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「ふから始まるもの」の検索結果
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世界が注目する映画の祭典、第96回の米国アカデミー賞ノミネートが発表された。作品別に見ると、原爆の父を描いた伝記映画「オッペンハイマー」が最多の13部門でノミネートされ、以下「哀れなるものたち」11部門、「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」10部門となっている。3月の授賞式が楽しみだが、今月はこれにちなんで過去のアカデミー賞受賞作品が放送される。 今回ノミネートされた「哀れなるものたち」は、若い女性の体に胎児の脳を移植されたベラが世界中へ冒険の旅に出て、女性として自由な生き方を見つけていくというもの。主演のエマ・ストーンが男性たちの偏見に囚われず、自らのものの見方で心を解放していくヒロインを、生き生きと演じた快作だ。そんな女性の解放を描いた先駆的作品が、アカデミー賞脚本賞に輝いた「テルマ&ルイーズ」(91)。週末にドライブ旅行へ出かけた平凡な主婦のテルマとウェイトレスのルイーズ。テルマを襲おうとした男性をルイーズが射殺したことから、指名手配犯として逃亡者になってしまう。それによって二人が自分らしい生き方に目覚めていく様を映し出した、リドリー・スコット監督の才気溢れるロードムービーである。 「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」は1920年代にアメリカで実際に起きた先住民連続殺人事件を、マーティン・スコセッシ監督が描いた大作。事件の裏には白人による先住民への人種差別があるのだが、アカデミー賞で作品賞、助演男優賞、脚本賞に輝いた「グリーンブック」(18)も人種差別が背景にある実話の映画化。黒人差別の風潮が色濃い1960年代、失職したナイトクラブの用心棒トニーは、黒人のピアニストであるドクター・ドナルド・シャーリーに、コンサートツアーの運転手として雇われる。彼らが8週間旅するのは、特に黒人差別が激しいアメリカ南部。粗野で無教養、人種差別思想の持ち主であるトニーは、音楽家として人としてプライドを失わないドナルドと旅を続けるうちに、二人は人種を超えた絆で結ばれていく。トニー役のヴィゴ・モーテンセンと、助演賞を受賞したマハーシャラ・アリによる芝居の掛け合いも見事な感動作だ。 またヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の日本映画「PERFECT DAYS」が国際長篇映画賞にノミネートされたのにも注目。これは、東京・渋谷区の公衆トイレで清掃員をしている男の静かな日常を映した人間ドラマだ。この国際長篇映画賞(当時は外国語映画賞)を初めて日本映画として受賞したのが、滝田洋二郎監督の「おくりびと」(08)。楽団の解散によって職を失い、故郷の山形県酒田市に帰ってきたプロのチェロ奏者が、納棺師へと転職。最初は仕事に戸惑っていた主人公が、やがて人間の死と向き合う納棺師として成長していく姿を、この映画に企画から参加した主演の本木雅弘が、入魂の演技で表現した。キネマ旬報ベスト・テン日本映画第1位をはじめ、監督賞、主演男優賞、脚本賞にも輝いた逸品を多くの方に観てもらいたい。 他にも過去の受賞作品を観ておくと、今年のアカデミー賞授賞式に向けて、期待がさらに膨らむこと請け合いだ。 文=金澤誠 制作=キネマ旬報社 (「キネマ旬報」2024年3月号より転載) BS松竹東急 BS260ch/全国無料放送のBSチャンネル ※よる8銀座シネマは『一番身近な映画館』、土曜ゴールデンシアターは『魂をゆさぶる映画』をコンセプトにノーカット、完全無料で年間300本以上の映画を放送。 ■3/8[金] 夜8時 「グリーンブック」 監督:ピーター・ファレリー 出演:ヴィゴ・モーテンセン、マハーシャラ・アリ、リンダ・カーデリーニほか © 2019 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. ALL RIGHTS RESERVED. ■3/12[火] 夜8時 「テルマ&ルイーズ」 監督:リドリー・スコット 出演:スーザン・サランドン、ジーナ・デイヴィス、ハーヴィ・カイテルほか © 1991 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. ■3/15[金] 夜8時 「おくりびと」 監督:滝田洋二郎 出演:本木雅弘、広末涼子、山﨑努、余貴美子ほか © 2008 映画「おくりびと」製作委員会 詳細はこちら:https://www.shochiku-tokyu.co.jp/special/eiga/
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2022年に初演、昨年再演も果たした舞台『千と千尋の神隠し』が、3月11日の東京・帝国劇場を皮切りに全国ツアーを展開。そして今年は、同時期に演劇の聖地、ロンドン・ウエストエンドでの公演も決まり、公演を間近に控え稽古真っ最中の主要キャストが一堂に会し記者会見が行われた。 ■前列左から松岡宏泰(東宝㈱代表取締役社長)、今井麻緒子(共同翻案)、ジョン・ケアード(翻案・演出)、夏木マリ、川栄李奈、橋本環奈、上白石萌音、福地桃子、羽野晶紀、春風ひとみ、イアン・ギリー(PWプロダクションズ 最高経営責任者) ■後列左から山野光、中川賢、小㞍健太、増子敦貴(GENIC)、三浦宏規、醍醐虎汰朗、妃海風、華優希、実咲凜音、田口トモロヲ、宮崎吐夢 会見冒頭、舞台を製作する東宝の松岡宏泰社長が「商業性だけでなく、芸術性でも高いことを証明した作品」と紹介したように、宮﨑駿監督による映画「千と千尋の神隠し」は2001年7月に公開。当時、「E.T.」(1982)が保持していた日本の歴代興行収入を塗り替えた宮﨑監督の前作「もののけ姫」(1997)の193億円を、自作によって大幅に更新し308億円を記録。歴代興収は「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」(2020)のメガヒットにより2位となったものの、2002年のベルリン国際映画祭でアニメーション映画として初の金熊賞を受賞、2003年にはアカデミー賞長篇アニメーション賞をするなど、宮﨑駿監督が世界的な巨匠になった、記念碑的作品でもある。 [caption id="attachment_35839" align="aligncenter" width="1024"] ■千尋:橋本環奈[/caption] 松岡社長曰く「これを舞台化するのは壮大かつ無謀なチャレンジ」だったそうだが、「レ・ミゼラブル」などを手掛け、トニー賞を2度受賞しているジョン・ケアードが演出を務めた舞台版初演は、開幕と同時に全国公演のチケットが完売。収録映像や千秋楽公演の配信も行われるほどの大ヒットとなった。2023年には再演も果たされ、今年は国内での再々演に加え、2358名の収容数を誇るロンドン最大級の劇場、ロンドン・コロシアムで4カ月間にわたり上演、観客動員は30万人を見込まれている。 [caption id="attachment_35840" align="aligncenter" width="1024"] ■千尋:上白石萌音[/caption] ジョン・ケアードは「ロンドンでも、演劇のファン層はそれほど若くはないが、宮﨑アニメのファンは20代からと若い人が多いので、新たな演劇ファンを開拓したい」とのこと。実際、今回のロンドンでの宣伝は、SNSを多用していて「18~35歳の人が最もチケットを購入している」と、ロンドンの舞台制作会社PWプロダクションズのイアン・ギリー最高責任者。また松岡社長は「ここまでチケットが売れるとは思わず、延長することになった。スタジオジブリのブランド力、作品の力がここまで海外で通用するんだ、と改めて驚いているところへ、すでに他の国からも声がかかっている」と言う。日本人キャストによる日本語での海外公演としては、日本の演劇史上最大の規模にして、90年もの歴史を持つ東宝にとっても初の試みだという。 [caption id="attachment_35842" align="aligncenter" width="1024"] ■千尋:橋本環奈[/caption] 主人公・千尋役(Wキャスト)を2022年から務めてきた橋本環奈と上白石萌音は4月30日から始まるロンドン公演の開幕も担う。 「ロンドンでの開幕はいまはまだ想像がつかない」と口をそろえる二人だが、「やることはわかっているけど、実感はないまま。ヨーロッパの方々は、日本語はわからなくてもジブリ作品のことはわかるから、観ていて楽しいと思うので心配はしていない」と橋本、上白石は「本当に自分たちがやるんだろうか!? 千尋を演じる回数がとんでもないことになっている(笑)。ロンドンだからと気負わず、健康第一で、体全体で届けたい」と意気込みを語った。 [caption id="attachment_35843" align="aligncenter" width="1024"] ■千尋:上白石萌音[/caption] なお、帝国劇場でのチケットはすでに完売。“もろもろ余裕のある方”は、全国ツアーならびにロンドン公演も視野に入れては? 日本人が日本語で演じる舞台を海外で見るのは、現地の観客の思わぬ反応を体感できたり、必ずや新鮮な観劇体験になるはず! が、あくまで“もろもろ余裕のある方”は、ということで。 文・制作=キネマ旬報社 [caption id="attachment_35844" align="aligncenter" width="1024"] ■ロンドン・コロシアム 撮影:Guy de Laubier[/caption] ■ロンドン公演版ポスター ■舞台 『千と千尋の神隠し』 公演情報 3月11日(月)~30日(土) 【東京】 帝国劇場 4月30日~8月24日 【ロンドン】ロンドン・コロシアム 4月7日(日)~4月20日 (土) 【愛知】御園座 4月27日(土)~5月19日(日) 【福岡】博多座 5月27日(月)~6月6日 (木) 【大阪】 梅田芸術劇場メインホール 6月15日(土)~6月20日 (木) 【北海道】札幌文化芸術劇場 hitaru 千尋:橋本環奈、上白石萌音、川栄李奈、福地桃子 ハク:醍醐虎汰朗、三浦宏規、増子敦貴 (GENIC) カオナシ:森山開次、小尻健太、山野 光、中川 賢 リン・千尋の母:妃海風、華 優希、実咲凜音 釜爺:田口トモロヲ、橋本さとし、宮崎吐夢 湯婆婆・銭婆:夏木マリ、朴 璐美、羽野晶紀、春風ひとみ 兄役・千尋の父:大澄賢也、堀部圭亮 父役:吉村 直、伊藤俊彦 青蛙:おばたのお兄さん、元木聖也 頭:五十嵐結也、奥山ばらば 坊:武者真由、坂口杏奈 原作:宮﨑駿 翻案:ジョン・ケアード 共同翻案:今井麻緒子 オリジナルスコア: 久石 譲 音楽スーパーヴァイザー・オーケストレーション・編曲:ブラッド・ハーク 音楽スーパーヴァイザー補・オーケストレーション・Ableton プログラミング:コナー・キーラン 美術:ジョン・ボウサー パペットデザイン・ディレクション:トビー・オリエ
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「プレデター:ザ・プレイ」狩るか、狩られるか――
2024年3月1日「プレデター」シリーズやエイリアンとの格闘で知られる宇宙最凶の狩猟戦士プレデター。本作は彼らが18世紀のアメリカ大陸に出現し、ネイティブ・アメリカン最強の部族と死闘を繰り広げる。そんな大胆な設定が魅力のSFアクション『プレデター:ザ・プレイ』は、これまで配信でしか見られなかったが、現在は「ブルーレイ+DVDセット」と「4K UHD」が発売となり多くの人が楽しめるようになっている。 設定が斬新! もしネイティブ・アメリカンがプレデターに遭遇したら… 18世紀のアメリカ大陸。まだ植民地にはなっていない、ネイティブ・アメリカンが生活する緑の深い森や草原。そんな壮大な自然の中に、もしも宇宙のあらゆる場所で獲物を狩るのが生き甲斐の狩猟民族、プレデターが出現したら、どんなことが起きるのか。そんな大胆な発想で描かれた本作は、SFファンに喝采で迎えられ、SF界のアカデミー賞ともいえるサターン賞の2023年度の映画部門で、SF映画賞、主演女優賞、メイクアップ賞にノミネートされた話題作だ。 本作は、ネイティブ・アメリカンを主人公にした物語を描いた点でも画期的。現在は、マーティン・スコセッシ監督が白人による迫害を描く映画「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」や、スーパーヒーローを描くマーベルのドラマシリーズ『エコー』など、彼らを描く作品が注目を集めているが、その先駆けとなったのが、2022年7月21日に配信となった本作だった。 壮大な大自然 x 肉弾戦バトル。誇り高き戦士同士の戦いが白熱 300年前のアメリカ大草原。最強の部族の若い女性ナルは、薬草に詳しく、追跡も得意で、周囲の人々に自分の狩猟の腕前も認めて欲しいと思っている。そんなある日、ナルは兄アルカたちがライオンを追う猟に加わり、クマよりも大きな足跡を見つける。そして、彼らは、これまで見たことのない敵に遭遇することになる。 画面いっぱいに広がる雄大な自然、その中で展開するネイティブ・アメリカンとプレデターの死闘が、本作の見どころ。プレデターには、宇宙船でさまざまな惑星を巡るほどの高度な科学技術があり、武器にも先端技術を搭載。身体を消すことができる光学迷彩装置、獲物に照射するレーザーポインター、周囲を切り裂く円盤状の武器レーザー・ディスクなどを持っている。一方、ネイティブ・アメリカンの武器は、ナイフ、弓矢、投げ斧。これだけ見ると、プレデターが圧倒的に有利だが、彼らには慣れ親しんできた自然という大きな武器がある。そしてどちらもが誇り高き戦士。そんな彼らの間で、いったいどんな戦いが繰り広げられるのか。 ファンには嬉しい「プレデター」シリーズとのリンクあり 本作を楽しむためにこれまでの「プレデター」シリーズを見ておく必要はなく、独立した作品として創られている。その証拠に、映画の原題は「Prey(プレイ)」だけで「プレデター」という文字が入っていない。その前提を踏まえたうえで、知らなくてもまったく問題ないがファンには嬉しいオマージュもある。 まず、今回のプレデターが被っているマスクは、映画『プレデターズ』(2010)で、主人公が見つけたコンテナのようなもの中で死んでいるのが見つかった、リバーゴースト・エイリアンの頭蓋骨で作られたもの。 また劇中で、プレデターがウサギを追うオオカミを見つけ、オオカミと戦って勝利した後、その頭部を切り落として頭蓋骨にするのも、ファンにはニヤリな行動だ。というのも、「プレデター2」(1990)のプレデターの宇宙船の中に、仕留めた獲物の頭蓋骨がズラリと展示されたコーナーがあったから。そうか、こうやって頭蓋骨にして宇宙船に持ち帰るのかと思うと興味深い。 そして、あるシーンで登場する「ラファエル・アドリーニ 1715」と記された銃も、おなじみのアイテム。「プレデター2」にもこの銃が登場し、これをモチーフにしたコミック「プレデター1718」も描かれている。 監督は「10クローバーフィールドレーン」のダン・トラクテンバーグ 監督・原案は、映画「10クローバーフィールド・レーン」(2016)のダン・トラクテンバーグ。本作でもオリジナルな発想のストーリーで唸らせてくれる。本作の後は、大ヒットSFドラマシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のシーズン5(来年配信予定)の第1話を監督。本作は、今後の新企画が気になる監督の話題作としても見ておきたいところ。 主人公ナル役のアンバー・ミッドサンダーはリーアム・ニーソン主演のアクション「アイス・ロード」(2021)などでも活躍し、本作の後は、ニコラス・ケイジ演じる主人公が、みんなの夢に現れるという異色の映画「ドリーム・シナリオ(原題)」に出演。また、人気アニメの実写ドラマ化シリーズ『アバター:伝説の少年アン』(2024~)にも出演している注目株だ。 また、特典映像も充実。映画のメイキングや、ダン・トラクテンバーグ監督自身の解説付きの未公開シーン、スタッフ&キャストの座談会などが収録されている。配信では見られない、Blu-rayならではのコンテンツの数々も必見だ。 文=平沢薫 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=4rqtrqsPwRo&t=85s 「プレデター:ザ・プレイ」 ●ブルーレイ+DVDセット発売中 Blu-ray& DVDの詳細情報はこちら ●プレデター:ザ・プレイ ブルーレイ+DVDセット コレクターズ・エディション 価格:5,390円(税込) 【ディスク】<2枚組>(ブルーレイ1枚、DVD1枚) ★映像特典★ ・メイキング・オブ『プレデター:ザ・プレイ』、スタッフ&キャストの座談会 ほか ●プレデター:ザ・プレイ 4K UHD コレクターズ・エディション 価格:7,590円(税込) 【ディスク】<2枚組>(4K UHD ブルーレイ1枚、ブルーレイ1枚) ★映像特典★ ・メイキング・オブ『プレデター:ザ・プレイ』、スタッフ&キャストの座談会 ほか ●2022年/アメリカ/本編100分 ●監督:ダン・トラクテンバーグ ●出演:アンバー・ミッドサンダー、ミシェル・スラッシュ、ダコタ・ビーヴァーズ ほか ●発売・販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン © 2023 20th Century Studios. -
人類とAIの戦いを圧倒的な映像美で描いたSF超大作「ザ・クリエイター/創造者」
2024年3月1日ハリウッドを代表する多様性に富んだ豪華キャストが集結! 「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」のギャレス・エドワーズが監督、製作、原案、脚本を務めた「ザ・クリエイター/創造者」のブルーレイ+DVDセットと4K UHDが2月7日(水)より発売中だ。主演は、デンゼル・ワシントンの息子として注目を集め、「TENET テネット」や「アムステルダム」など数々の作品で"七光り”ではない確かな実力を証明してきたジョン・デヴィッド・ワシントン。超進化型AIの少女アルフィーに、天才的な演技力で物語を牽引するマデリン・ユナ・ヴォイルズ。「エターナルズ」のジェンマ・チャンや、日本からは渡辺謙も参加し、国際色豊かなキャスト陣が揃った。 人類をサポートするために生み出されたAIが起こしたとされる核戦争。世界は、“AI狩り”を推し進めるアメリカと、AIとの共存を望む“ニューアジア”との争いが激化していた。米軍特殊部隊のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、ハルン(渡辺謙)率いるAI軍が守るニューアジアに潜入捜査をしながら、愛する妻マヤ(ジェンマ・チャン)との間にできた赤ちゃんの誕生を待ちわびていた。そんな中、ジョシュアは米軍の侵攻により目の前で妻子を失ってしまう。 5年後、人類最強の軍事基地ノマドを有する米軍は、ニューアジアのニルマータが開発したとされる最終兵器“アルファ・オー”を破壊するための極秘ミッションを開始。施設の内部を知っているジョシュアも作戦に参加させられるが、彼がそこで見つけたのは、あどけない少女の姿をしたAIアルフィーだった…。 人類とAIはどんな運命を辿るのか 人類とAI(人工知能)の共存の是非を問う映画は、「ターミネーター」シリーズや「マトリックス」シリーズを筆頭に、これまでもたくさん作られてきた。そこで語られるのは、AIは人類の脅威となり得るのか。昨今ではChatGPTといった生成AIの普及もあり、生活のあらゆる場所にAIは当たり前に存在し、人々の生活を助け豊かにしている。一方で、人間の常に先をいくAIの急速な発展にどこか恐怖を覚える人も多いのではないだろうか。 そんな起こり得るかもしれない未来をリアルに描いたのが「ザ・クリエイター/創造者」だ。潜入捜査官のジョシュアは、壮大な旅路を通して自分がこれまで正しいと思ってきたことに疑問を持ち始める。AIは本当に破壊すべきか? それとも享受すべきか? そのメッセージをより強くしている要因のひとつに、登場するAIたちの人間らしい姿にある。その外見はもちろんのこと、彼らは人間と同じように農作物を育て、互いを尊重し協力し合いながら暮らしている。ただひとつ決定的に違うのは、限りある命があるか、ないか。傲慢な人間に簡単に潰され、使い捨てにされるAIたち。本作は、これからのAI社会を生きていく我々が忘れてはならない、大切なメッセージを問いかけ続ける。 近未来的でありながら懐かしさを感じさせる唯一無二の世界観 ギャレス・エドワーズ監督は本作を、「『ブレードランナー』が舞台の黒澤映画のイメージ」だと表現している。近未来的な世界と、日本の原風景のようなどこか懐かしい世界の融合。その物語の発端は、監督が彼女とアメリカ中西部を車で旅をしている時に、果てしなく広がる農地を眺めていた時に遡る。農地のど真ん中に突如として現れた、日本語のロゴが描かれた奇妙な工場。「あそこの工場で一体何を作っているんだろう?」——そう考えた監督は、それがロボットだと直感的に思ったという。その工場で何か問題が起き、ロボットが生まれて初めて外に出て空や世界を目にしたとしたら…。 監督の独創的で自由な発想から生まれた本作は、唯一無二の世界観も大きな魅力となっている。通常の大作映画は世界をデザインした後、それに見合ったロケーションを探したり、なければ巨大セットを組んだりするのが普通である。しかし、監督は“逆方向”から進めることを選択。つまり、まずリアルなロケーションでリアルな人々を撮影し、そのショットの上から絵を描くようにSF世界を創っていったのだ。現実世界の延長線上にあるような地に足の着いた世界観は、日本やカンボジア、インドネシアなど世界8ヵ国に実際に足を運びロケを敢行した賜物だろう。 本作のBlu-rayには、監督のインタビューと、撮影から完成までを追った約1時間の舞台裏映像を収録。日本をこよなく愛する監督の美学を本編と共に楽しんでみてほしい。 文=原真利子 制作=キネマ旬報社 https://www.youtube.com/watch?v=ZlXL9OZcY54&t=2s 「ザ・クリエイター/創造者」 ●ブルーレイ+DVDセット発売中 Blu-ray& DVDの詳細情報はこちら ●ザ・クリエイター/創造者 ブルーレイ+DVDセット 価格:5,390円(税込) 【ディスク】<2枚組>(ブルーレイ1枚、DVD1枚) ★映像特典★ ・撮影から完成まで(メイキング) ●ザ・クリエイター/創造者 4K UHD 価格:7,590円(税込) 【ディスク】<2枚組>(4K UHD ブルーレイ1枚、ブルーレイ1枚) ★映像特典★ ・撮影から完成まで(メイキング) ●2023年/アメリカ/本編133分 ●監督:ギャレス・エドワーズ ●出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、マデリン・ユナ・ヴォイルズ、ジェンマ・チャン、渡辺謙 ほか ●発売・販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン © 2024 20th Century Studios. -
地球上の生命の《6度目の大量絶滅》が迫っているらしい。危機感を覚えた16歳のベラとヴィプランは、解決策を探ろうと世界各地を旅するが──。「TOMORROW パーマネントライフを探して」のシリル・ディオン監督によるドキュメンタリー「アニマル ぼくたちと動物のこと」が、6月上旬よりシアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開される(先んじて3月の横浜フランス映画祭2024で上映、監督が来日)。ポスタービジュアルが到着した。 過去40年で野生動物の6割以上が絶滅し、ヨーロッパでは飛翔昆虫の8割が姿を消した。この流れを科学者たちは《6度目の大量絶滅》と位置づける。 若き環境活動家のベラとヴィプランは、何年もストライキやデモに参加してきたが、うまくいかない。そうした中、映画監督で活動家のシリル・ディオンに後押しされ、気候変動と種の絶滅という2大危機の核心に迫ろうと旅に出た。 まず、古生物学者アンソニー・バルノスキーに種の絶滅の5つの原因を教わる。そしてインドの海岸ではプラスチック汚染について、フランスでは温室効果ガス排出量の約15%を占める畜産業の実態を、ベルギーでは魚の乱獲問題を、パリでは動物行動学者のジェーン・グドールより動物と人間の関係を学習。さらに、野生動物に出会うべくケニアの大草原を訪れ、環境大国コスタリカでは現職大統領に自然再生のノウハウを学ぶ。2人はより良い未来のための解決策を見出せるか? 映画は2021年カンヌ国際映画祭と2022年セザール賞でドキュメンタリー賞にノミネート。人類が果たすべき役割に目覚めさせる注目作だ。 「アニマル ぼくたちと動物のこと」 監督:シリル・ディオン 出演:ベラ・ラック、ヴィプラン・プハネスワラン、ジェーン・グドール 撮影:アレクサンドル・レグリーズ 編集:サンディ・ボンパー プロデューサー:ギヨーム・トゥーレ、セリーヌ・ルー 原語:英語、フランス語 原題:ANIMAL 配給:ユナイテッドピープル 105分/フランス/2021年/ドキュメンタリー 公式サイト:http://www.unitedpeople.jp/animal