深津絵里 フカツエリ

  • 出身地:大分県大分市
  • 生年月日:1973/01/11

略歴 / Brief history

大分県大分市の生まれ。1986年、“ミス原宿コンテスト”でグランプリを受賞したのを機に芸能界入り。萩尾望都のコミック『トーマの心臓』をモチーフに、金子修介監督が映像化した「1999年の夏休み」88に“水原里絵”の芸名で出演して、女優デビューする。4人の少女俳優たちが少年役に扮したこの作品で、同性の先輩に憧れを抱く美少年のひとり・則夫を瑞々しく演じ、鮮烈なデビューを飾った。この年は、親友の自殺を発端に友情のもろさとかけがえのなさを描いた村上修監督「ステイ・ゴールド」にも出演。さらにJR東海『クリスマスエクスプレス'88』のCMにも起用され、不貞腐れた顔でホームに佇みながら、列車から降りてくるはずの恋人を待ち続ける少女の役で、一気にお茶の間の注目を集める。翌89年、役名と同じ“高原里絵”名義で主演した金田龍監督の幻想ホラー「満月のくちづけ」では、ローマ国際ファンタスティック映画祭最優秀主演女優賞を受賞。この時期、歌手としては本名の“深津絵里”で、女優としては“高原里絵”の芸名で活動するとされていたが、結局“高原”名義で出演した作品はこの「満月のくちづけ」一作きりで、歌手活動もそれほど長くは行なわれず、ドラマ初出演作のTBS『予備校ブギ』90から芸名も“深津絵里”に一本化されて今日に至る。91年には再び村上監督と組んだ「真夏の地球」で、モテモテの姉とは対照的な妹の役でボーイッシュな魅力を振りまいた。以後はテレビドラマを中心に活躍。フジテレビ『愛という名のもとに』『二十歳の約束』92、『悪魔のKISS』93、『この愛に生きて』『若者のすべて』94、日本テレビ『大人のキス』93、『ベストフレンド』95など話題のドラマに立て続けに出演し、着実に演技力に磨きをかけていく。連ドラ初主演作となったフジテレビ『最高の片想い』94や、光野道夫監督「バースデイプレゼント」95の助演などを経て、96年、見ず知らずの男女がパソコン通信でメールのやり取りを交わすうちに、少しずつ心を通わせ合う姿を丹念に描いた森田芳光監督「(ハル)」で映画初主演。極端に台詞が削ぎ落とされた中、恋人を亡くした悲しみや、新たな伴侶を得たときめきや戸惑い、ささやかな誤解が生む嫉妬などを、細やかな表情の変化のみで繊細に演じきり、さらなる評価を得る。続いて97年には、織田裕二主演のフジテレビ『踊る大捜査線』に出演。現実的でクールだが、過去にまつわるトラウマを抱えた正義感あふれる女刑事・恩田すみれ役を溌剌と好演し、のちに映画化もされメガヒットとなるシリーズの成功に大きく貢献した。98年の同局『きらきらひかる』では、個性あふれる顔ぶれの共演陣に囲まれ、一般人の目線を忘れずに遺体や事件と向き合う新人監察医役で堂々と主演。こちらも、のちにスペシャル版が何度も制作される好評を得て、人気・実力ともにトップクラスの女優のひとりとなる。2000年代に入ってからは映画の活躍も顕著になり、『踊る大捜査線』シリーズを手がけた本広克行監督の「スペーストラベラーズ」00では、強盗に押し入られた銀行で人質になり、事態をややこしく引っかき回す行員役でアンサンブルの一角を担ったあと、森田監督と久々にタッグを組んだ「阿修羅のごとく」03に出演。向田邦子脚本のテレビドラマをベースに、四姉妹の悲喜こもごもをコミカルかつシニカルに綴った本作において、鋭い洞察眼を持ちながらも恋には不器用な三女を巧演し、日本アカデミー賞最優秀助演女優賞に輝いた。06年の小泉堯史監督「博士の愛した数式」では、80分しか記憶がもたない“博士”に日々接するうちに、愛情にも似た不思議な絆で結ばれていくシングルマザーを好演。三谷幸喜監督「ザ・マジックアワー」08では、ふたりの男を手玉に取りつつ、作品の鍵を握る魔性の女を、上品な色気を醸し出しながら演じた。09年、西原理恵子のコミックを森岡利行監督が映画化した「女の子ものがたり」では、自身の過去を振り返りながら再起のきっかけを掴む、スランプに陥った漫画家の心の機微を体現した。そして10年の李相日監督「悪人」では、魅力のひとつでもあった年齢不相応の若々しいキュートさを完全に封印し、適齢期を過ぎた若くはない女の虚無や孤独をにじませつつ、恋に落ちてしまった殺人犯との行くあてのない逃避行の過程で、たくましくも美しく変貌を遂げていくヒロインに肉迫し、モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞に輝いたほか、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞している。テレビドラマはほかに、フジテレビ『彼女たちの時代』99、『天気予報の恋人』00、『カバチタレ!』01、『恋ノチカラ』『空から降る一億の星』02、『スローダンス』05、『西遊記』06、『CHANGE』08、TBS『末っ子長男姉三人』03、NHK『川、いつか海へ・6つの愛の物語』03など多数。舞台活動にも意欲的で、『陽だまりの樹』95、『キル』97、『半神』99、『農業少女』00、『贋作・桜の森の満開の下』01、『走れメルス・少女の唇からはダイナマイト!』04、『あわれ彼女は娼婦』06など、野田秀樹ら名演出家からの信頼も厚い。イギリスのサイモン・マクバーニーが谷崎潤一郎の世界に挑んだ『春琴』08の演技で、紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞し、同作は09年にロンドンのバービカン・センターでも再演された。

深津絵里の関連作品 / Related Work

作品情報を見る

  • すずめの戸締まり

    制作年: 2022
    世界を魅了するアニメーション監督・新海誠が贈る、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる”扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描いた現代の冒険物語。すずめの声を、1700 人を超えるオーディションから選ばれた原菜乃華が担当。扉を閉める旅を続ける“閉じ師”の青年・草太役には松村北斗。すずめの叔母・環役に深津絵里、草太の祖父・羊朗役に松本白鸚。さらには染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜という精鋭キャストが集結。音楽は新海作品 3 度目のタッグとなる RADWIMPS。映画音楽作曲家・陣内一真が共作として参加。主題歌「すずめ」を唄うのは次世代の逸材・十明。すずめが歩む道の先で待つのは、見たこともない風景、人々との出会いと別れ、そして驚きと困難の数々。それでも前に進む彼女たちの冒険は、不安や不自由さと隣り合わせの日常を生きる者たちの旅路にも、一筋の光をもたらす。過去と現在と未来をつなぐ、“戸締まり”の物語。
  • サバイバルファミリー(2017)

    制作年: 2017
    すべての電気が止まった危機的状況を活写する、「ウォーターボーイズ」の矢口史靖監督による異色ドラマ。ある日突如電気がなくなり、電気で動くものすべてが止まったため都市機能が麻痺。混乱が広がる中、鈴木一家は東京脱出を図り、生き残りをかけ奮闘する。亭主関白な父を「アウトレイジ ビヨンド」の小日向文世が、とぼけたところのある母を「ステキな金縛り」の深津絵里が演じるほか、「ハッピーフライト」の時任三郎、「病院へ行こう」の大地康雄らが出演。
    70
  • 永い言い訳

    制作年: 2016
    「夢売るふたり」の西川美和が直木賞候補となった自らの書き下ろし小説を映画化。交通事故で妻が他界したものの悲しみを表せない小説家の衣笠幸夫。そんな中、同じ事故の犠牲となった妻の親友の遺児たちと交流を深める幸夫は亡き妻とも再び向き合い始めてゆく。出演は「天空の蜂」の本木雅弘、「私の男」の竹原ピストル、「高台家の人々」の堀内敬子、「セトウツミ」の池松壮亮、「母と暮せば」の黒木華、「岸辺の旅」の深津絵里。
    90
  • 岸辺の旅

    制作年: 2015
    「トウキョウソナタ」で第61回カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞を受賞した黒沢清監督が、湯本香樹実が2010年に発表した同名小説を映画化。3年前に失踪し死んだ夫と彼を見送ることができなかった妻が、彼の最期の時間を辿りながら彼岸と此岸の間を行く旅を描いた本作は、第68回カンヌ国際映画祭ある視点部門監督賞を獲得した。脚本には「海炭市叙景」の宇治田隆史も参加している。主演は「悪人」で第34回モントリオール世界映画祭最優秀女優賞を受賞した深津絵里と、「私の男」で第36回モスクワ国際映画祭最優秀男優賞を受賞した浅野忠信。ほか「フラガール」の蒼井優、バレエ・ダンサーの首藤康之、「カンゾー先生」の柄本明らが出演。
    60
  • 寄生獣 完結編

    制作年: 2015
    人間とは一体何か鋭く突き第27回星雲賞コミック部門を受賞した岩明均の世界的SF漫画を、「永遠の0」「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴監督が二部構成で映画化したうちの完結編。人間に寄生し身体を乗っ取り捕食する謎の新生物パラサイトとのますます激化する戦いの行方を、VFXを駆使し描く。脚本には山崎監督のほか、テレビドラマ『リーガルハイ』の古沢良太が参加している。右手に寄生したパラサイトと奇妙な友情を持つ高校生を「ヒミズ」で第68回ヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した染谷将太が演じるほか、「悪人」の深津絵里、「桐島、部活やめるってよ」の橋本愛、「私の男」の浅野忠信ら豪華俳優陣が集結。
    70
  • 寄生獣

    制作年: 2014
    人間とは一体何か鋭く突き第27回星雲賞コミック部門を受賞した岩明均の世界的SF漫画を、「永遠の0」「ALWAYS 三丁目の夕日」の山崎貴監督が映画化。人間に寄生し身体を乗っ取り捕食する謎の新生物パラサイトとの戦いを、VFXを駆使し描く。脚本には山崎監督に加え、テレビドラマ『リーガルハイ』の古沢良太が参加している。右手に寄生した謎の生物と奇妙な友情を持つ高校生を「ヒミズ」で第68回ヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞した染谷将太が演じるほか、「悪人」の深津絵里、「桐島、部活やめるってよ」の橋本愛、「私の男」の浅野忠信ら豪華俳優陣が集結。2015年には完結編が公開される。
    70