黒沢清 クロサワキヨシ

  • 出身地:兵庫県神戸市東灘区
  • 生年月日:1955/07/19

略歴 / Brief history

【ホラーにこだわり、映画表現の境界線上を漂う】兵庫県の生まれ。立教大学在学中に自主映画活動を始め、万田邦敏らと制作集団パロディアス・ユニティを結成。同グループはのちに塩田明彦、青山真治らも輩出した。立教では映画論講座を受け持った蓮實重彦の薫陶を受け、8ミリ作品が自主映画コンテストPFFで入選を果たす。在学中より長谷川和彦「太陽を盗んだ男」の現場に参加し、卒業後は相米慎二「セーラー服と機関銃」の助監督を担当。1982年、長谷川や相米ほかの若手監督が集ったディレクターズ・カンパニーの設立に、唯一助監督のままで参加し、この製作によるピンク映画「神田川淫乱戦争」でデビューに至った。一部で賛美された第1作に続いてロマンポルノ作品を監督するが、これは改編を経て「ドレミファ娘の血は騒ぐ」(85)として一般公開される。前2作を評価した伊丹十三製作のホラー大作「スウィートホーム」(89)や、低予算ホラー「地獄の警備員」(92)ののち、シナリオ『カリスマ』がサンダンス・インスティテュートのスカラシップを受賞、渡米研修に臨んだ。帰国後はビデオ向けの低予算作品「勝手にしやがれ!!」シリーズや「復讐」シリーズなど哀川翔とのコンビ作を量産し、97年に手がけた「CURE」が内外で大きく注目された。以後、「ニンゲン合格」「大いなる幻影」(99)、「アカルイミライ」(02)、「トウキョウソナタ」(08)などの多様なジャンルに挑戦し、一方で「カリスマ」(00)、「回路」(01)、「叫」(06)などのホラー系作品にも執着し続ける。列記したこれらはすべて世界三大映画祭のいずれかに出品・招待され、「回路」と「トウキョウソナタ」は受賞も果たした。【日本映画の辺境から世界へ】自主映画、立教ヌーヴェルヴァーグ、ピンク映画、ビデオ用映画と、スタジオ崩壊以後に始まる映画運動めいた潮流をことごとくなぞり、日本映画の傍流から独自の位置付けに至った。「スウィートホーム」以前ではゴダール等の影響をあらわにしていたが、「勝手にしやがれ!!」以降、与えられた条件の中で自分自身の映像だけを選び取る方法を採り、その文法や映像感度が世界的な新しい映像潮流と合致していく。自身はウェルメイドな“アメリカ映画”への志向を表明しつつ、その表現は慣例的な描写や語りを排し、時に難解・意味不明とも受け止められ、さらに賛辞の批評がまた抽象的となる傾向もあった。得意分野のホラーもいわゆる和製ホラーの諸作から一歩引いた位置で崇められ、結果的に「CURE」「トウキョウソナタ」といった“わかりやすい”難解さが一般からの評価を得るという構図になっている。

黒沢清の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 蛇の道(2024)

    制作年: 2024
    愛娘を惨殺された男が精神科医の女の手を借りて復讐に乗り出すリベンジ・サスペンス。「岸辺の旅」(15)でカンヌ国際映画祭ある視点部門の監督賞を、「スパイの妻〈劇場版〉」(20)でヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)を受賞した黒沢清が、26年前の監督作「蛇の道」(88)を日仏共同製作でセルフリメイク。オールフランスロケ、フランス語にて撮影が行われた。復讐に協力する謎の人物を前作の男性から女性に変更、その女医・小夜子を柴咲コウが鋭く妖しい眼差しと、「野獣のような身のこなし」で演じている。加えて、2019年第72回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作「レ・ミゼラブル」(19)のダミアン・ボナールが復讐に燃える男を熱演。共演はフランスの名優・映画監督のマチュー・アマルリック、「シンプルな情熱」のグレゴワール・コラン。日本からは西島秀俊、青木崇高が出演。
  • 映画の朝ごはん

      制作年: 2023
      長年にわたり映画やドラマの撮影現場で愛され続けてきた伝説の弁当屋『ポパイ』にフォーカスした異色ドキュメンタリー。ロケ撮影の定番の朝ごはん、ポパイのおにぎり弁当ができるまでの工程や、制作部による影の努力などを、様々なスタッフの証言を交えて映し出す。ナレーションを女優・歌手の小泉今日子が担当。沖田修一、黒沢清、瀬々敬久、樋口真嗣、山下敦弘といった映画監督たち、美術の磯見俊裕、俳優の内藤剛志など映画・ドラマに関わる様々なスタッフが出演。
    • スパイの妻 劇場版

      制作年: 2020
      黒沢清が蒼井優主演で撮り上げたヒューマンサスペンス。1940年。満州で偶然、ある国家機密を知ってしまった優作は、正義のため事の顛末を世に知らしめようとする。一方、妻・聡子は反逆者と疑われる夫を信じ、ただ愛する優作と共に生きることを心に誓うが……。共演は「ロマンスドール」に続き蒼井と夫婦を演じる高橋一生、「犬鳴村」の坂東龍汰、「凪待ち」の恒松祐里。
      60
    • 旅のおわり世界のはじまり

      制作年: 2019
      黒沢清監督が前田敦子を主演に迎え、ウズベキスタンで全編ロケ撮影されたヒューマンドラマ。舞台で歌うという夢への情熱を胸に秘めたテレビ番組リポーターが、取材で訪れたウズベキスタンでの様々な出会いによって、新しい扉を開き、成長していく姿を映し出す。共演は「きみの鳥はうたえる」の染谷将太、「花筐/HANAGATAMI」の柄本時生、「モリのいる場所」の加瀬亮。
      90
    • 予兆 散歩する侵略者 劇場版

      制作年: 2017
      「散歩する侵略者」の黒沢清の監督により新たな設定・キャストで制作された同作スピンオフドラマの劇場版。新任外科医・真壁と常に共に行動するうちに夫の辰雄が精神的に追い詰められていき、不安を抱く悦子。そんな彼女に真壁は地球を侵略しに来たと告げる。脚本には「蛇の道」以来の黒沢清監督とのタッグとなる「リング」シリーズの高橋洋も参加。出演は「22年目の告白-私が殺人犯です-」の夏帆、「3月のライオン」シリーズの染谷将太、「聖の青春」の東出昌大ほか。劇場版は音がドルビーデジタル 5.1 chにアップグレードされ、映像の細部にも変更が加えられている。
    • 散歩する侵略者

      制作年: 2017
      「岸辺の旅」の黒沢清が劇団イキウメの同名舞台を映画化。鳴海の夫は数日間の行方不明の後、侵略者に乗っ取られて帰ってきた。同じころ、町で一家惨殺事件が発生し、ジャーナリストの桜井が取材に訪れる。第70回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品作品。出演は、「追憶」の長澤まさみ、「ぼくのおじさん」の松田龍平、「シン・ゴジラ」の長谷川博己、「PとJK」の高杉真宙、「ハルチカ」の恒松祐里。
      60