴウを菅田将暉が、妻の淑子とその若き日をそれぞれ宮本信子と永野芽郁が演じている。原作は、原田マハの同名長編小説。
      70
    • STAND BY ME ドラえもん2

      制作年: 2020
      大ヒットした3DCGアニメ映画「ドラえもん」第2弾。おばあちゃんに会いたくなったのび太は、タイムマシンで過去へ。再会したおばあちゃんから“お嫁さんが見たい”と言われたのび太は、ドラえもんと共に、未来の自分の結婚式を見せようとするが……。監督は前作に続いて、山崎貴と八木竜一のコンビが務める。声の出演は水田わさび、大原めぐみらレギュラー陣に加え、「浅田家!」の妻夫木聡、「いちごの唄」の宮本信子、「架空OL日記」のバカリズムらがゲストで参加する。
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    • 真実(2019)

      制作年: 2019
      「万引き家族」の是枝裕和監督が、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホークといった俳優陣を迎え、全編フランスで撮影したドラマ。国民的大女優ファビエンヌによる自伝本をめぐり、母と娘の間に隠されたある“真実”が暴かれていく。共演は「8人の女たち」のリュディヴィーヌ・サニエ。撮影を「モーターサイクル・ダイアリーズ」のエリック・ゴーティエが担当する。
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