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愛する娘を取り戻すため二宮和也が躍動!前代未聞の誘拐事件を描いた『マイファミリー』
2022年11月30日「友果(ともか)さんを、誘拐しました」。二宮和也扮する主人公・鳴沢温人(なるさわ・はると)のスマホに突然かかってきた電話の相手は、冷たい機械音声の声でそう告げた。「5億円を用意してください……警察に通報した場合は、友果さんを殺します」。こうして前代未聞の誘拐事件の幕が開く――。 最愛の娘を取り戻すため、姿の見えない誘拐犯を相手に敢然と闘いを挑む夫婦とその仲間たちの愛と絆を描いた『マイファミリー』のBlu-ray BOXとDVD-BOXが、12月7日にリリースされる。 警察を出し抜いて誘拐犯と取り引き、二重構造の頭脳戦 2022年4月から6月にかけてTBS系で放送された連続ドラマ『マイファミリー』は、これまで見たこともないような“完全誘拐”事件の顛末を描くノンストップファミリーエンターテインメント。二宮が演じる主人公の鳴沢温人はゲームアプリ開発会社の創業社長で、メディアへの露出も多い時代の寵児である。妻の未知留(多部未華子)は料理研究家としてSNSのフォロワーが1万人を超えるセレブ主婦、ひとり娘の友果(大島美優)は小学6年生。一見、誰もがうらやむ幸せな家族のはずだったが、実は温人の会社は業績不振で資金繰りにも困り、家庭を顧みず働き続けてきたことで未知留との夫婦仲はすっかり冷え切っていた。 そんな鳴沢家をさらに誘拐という悲劇が襲ったのだ。温人は警察に連絡し、神奈川県警捜査一課の誘拐事件のエキスパート・葛城圭史(玉木宏)の指揮のもと、かき集めた5億円を犯人の指定場所へと運ぶが、まるでゲームのように続く新たな指示に振り回されるうちに、警察の介入を犯人に見破られてしまう。温人と未知留はネットニュースの生配信を通じて娘の誘拐を公表し、犯人の要求通り警察を排除して単独で取り引きすることを宣言した。大学時代の友人で弁護士の三輪碧(賀来賢人)と元刑事の東堂樹生(濱田岳)に協力を仰ぎながら、温人と未知留は秘かに捜査を続行していた警察をあるトラップで出し抜き、犯人に5億円を渡して友果を無事に取り返す……。 一般的に誘拐事件を描いたフィクションの場合、身代金受け渡しなどのサスペンス要素は“警察VS犯人”の構図になりがちだ。しかし、本作では犯人に翻弄される夫婦の姿に力点を置いて、“被害者VS犯人”と“被害者VS警察”の二重構造になっていく点が、とても新鮮に映った。しかも、普通に連続ドラマ全10話を費やしてこの誘拐事件の解決までが描かれるのだろうと勝手に思い込んでいたら、意外にもかなり早い段階で友果の誘拐は一応の解決を見る。このスピーディーな展開と、そこから新たに動き出す前代未聞の誘拐事件の急展開に心底驚かされた。 複雑な謎解きを、豪華キャストがノンストップで駆け抜ける 温人たちに裏をかかれ犯人を取り逃がした葛城は、「犯人を野放しにしたことを、あなたは必ず後悔する」と温人に告げる。その言葉通りと言うべきか、事件解決からちょうど1年後、温人のもとに再び機械音声の電話がかかってきた。「新たな誘拐をしました――」。温人は犯人に言われるがまま、新たに発生した誘拐事件の身代金受け渡しの交渉人役を強要されてしまう。やがて、友果誘拐の4年前に起きた別の少女誘拐事件が一連の事件と関連していることも判明し、謎がさらに謎を呼ぶ巨大なミステリーの連鎖が、まさに「ノンストップ」で駆け抜けるごとく描かれていく。 喜怒哀楽の感情をすべて凝縮させたような展開と芝居の中で、二宮和也は人間の弱さや狡猾さまでも全身で表現。家族や仲間との絆を取り戻していく姿を見事に演じきる。対照的に感情をあまり表に出さず淡々と振る舞いながらも、決して犯罪を許さないという強い信念を持つ葛城を演じた玉木宏の存在も光った。二宮とは『山田太郎ものがたり』以来15年ぶりの共演となった多部未華子の、娘への愛にあふれた芯の強い女性像や、旧友を見守り懸命に支えようとする賀来賢人と濱田岳の飄々とした中に熱さを秘めた芝居が、チームの空気感を硬軟合わせて醸し出し、見事だった。 オンエア時には、事件の真相をめぐるさまざまな考察がSNSなどを賑わせた話題作。真犯人を推理する声もさまざまに挙がった。クライマックスの真実に辿り着いた後でもう一度、第1話から見直し、あの時、“あの人”が一体どんな動きをしていて何を発言していたのか、そこに注目してみるのも面白いだろう。 キャストの素顔や画期的な撮影システムの解説など、充実の特典映像 https://youtu.be/RO2EmEssIp4 DVD-BOXとブルーレイBOXには特典映像を多数収録。「メイキング」は主演の二宮をはじめメインキャストのコメントが豊富に盛り込まれ、人物紹介と設定などをキャラクターのカテゴリごとに詳しく解説していく。身代金を詰めたスーツケースの重さに苦戦する二宮と多部の撮影時の様子など、緊迫したストーリーの裏側で時折笑いがこぼれる現場の和気あいあいとしたムードも窺い知れる。 また、日本の民放ドラマでは初の試みだという「バーチャルプロダクション」の解説映像は必見! 「バーチャルプロダクション」とは走る車内のシーンなどの撮影で、実際にロケした背景映像をスタジオに設置した巨大なLEDディスプレイに映し出し、その手前に置かれた劇用車に俳優陣が乗り込むことで、スタジオの中で車内の合成映像がそのまま撮影できる画期的なシステム。俳優が実際に走る車に乗り込み公道で撮影する大変さと比較して撮影の自由度がはるかに高いのはもちろんのこと、CG等で後から背景を合成する従来のグリーンバックなどの撮影法と比べても、俳優たちが車窓を流れる景色を目で確認しながら芝居ができるため、実際に車を運転しているのとほとんど変わらないリアリティーを実感できるのだ。「今後、TBSの全番組でこれを使うべきです」と興奮して語る賀来の言葉が印象的だった。 ほかにも、制作発表の模様や主要キャストのSPコメント集、オンエア期間中に公式YouTube等で配信された「“ありがとう”フォトムービー」などを収録。撮影終了を迎えたキャストが花束を受け取り挨拶する様子を収めた「クランクアップ集」は、子役を含めた総勢22名にも及ぶキャストのコメントをすべて網羅した圧巻の記録となっている。 これらすべてを合わせ、特典映像だけで約90分の大ボリューム。ドラマ本編は未公開場面を追加したディレクターズカット版での収録となる。「マイファミリー」を隅から隅まで堪能できる充実のBOXだ。 文=進藤良彦 制作=キネマ旬報社 『マイファミリー』 ●12月7日(水)Blu-ray BOX&DVD-BOXリリース(全10話)※レンタル同日リリース ▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら ●Blu-ray BOX:29,040円(税込)、DVD-BOX:22,990円(税込) 【特典映像】 ・メイキング ・制作発表 ・クランクアップ集 ・キャストSPコメント ・「ありがとう」フォトムービー ・SPOT集 【封入特典】 ブックレット ●2022年/日本 ●出演:二宮和也 多部未華子 賀来賢人 高橋メアリージュン 那須雄登(美 少年/ジャニーズJr.)/ 松本幸四郎 富澤たけし(サンドウィッチマン)/ 濱田岳 玉木宏 ●脚本:黒岩 勉 ●主題歌:Uru「それを愛と呼ぶなら」(ソニー・ミュージックレーベルズ) ●音楽:大間々 昂 ●プロデューサー:飯田和孝 渡辺良介(大映テレビ) ●スーパーバイジングプロデューサー:那須田 淳 ●協力プロデューサー:大形美佑葵 ●演出:平野俊一 田中健太 宮崎陽平 富田和成 ●製作著作:TBS ●製作著作・発売元:TBS 発売協力:TBSグロウディア 販売元:TCエンタテインメント ©TBS -
山口智子と橋本環奈がWヒロイン!佐藤浩市 × 横浜流星のボクサー物語「春に散る」
2022年11月29日ボクシングを通じて〈生きる〉ことを問う沢木耕太郎の小説を、佐藤浩市と横浜流星のW主演で、瀬々敬久のメガホンにより映画化した「春に散る」が2023年公開。新たに山口智子、橋本環奈、哀川翔、片岡鶴太郎、坂東龍汰の出演が発表された。 不公平な判定で敗れてアメリカへ渡り、40年ぶりに帰国した元ボクサーの広岡仁一(佐藤浩市)。同じく不公平な判定で負けて心が折れていたボクサーの黒木翔吾(横浜流星)。ふたりは偶然、飲み屋で出会う。やがて翔吾は自分から人生初ダウンを奪った仁一に、ボクシングを教えてほしいと懇願。彼らは共に、世界チャンピオンを目指す──。 仁一が所属していた真拳ジムの現会長で、彼に恋心を抱いていた真田令子を演じるのは山口智子。実写映画への出演は「スワロウテイル」(1996)以来27年ぶりで、佐藤との共演はドラマ『LEADERS リーダーズ』(2014)以来となる。 翔吾の恋人にして仁一の姪である広岡佳菜子役には橋本環奈。持ち前の明るさを抑え、陰のある役柄に挑む。 さらに新旧ボクサー役3名も明らかに。仁一の昔のボクシング仲間であり出所したばかりの藤原次郎を哀川翔、同じくかつての仲間であり仁一と翔吾の挑戦を支える佐瀬健三を片岡鶴太郎、翔吾の対戦相手となる東洋太平洋チャンピオン・大塚俊を坂東龍汰が演じる。 新キャストのコメントは以下。 山口智子(真田令子役) ボクシングについて全く無知であった私は、まず沢木耕太郎さんの小説を開きました。一気に引き込まれて、あっという間に読み切りました。「ボクシングは荒々しい男の世界」というそれまでの思い込みは、清々しい力に満ちた一陣の風にすっかり吹き飛ばされ、「どう生き切るか」という、命ある者全てへの問いかけに、自分も挑み直してみたいという思いが湧き上がってきました。「今」というこの瞬間に、熱く、濃く、己の心に偽りなく、力を注げるか。 私たちの一生は、自分と向き合う孤独な戦いであると同時に、人と人が出会って結ぶ豊かな実りに満ちている。 命を輝かせるリングと人生を重ねながら、今まで知らなかった世界に学んでいきたいと思っています。 日々猛練習を積み、心身ともにボクサーへと生まれ変わりつつある佐藤浩市さんと横浜流星さんの気迫に圧倒されています。まるでドキュメンタリーのような、リアルで純な輝きを放つ彼らの記録映画とも言える本作に関われる喜びと共に、本気で我が命を生きる覚悟で臨みます。 橋本環奈(広岡佳菜子役) 『春に散る』は登場人物の葛藤が織りなす苦悩や挫折を、ボクシングという熾烈な戦いのスポーツに夢や情熱をかける事によってそれぞれが新たなる道へと歩む。それは花を散らし新たなる再生へと誘う、春の風のように爽やかで潔い人生の縮図のようです。 私が演じる佳菜子は佐藤浩市さん演じる仁一の縁遠かった姪で、横浜流星さん演じる翔吾の恋人となる存在です。叔父の仁一と再会するまでは父の介護で貧しく漫然と過ごしていましたが、ボクシングという共通の夢や過去を持った人々と出会い大きく人生が変化してゆきます。 そんな佳菜子を敬愛してやまない先輩俳優の皆さんと共に演じられる事を心から幸せに思います。私が今まで演じてきた役とはタイプの異なる役なので、自身で殻を破るつもりで新境地に挑みたいと思います。 哀川翔(藤原次郎役) ボクシングしか無い男達の葛藤、不器用な男達が必死に生きる物語、春に散る! 久しぶりの佐藤浩市さんとの共演、楽しみにしてます。スチール撮影での穏やかな表情が印象的でした! 片岡鶴太郎(佐瀬健三役) 原作が沢木耕太郎さんで「一瞬の夏」など沢木さん自身もボクシングが好きな作家さんでボクシングを通して描く視点や人物像の背景などが原作の中にきっちりと織り込まれているので脚本を読む前から期待をしておりました。ボクシングものだと、ストーリー的に平坦な作品になりがちですが今回の作品はこれからチャンピオンを目指す選手と一時代を終えた中年の男、仁一。その仁一を中心としたサセケン(佐瀬健三)や次郎という三人の仲間が入り組んでストーリーを面白くしていると思います。 私が演じるのはボクシングに青春をかけた男でリタイアしたあと、ボクシング以上に魂を燃やすことができずどこか、人生に投げやりになっていたところ翔吾に出会い、仁一に再会しボクシングという自分の青春にまたもう一度魂を燃え滾るという男の役です。私自身もプロライセンスを取りボクシングにのめり込みました。サセケン(佐瀬健三)の気持ちも分かりますし自分自身の年齢とも重なるところがあり、この良きタイミングでこの役に出会えてよかったです。しばらくボクシングトレーニングをしていませんでしたが、この機会にジムに通いトレーニングをしボクサーとしての身体をつくり撮影に臨みたいと思います。 坂東龍汰(大塚俊役) 脚本を読ませて頂き、心が震えました。怒り、苦しみ、悲しみ、後悔。 人は皆何かしらの負の感情を抱えながら生きていてそれらを孤独としたら、その孤独は何かと出会い大きな力に変わる瞬間がある。ボクシングという美しいスポーツの中に見える、男同士の火花を儚く散る花びらのように繊細かつ大胆に表現できたらと思います。一つ役者人生の中で大切な1ページになり、世に残り続ける作品が出来ると確信しています。大尊敬する方々とお芝居ができること、その中に立たせて頂けることに感謝を忘れず頑張ります。 ©2023映画『春に散る』製作委員会 配給:ギャガ ▶︎ 佐藤浩市&横浜流星 × 瀬々敬久監督。沢木耕太郎原作のボクシング物語「春に散る」 -
ティモシー・シャラメ主演。“人喰い” を描く衝撃作「ボーンズ アンド オール」
2022年11月29日「君の名前で僕を呼んで」の主演ティモシー・シャラメとルカ・グァダニーノ監督が再タッグ。人喰い男女の純愛と逃避行を描き、第79回ヴェネチア国際映画祭で監督賞と新人俳優賞(テイラー・ラッセル)に輝いた「ボーンズ アンド オール」が、2月17日(金)より全国公開される。 人を喰べる衝動を抑えられないリーを演じるティモシー・シャラメは、本作でプロデューサーデビューも飾った。リーと運命的に出会うマレン役は、「WAVES/ウェイブス」のテイラー・ラッセル。さらに「ブリッジ・オブ・スパイ」のオスカー俳優マーク・ライランスが物語の鍵を握る人物を怪演する。 ヴェネチア国際映画祭では「誰も見たことがない純愛ホラーの誕生」(The Hollywood Reporter)や「贅沢でとんでもない映画」(THE GUARDIAN)など、称賛と驚きの入り混じったレビューが続出。アカデミー賞の前哨戦といえるインディペンデント・スピリット賞では、作品賞、主演俳優賞(テイラー・ラッセル)、助演俳優賞(マーク・ライランス)の3部門にノミネートされ、今後の賞レースでの受賞に期待が高まっている。 全米では11月23日に拡大公開され、「人喰いの若者たちを見事に演出した傑作!」「ティモシーとテイラーは今年のベストコンビ!」「胃腸の弱い人はノックアウトされるが、受け入れた先に特別な映画の魅力に気づく」「不安な気持ちにさせると同時に、心が震えるような作品だ」といった声があがっている。まさしく物議を醸す問題作だ。 Story 生まれつき食人の衝動を持つ18歳のマレンは、同じ秘密を抱えたリーと出会う。ともに食人に葛藤するふたりは次第に惹かれ合うが、同族は喰わないと語る謎の男の存在が、彼らを危険な逃避行へ向かわせる──。 「ボーンズ アンド オール」 監督:ルカ・グァダニーノ 出演:ティモシー・シャラメ、テイラー・ラッセル、マーク・ライランス 映倫区分:R18+ © 2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved. 公式サイト:Bonesandall.jp -
荻上直子監督 × 筒井真理子主演。社会の縮図たる絶望的人間模様を “笑う”「波紋」
2022年11月29日「かもめ食堂」「川っぺりムコリッタ」の荻上直子監督が筒井真理子を主演に迎え、新興宗教に傾倒する女性を主人公に、絶望が波及していくさまを描く「波紋」が、2023年初夏公開。特報映像と監督&キャストのコメントが到着した。 今朝も1ミリ違わず砂に波紋を描く須藤依子。庭に作った枯山水の手入れは、毎朝の習慣だ。水を信仰する新興宗教“緑命会”に傾倒し、日々の祈りと勉強会に勤しみながら、彼女はひとり穏やかに暮らしていた。失踪した夫の修が突然帰ってくるまでは──。 震災、老々介護、新興宗教、障害者差別といった問題を織り込み、闇深い現代社会の縮図というべき須藤家を舞台に、絶望をエンタテインメントへ昇華させていく「波紋」。「私の中にある意地悪で邪悪な部分を全部投入したような映画になりました」と監督はコメントしている。 主人公の須藤依子を演じるのは筒井真理子、失踪した夫の修には光石研、彼らの息子には磯村勇斗。そして、新興宗教の代表にキムラ緑子、信者に江口のりこと平岩紙、依子のパート先スーパーの迷惑な客に柄本明、スーパーの清掃員に木野花、依子の隣人に安藤玉恵を配している。 特報映像は、依子が夫の修に恨みをぶつけるシーンから開始。修の「俺、さっさと死ぬわ」という一言を受けて依子は甲高く笑い、最後に “絶望を、笑え” と打ち出される。 コメントは以下。 筒井真理子 最近は〝壊れてゆく女性〟の役が続いていたので、荻上監督の作風から想像するとご一緒させて頂ける機会はないかと思っていました。ですのでとても嬉しかったです。脚本を読んだ時、監督が醸し出す穏やかな空気の中に潜む日常の些細な棘、ビターな社会風刺が溶け合っていて目を見張りました。演出も人間の細部を見抜く力が的確で、身をゆだねることができ安心でした。 いまは先の見えない不穏なものに覆われているような時代ですが、是非この映画を観て絶望に絡めとられず前を進む気持ちになっていただけたらと思います。 光石研 久しぶりに荻上組へ参加させて頂き、凄く嬉しかったです。 監督は以前と変わらず、穏やかに粘り強く、俳優に寄り添い演出をしてくださり、安心して身を委ねる事が出来ました。 脚本に関してはただ一言、「女性は怖し」。 60年間、女性は聖母マリアだと信じて生きてきましたが、音を立てて崩れて落ちました。 磯村勇斗 はじめに脚本を読んだ時、ひしひしと波紋のように迫り来る心理的恐怖を感じました。 特に、筒井真理子さん演じる母、須藤依子を中心に、家族や取り巻く人物達のやり取りは、怖いのだが、思わず笑ってしまうところが多く、荻上監督の描く世界は面白いなと、一気に引き込まれました。 そして今作では、手話が必要な役でした。新たな言語に触れる機会を頂き、現場でも一つ一つ丁寧に確認しながら作り上げていきました。 早くこの作品が皆様のところに届くのが楽しみです。 荻上直子監督 その日は、雨が降っていた。駅に向かう途中にある、とある新興宗教施設の前を通りかかったとき、ふと目にした光景。施設の前の傘立てには、数千本の傘が詰まっていた。傘の数と同じだけの人々が、この新興宗教を拠り所にしている。何かを信じていないと生きていくのが不安な人々がこんなにもいるという現実に、私は立ちすくんだ。施設から出てきた小綺麗な格好の女性たちが気になった。この時の光景が、物語を創作するきっかけになる。 日本におけるジェンダーギャップ指数(146ヵ国中116位)が示しているように、我が国では男性中心の社会がいまだに続いている。多くの家庭では依然として夫は外に働きに出て、妻は家庭を守るという家父長制の伝統を引き継いでいる。主人公は義父の介護をしているが、彼女にとっては心から出たものではなく、世間体を気にしての義務であったと思う。日本では今なお女は良き妻、良き母でいればいい、という同調圧力は根強く顕在し、女たちを縛っている。果たして、女たちはこのまま黙っていればいいのだろうか? 突然訪れた夫の失踪。主人公は自分で問題を解決するのではなく、現実逃避の道を選ぶ。新興宗教へ救いを求め、のめり込む彼女の姿は、日本女性の生きづらさを象徴する。くしくも、本映画の製作中に起きた安倍元首相暗殺事件によりクローズアップされた「統一教会」の問題だが、教会にはまり大金を貢いでしまった犯人の母と主人公の姿は悲しく重なる。 荒れ果てた心を鎮めるために、枯山水の庭園を整える毎日を送っていた彼女だが、ついにはそんな自分を嘲笑し、大切な庭を崩していく。自分が思い描く人生からかけ離れていく中、さまざまな体験を通して周りの人々と関わり、そして夫の死によって、抑圧してきた自分自身から解放される。 リセットされた彼女の人生は、自由へと目覚めていく。 私は、この国で女であるということが、息苦しくてたまらない。それでも、そんな現状をなんとかしようともがき、映画を作る。たくさんのブラックユーモアを込めて。 「波紋」 出演:筒井真理子、光石研、磯村勇斗、安藤玉恵、江口のりこ、平岩紙、津田絵理奈、花王おさむ、柄本明、木野花、キムラ緑子 監督・脚本:荻上直子 エグゼクティブプロデューサー:富田朋子、堤天心、小山洋平、高津英泰、久田晴喜、寺井禎浩 プロデューサー:杉田浩光、渡辺誠 企画・プロデューサー:米満一正 撮影:山本英夫 照明:小野晃 録音:清水雄一郎 美術:安宅紀史 衣装:宮本まさ江 衣裳(現場):村田野恵 ヘアメイク:須田理恵 音楽:井出博子 編集:普嶋信一 記録:天池芳美 VFX:大萩真司、佐伯真哉 音響効果:中村佳央 助監督:関谷崇 演技事務:竹村悠 制作担当:柴野淳 ラインプロデューサー:金森保 宣伝:FINOR 映画「波紋」フィルムパートナーズ(テレビマンユニオン、U-NEXT、博報堂DYミュージック&ピクチャーズ、讀賣テレビ放送、イオンエンターテイメント、ジャストプロ) 製作幹事・制作プロダクション:テレビマンユニオン 制作協力:キリシマ1945 配給:ショウゲート ©2022 映画「波紋」フィルムパートナーズ hamon-movie.com -
ジャニーズ俳優の初主演映画と、そこに刻まれた彼らの魅力
2022年11月28日世代や好みを超えて多くの女性に支持され、愛されてきたジャニーズ事務所のタレントたち。歌やダンスはもちろん、あらゆるエンタテインメントの舞台で活躍する彼らの姿は、私たちの目を惹きつけてやまない。演技者として高く評価されるメンバーも多く、ジャニーズ俳優の層の厚みには定評があるところだ。そこで今回は、ジャニーズ俳優たちの初主演映画と、そこに刻まれた彼らの魅力、というテーマで8人の演者を紹介してみたい。 今、最も勢いのあるグループのひとつ、〈なにわ男子〉の道枝駿佑が十代最後に出演した「今夜、世界からこの恋が消えても」(22)は、切なくみずみずしいラブストーリーだ。道枝演じる主人公の透は、「前向性健忘」を患う恋人の真織を支える少年だ。はにかんだ笑顔と透明感ある佇まいには、ちょっぴりシャイだという彼自身のパーソナリティも反映されているかのよう。もの静かで、それでいてしなやかな強さを併せ持つ少年像を、自然体かつ細やかに体現した。 〈Snow Man〉の岩本照が真面目で不器用な消防士に扮した「モエカレはオレンジ色」(22)は、ラブコメディ兼、彼の筋肉美を愛でる映画である(と断言したい)。優秀な消防士としての凛々しい顔と、JKであるヒロインにときめきを覚えてしまって困惑、からのキュンキュンへと変化していく素の顔のギャップが、なんとも胸をくすぐる。抜群の身体能力を発揮した消防士ならではのアクションシーンはさすがの迫力だ。美しく雄々しい──そんな彼の魅力を存分に堪能できる。 アイドルのオーラを時に消したり、出したり 〈Sexy Zone〉の佐藤勝利が主演、〈King & Prince〉の髙橋海人が助演した「ブラック校則」(19)は、理不尽な校則に立ち向かう男子高校生コンビを描いた痛快な青春映画だ。クラスでも目立たない存在である主人公・創楽(佐藤)と、その親友で、やはりローポジションの中弥(髙橋)。「不良」でも「落ちこぼれ」でも「優等生」でも「愛されキャラ」でもない。普通の学園ものならモブキャラとして埋没している地味系男子を、佐藤はアイドルのオーラを消し切って演じている。それだけに、理不尽な校則に立ち向かおうと動きだした瞬間から放たれるきらめきには、おお! と目が奪われる。 (※佐藤勝利は橋本環奈とのW主演「ハルチカ」(17)が初主演) 対する髙橋海人は演技の間のよさが光る。常にだるそうな空気をまとわせていながら、時に周囲を驚かせる行動をしたり、創楽の動揺を常に見守っている。実際には3歳年長の先輩である佐藤を相手に、ナチュラルなバディ感を醸しだしていて、助演というよりW主演に近いものがあった。 振り切った王子さまキャラが愛される〈Sexy Zone〉の中島健人は、「劇場版BAD BOYS J 〜最後に守るもの〜」(13)を経て、「銀の匙 Silver Spoon」(14)での酪農男子高校生・八軒役でファンを驚かせた。彼の魅力であるセクシーさを封印し、キラキラをそぎ落としたサエないメガネ男子役がリアルにサエなかったのだ(褒め言葉です)。それが、農業の面白さに気づき、周囲の人々と打ち解けあっていくにつれ、八軒は次第にキラキラ、生き生きとしてくる。 アイドルとしての輝きや色気を出すべき時は出し、消すべき時は消す。第一級のアイドルであるジャニーズ俳優たちにとって、それが一番難しいのかもしれない。 ハマる役柄との出会いでブレイクした演者たち 現在放送中のドラマ『親愛なる僕へ殺意をこめて』が好評の〈Hey! Say! JUMP〉の山田涼介は、「暗殺教室」(15)で初主演を飾った。謎の生物“殺せんせー”を暗殺する使命を負わされた中学生たちを描いた本作で、主人公・渚を演じている。整った顔立ちなのに気の弱さと劣等感から自分に自信が持てない渚を、原作とはひと味ちがうナイーブさのある人物として表現。物語が進むにつれ、少年から男へと成長していくその姿は、Jr.時代から殊に努力家で知られる彼自身をも彷彿とさせるものがあった。 たおやかな空気感と柔和な風貌が人気の〈Kis-My-Ft2〉の玉森裕太も、ドラマを中心に着々と実績を積み上げている。初主演映画「レインツリーの国」(15)は、そんな彼のイメージを効果的に活かした良作だ。メールをやり取りするうちに、出会ったことのない相手の女性に惹かれる青年の心情を、繊細に情感豊かに演じている。また、低く穏やかな声で繰り出されるはんなりとした関西弁が、主人公のやや直情的な性格をうまく和らげているのも心にくい。 二宮和也、風間俊介など演技派ぞろいの三十代ジャニーズ俳優の中でも、とりわけ生田斗真は際立った存在感を放っている。彼がかつてジャニーズJr.だったことを知らない人も、もはや多いのではないだろうか。それくらい、ひとりの俳優として確固たる地位を築いている。Jr.時代の中盤から演技の道へ舵を切り、舞台で己を磨き、太宰治原作の映画「人間失格」(09)で演技者として大きく花開いた。このあまりにも有名な堕落文学の主人公、作者・太宰の分身的なキャラクターを、弱さと純粋さ、気高さと卑屈さを綯い交ぜて熱演。堕ちていけばいくほど聖性が増していく姿は痛ましいほど美しく、端的に言ってドハマリしていた。これで彼はジャニーズ初のキネマ旬報ベスト・テン新人男優賞と、ブルーリボン賞新人賞をW受賞。以降、本格的に役者の道へ邁進していくのは周知のとおりだ。 アイドルとしても俳優としても光り輝くジャニーズのタレントたち。観る者の目を奪い、心を掴んで離さない彼らの演技の出発点を今だからこそ観ていただき、改めてその才能にハマってみてはいかがだろうか。 文=皆川ちか 制作=キネマ旬報社