藤村志保 フジムラシホ

  • 出身地:神奈川県川崎市の生まれ
  • 生年月日:1939年1月3日

略歴 / Brief history

神奈川県川崎市の生まれ。本名・静永操(旧姓・薄<すすき>)。4歳の時に父が戦死し、毛糸商を営む母の手で育てられる。1957年、横浜のフェリス女学院高等部を卒業。共立女子大学文芸学部の聴講生となる。当時すでに名取・花柳麗として日本舞踊を教えていた。60年、シカゴの大学で演劇を学ぼうと渡米を決意するが、兄が若くして急死したため断念。61年に大映京都撮影所演技研究所へ入所。同所で学んでいた時に市川雷蔵に推薦され、島崎藤村原作、市川崑監督の「破戒」62に初出演。被差別部落出身であるがゆえに苦悩する青年・丑松(雷蔵)の恋人・お志保という大役に抜擢される。芸名は永田雅一社長自ら原作者と役名からとって“藤村志保”と命名。新人らしい熱っぽい演技の中に日本女性の優しさと芯の強さを可憐に見せて、ホワイト・ブロンズ助演女優賞ほか同年の新人賞を独占。現代的な感覚の女優に脚光が集まった時代に、それだけ新鮮なデビューだった。続いて同年の雷蔵主演「斬る」で三隅研次監督の華麗な映像美のなかに、武家の女性の強さと忍従の美を見事に表現。山本薩夫監督「忍びの者」では野心と権謀にあやつられ、歴史の中で奔走する石川五右衛門(雷蔵)をひたすら愛し待ち続ける女のいじらしさ、悲しさを抑揚の効いた演技で表し、わずかデビュー1年の間に新人離れした才能を十二分に発揮する。以降、凛とした和服姿の似合う女優として大映時代劇にはなくてはならぬ存在となり、特に雷蔵との共演作では「眠狂四郎」「忍びの者」「若親分」の各シリーズ、「新選組始末記」63、「昨日消えた男」64、「大殺陣・雄呂血」66などで端正な美しさを見せる。当時の大映を雷蔵とともに支えた勝新太郎とも、「破れ傘長庵」「雑兵物語」「座頭市喧嘩旅」63、「駿河遊俠伝・賭場荒し」64などで共演。古風で気品あるイメージは、NHK大河ドラマ『太閤記』65の秀吉(緒形拳)の妻・ねね役でも存分に活かされ、お茶の間でも人気を高める。同年には演劇版の『太閤記』で初舞台。大河ドラマには以降も『三姉妹』67、『龍馬がゆく』68、『天と地と』69、『黄金の日日』78、『太平記』91、『八代将軍吉宗』95、『風林火山』07に出演して貫禄を示すことになる。一方で、大映時代から本数こそ少ないが現代劇でも次第に頭角を現し、山本薩夫監督「白い巨塔」65などに助演したのちの67年、三隅研次監督「古都憂愁・姉いもうと」で初主演を果たし、妹の恋人と関係してしまった姉を好演する。再び時代劇に戻った山本周五郎原作、三隅監督の「なみだ川」68では、江戸の下町に生きる気の良い兄妹思いのヒロイン・おしずをこまやかに演じ、代表作とする。田中徳三監督「怪談雪女郎」68では雪女の内に秘めた情熱を巧演。70年に結婚し、女性映画での大成が期待されるも71年に大映が倒産。一時は家庭を優先する時期を持つが演技への意欲は衰えず、テレビと舞台で再び活動を始める。『国盗り物語』『勝海舟』74など舞台作品においても時代劇で活躍。山本薩夫監督「不毛地帯」76で大映時代以来6年ぶりに映画に復帰すると、77年の山田洋次監督「男はつらいよ・寅次郎頑張れ!」では18代目のマドンナに選ばれ、寅次郎が恋する憂いのある女性をしっとりと好演する。デビュー以来保ち続けてきた魅力である、柔らかで上品な物腰の中に芯のしっかりした包容力を表せる演技力は撮影所システム終焉後の映画界でも必要とされ、明治の女性らしい折り目正しい姿を見せた澤井信一郎監督「わが愛の譜・滝廉太郎物語」93、相米慎二監督「あ、春」98の母親役と好助演が続く。後者で毎日映画コンクールの田中絹代賞を受賞。以降も、野村惠一監督「二人日和」05で長年連れ添った夫婦の情愛を、佐々部清監督「夕凪の街・桜の国」07では原爆によって家族を失った女性の万感の思いを演じて映画に厚みを与える。中西健二監督「花のあと」10では語りを担当し、本格時代劇女優の風格で作品を彩った。テレビドラマの出演作はほかに、NHK『花へんろ・風の昭和日記』85、『ひまわり』96、『柳橋慕情』00、『てるてる家族』03、『ねばる女』04、『だんだん』08、『マドンナ・ヴェルデ/娘のために産むこと』11、TBS『温泉へ行こう』99~05など多数。舞台は『父の詫び状』93、『恋ぶみ屋一葉』94、『冬の運動会』01などがあり、武原はんに師事した地唄舞の発表も定期的に行なう。秋元松代作『北越誌』05では瞽女に扮し、結城座の人形と共演する実験的な舞台を成功させた。83年に女優として初めて放送番組向上委員会に就任。85年、臓器移植の問題を取材した『脳死をこえて』を執筆し、読売女性ヒューマン・ドキュメンタリー大賞を受賞している。

藤村志保の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • 救いたい

    制作年: 2014
    麻酔科医として患者を懸命に守り、また地域医療に奔走する夫を支える女性を通し、東日本大震災からの復興に向けひたむきに生きる人々を描いたヒューマンドラマ。国立病院機構仙台医療センターで麻酔科医長等を務める川村隆枝が、あまり知られていない麻酔科医の姿や自身の体験談を綴ったエッセー『心配ご無用――手術室には守護神がいる』を映画化。監督は「大河の一滴」「ハチ公物語」の神山征二郎。苦難を乗り越え前向きに生きようとする麻酔科医を「セカンドバージン」「ラヂオの時間」の鈴木京香が、被災地での診療に身を捧げる夫を「沈まぬ太陽」「伊豆の踊子」の三浦友和が演じる。前売券の売上の一部が、地域医療振興に向け寄付される。
    76
  • 悪夢ちゃん The 夢ovie

    制作年: 2014
    恩田陸の小説『夢違』を原案にしたTVドラマ『悪夢ちゃん』の劇場版。他人の未来の災難を予知夢として見る力を持つ少女と、彼女の見た夢を読み解くことのできる教師が次々と巻き起こる事件を解決する。監督は、TV版の演出を手掛けた佐久間紀佳。出演は「ジャッジ!」の北川景子、「BUNRAKU ブンラク」のGACKT、「映画 体脂肪計タニタの社員食堂」の優香、「コドモ警察」のマリウス葉。日本テレビ系全国28社(読売テレビ放送=札幌テレビ放送=宮城テレビ放送=静岡第一テレビ=中京テレビ放送=広島テレビ放送=福岡放送=青森放送=テレビ岩手=秋田放送=山形放送=福島中央テレビ=テレビ新潟=テレビ信州=山梨放送=北日本放送=テレビ金沢=福井放送=日本海テレビ=山口放送=四国放送=西日本放送=南海放送=高知放送=長崎国際テレビ=熊本県民テレビ=テレビ大分=鹿児島読売テレビ)
    100
  • この空の花 長岡花火物語

    制作年: 2012
    2004年の新潟県中越地震から復興をとげ、11年の東日本大震災発生時には被災者をいち早く受け入れた新潟・長岡市を舞台に、ひとりの女性新聞記者がさまざまな人と出会い、不思議な体験を重ねていく姿を大林宣彦監督が描く。出演は「沈まぬ太陽」の松雪泰子、「明日に架ける愛」の高嶋政宏。2012年4月7日より新潟県・長岡にて先行ロードショーされた。
    82
  • 花のあと

    制作年: 2009
    藤沢周平の同名短編小説を「青い鳥」の中西健二監督が映画化した時代劇。江戸時代の東北地方を舞台に、密かに想いを寄せていた下級武士の仇討ちを果たす女性の姿を描く。出演は「わたし出すわ」の北川景子、「曲がれ!スプーン」の甲本雅裕、本作が映画初出演となるバレエ界の新星・宮尾俊太郎、「ジェネラル・ルージュの凱旋」の國村隼など。
  • 陰獣

    制作年: 2008
    1928年に江戸川乱歩が発表した同名小説を「完全犯罪クラブ」のバーベット・シュローダーが映画化。最新著書のPRのために来日したフランスの推理小説家が、奇妙な事件に巻き込まれていく。出演は「裏切りの闇で眠れ」のブノワ・マジメル、フランス在住のモデル・源利華、「MW-ムウ-」の石橋凌、「20世紀少年 第2章 最後の希望」の西村和彦など。
  • 砂時計(2008)

    制作年: 2008
    10数年にもわたる初恋の成就を描いた青春ラブストーリー。原作は芦原妃名子の人気コミック。主人公たちの思春期を「天然コケッコー」の夏帆と「鉄人28号」の池松壮亮、成人してからの二人を「未来予想図 ~ア・イ・シ・テ・ルのサイン~」の松下奈緒と「パッチギ! LOVE & PRACE」井坂俊哉が演じる。脚本・監督は「LOVE SONG」「修羅雪姫」の佐藤信介。
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