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新世代の香港映画2作「私のプリンス・エドワード」「縁路はるばる」、ポスター到着
2023年3月24日〈新世代香港映画特集2023〉として、批評・興行の両面で成功した2作「私のプリンス・エドワード」「縁路はるばる」が、5月19日(金)より新宿武蔵野館ほかで全国順次公開。ポスターが到着した。 「私のプリンス・エドワード」(原題:金都 英題:My Prince Edward) 注目の新人監督ノリス・ウォンの長編デビュー作で、アラサー香港女性の「偽装結婚」が題材。〈中国映画批評家が選ぶ中華圏映画〉で年間1位に選出され、金像奬で新鋭監督賞と音楽賞の2冠に輝いた。 監督・脚本:黃綺琳(ノリス・ウォン) 出演:鄧麗欣(ステフィー・タン)、朱栢康(ジュー・パクホン)、鮑起靜(バウ・ヘイジェン)、 金楷杰(ジン・カイジエ)、林二汶(イーマン・ラム)、岑珈其(カーキ・サム) 2019年/香港/カラー/シネスコ/93分/5.1ch/映倫G ©2019 MY PRINCE EDWARD PRODUCTION LIMITED. All Rights Reserved. Story 香港のプリンス・エドワード地区にある金都商場(ゴールデンプラザ)は、結婚式に必要なドレスや小物の購入、結婚写真の撮影依頼などが格安で済ませられるショッピングモール。ウェディングショップで働くフォン(ステフィー・タン)は、ウェディングフォト専門店のオーナーであるエドワード(ジュー・パクホン)と同棲中だ。ある日、エドワードにプロポーズされたフォンだったが、実は10年前に中国大陸の男性と偽装結婚し、その婚姻が継続中だと発覚していた。離婚手続きと結婚準備を同時に進めるフォンは、自身の心に無理強いしていると気づき……。 「縁路はるばる」(原題:緣路山旮旯 英題:Far Far Away) IT企業に勤める青年が、女性たちに会うために香港中を彷徨うラブコメディ。新世代俳優が伸びやかに演じ、金馬奨で助演女優賞にノミネートされた。沙頭角(Sha Tau Kok)、下白泥(Ha Pak Nai)、大澳(Tai O)、荔枝窩(Lai Chi Wo)、長洲(Cheung Chau)、茶菓嶺(Cha Kwo Ling)といった香港僻地への観光気分も味わえる。 監督・脚本:黃浩然(アモス・ウィー) 出演:岑珈其(カーキ・サム)、張紋嘉(クリスタル・チョン)、蘇麗珊(シシリア・ソー)、梁雍婷(レイチェル・リョン)、陳漢娜(ハンナ・チャン)、余香凝(ジェニファー・ユー) 2021年/香港/カラー/シネスコ/96分/5.1ch/映倫G © 2021 DOT 2 DOT CREATION LIMITED. All Rights Reserved. Story 内向的なITオタクのハウは、5人の魅力的な女性と知り合うチャンスを得る。彼女たちのタイプはバラバラだが、いずれも僻地に住んでいた。さっそく会いに出かけたハウは、香港中を巡ることに……。 公式サイト:https://enro.myprince.lespros.co.jp 公式Twitter:@enro_myprince 配給:活弁シネマ倶楽部 -
松重豊演じる主人公・井之頭五郎が全国各地の街角にひっそりとたたずむ飲食店を訪れ、その店の名物・逸品をひたすら食べまくる人気ドラマ「孤独のグルメ」。2012年1月に最初のシリーズがスタートし、「深夜の飯テロドラマ」と呼ばれて根強い人気を誇ってきた同作の最新シリーズ「Season10」のBlu-ray BOXとDVD BOXが3月24日にリリースされた。※レンタル同日リリース。 実在する飲食店で実際のメニューを食べまくる「五郎VS料理」のセミドキュメント シリーズ開始当初は深夜にひっそりと咲いた、まさに知る人ぞ知る“隠れ家”的な存在だった「孤独のグルメ」が、昨年10~12月に放送された「Season10」で10周年を迎えた。ドラマのフォーマットはこの10年間、大きく変わることなく、当初から完成していたスタイルをずっと守り続けている。 輸入雑貨商を営む主人公の井之頭五郎は営業先でひと仕事を終えた後、訪れた街で空腹を満たすため、たまたま見つけた食事処にふらりと立ち寄る。状況的には切羽詰まっている時が多いが、その割には食にこだわり、店選びにもこだわる五郎。辿り着いた店ではメニュー選びに悩みまくり、ようやく出てきた料理の見た目や味を評価するボキャブラリーの豊富さは料理評論家にもヒケを取らない。こうした五郎の葛藤や興奮、感動はすべて彼の「心の声」としてモノローグで語られる。まあ、そりゃそうだ、いつも“独り”だしね。実際に全部声に出していたら、ぶつぶつ独り言をつぶやきながらウロウロしてメシ食ってる、かなりアブナイ中年親父だもの。 毎回、劇中で五郎が訪れる飲食店はその街で実際に営業している実在の店。店主役には基本、俳優がキャスティングされているが、登場するメニューはその店で提供されている料理で、劇中で松重が食べるのも店主が実際に作ったものだ。「五郎VS料理」はいつも、限りなくドキュメンタリーに近い空気をまとって描かれる。ドラマ本編の終了後には原作者の久住昌之が撮影で使われた店を訪れる「ふらっとQusumi」というコーナーがあるが、ここで本物の店主が画面に登場すると店主役の俳優とそっくりな佇まいの場合が多く、キャスティングの妙味と俳優の技量に驚いたり感心したりニヤリとしたり。 松重豊の豪快な「食べっぷり」と繊細な「心の声」に酔いしれる ドラマの最初の企画段階では「おっさんが独りでメシ食ってるだけのドラマなんか誰が見たい?」と一蹴されたとの噂もある本作。他局でボツになりかけた企画をそのまますくい上げてGOを出したテレビ東京の慧眼もさることながら、やはり、「食」という人生でも大きなウエイトを占めるテーマの普遍性を信じ、食べたいものを、食べたいように、自由にかつ大胆に食していく五郎の「至福の時間」を、余計な装飾を施すことなく松重豊の豪快な「食べっぷり」と繊細な「心の声」に託した、作り手たちの“一途さ”にこそ成功の要因がある。本作がシリーズを重ね、じわじわと人気を拡大していく一方で、「飲食」をテーマに据えたドラマが深夜帯を中心に次々と増殖し、2010年代中盤からまさに「グルメドラマブーム」と呼べる状況が生まれた。その先駆者であり、ブームを常に牽引し続けてきたトップランナーこそが「孤独のグルメ」にほかならない。 今回の「Season10」全12話で五郎が訪れた飲食店は12店舗、食べたメニューは55品にのぼる。「Season1」からの通算では、スペシャル版なども含めすでに150店近くの飲食店を訪れているという。食べたメニューがトータルで全何品か、ぜひ誰か調べてもらえないだろうか。 「大晦日スペシャル」2作と、メイキングや貴重な証言が満載の特典映像も収録 「Season10」のBlu-ray BOX とDVD BOXには、2021年の大晦日に放送され翌年の「東京ドラマアウォード2022」で単発ドラマ部門の優秀賞を受賞した「孤独のグルメ2021大晦日スペシャル 激走!絶景絶品・年忘れロードムービー」と、「Season10」最終回オンエアの翌週のこれも大晦日に放送された「孤独のグルメ2022大晦日スペシャル 年忘れ、食の格闘技。カニの使いはあらたいへん。」の2本のスペシャル版も収録されている。スペシャルでは五郎が訪れる店が複数で、ドラマ部分もいつもよりボリューム多めに描かれるが、特にこの2作はともに五郎が車で移動するロードムービーで、その間をつなぐディテールが「Season10」本編にも登場するだけに、「2021スペシャル→Season10→2022スペシャル」という一本の長大なストーリーとしての見方もできる。 特典映像には、「Season10」撮影の舞台裏を紹介する「MAKING OF 孤独のグルメ Season10 ~10 年目もいただきます!~」を収録。第1話から順に、それぞれのエピソードにおけるトピックスをいろいろな切り口から取り上げていく。「孤独のグルメ」ならではの独特な食事シーンの撮影法や現場で起きたハプニング、台本に書かれていない追加メニューを決める松重とスタッフの入念な打ち合わせ風景など、ファンにはたまらない裏話が満載。案外重要な情報や貴重なこぼれ話が、ちょっとしたナレーションや字幕でさらっと触れただけですぐ次に進んでしまい、見ていて理解が追いつかず「えっ!? えっ!?」となることもあったほどだ。 さらに、吉見健士プロデューサー、脚本の田口佳宏、原作者・久住昌之の3氏が「Season1」の第1話を見ながらシリーズを振り返る「すべてはここから始まった~Season1 第 1 話オーディオコメンタリー~」では、今より少し若い松重の姿に小さく感動し、次々と飛び出す貴重な証言に大きく感心。五郎の「それにしても、腹が……減った」の台詞の後、カメラがポンポンと引いて立ち尽くす彼の遠景になる定番のカット割りが「ウルトラマンの変身シーンのイメージだった」(吉見P談)というのは意外だった。「2022大晦日スペシャル」のメイキング「ザ・ドキュメント2022 大晦日 SP ~定点カメラで完全密着~」は、よくあるバラエティ番組ふうのスタイルではなく、あるワンシーンを撮るために実際の撮影現場がどのように進行していくのかを、定点カメラ+タイムラプスで定点観測的に見せていく。なかなか珍しい作りで、ひとつのシーンだけを取り上げる代わりに普段のメイキングですら映らない本当の舞台裏がじっくり見られ、映像制作の現場に興味がある人は必見!だ。 文=進藤良彦 制作=キネマ旬報社 『孤独のグルメ Season10』 ●3月24日(金)Blu-ray BOX&DVD BOXリリース(全12話+スペシャル2話) ※レンタル同日リリース ▶Blu-ray&DVDの詳細情報はこちら ●Blu-ray BOX:21,450円(税込)、DVD BOX:16,500円(税込) 【封入特典】 「孤独のグルメSeason10 」 BOOK 【映像特典】 ・MAKING OF 孤独のグルメ SEASON10 ~10 年目もいただきます!~ ・ザ・ドキュメント2022 大晦日 SP ~定点カメラで完全密着~ ・すべてはここから始まった~Season1 第 1 話オーディオコメンタリー~ ・孤独のグルメSeason10 ネ申台詞集 ・スポット集 ●2021・2022年/日本 ●主演:松重豊 ●出演:久住昌之(ふらっとQUSUMI) ●原作:『孤独のグルメ』作: 久住昌之・画 :谷口ジロー(週刊 SPA! ) ●脚本:田口佳宏、児玉頼子 ●音楽:久住昌之、ザ・スクリーントーンズ ●演出:井川尊史、北畑龍一、佐々木豪、中山大暉 ●チーフプロデューサー:祖父江里奈(テレビ東京) ●プロデューサー:小松幸敏(テレビ東京)吉見健士(共同テレビ)北尾賢人(共同テレビ) ●制作協力:共同テレビジョン ●製作著作:テレビ東京 ●発売元:テレビ東京 販売元:ポニーキャニオン ⓒ2021久住昌之・谷口ジロー・fusosha/テレビ東京 ⓒ2022久住昌之・谷口ジロー・fusosha/テレビ東京
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長澤まさみが4年半ぶりに連ドラ主演を務め、眞栄田郷敦と鈴木亮平が共演。落ち目のアナウンサーと若手ディレクターらが連続殺人事件の冤罪疑惑を追う中で、“自分の価値”を取り戻していく姿を描く月10ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』が、Blu-ray&DVDとなって5月26日(金)にリリースされる。 〈エルピス〉とは、古代ギリシャ神話で〈パンドラの箱(壺)〉に唯一残されていたものとされ、「希望」または災いの「予兆・予見」などと訳される。本作でパンドラの箱を開けてしまった面々は、【希望】を見出しながら、痛みという【災い】も蒙っていく。そんな混沌の物語を編み上げた脚本家は、『カーネーション』などで知られ、これが民放連ドラ初執筆となる渡辺あや。演出は長澤まさみも出演した「モテキ」の大根仁が手掛けた。 特典に収録されるインタビューは3種類。「長澤まさみスペシャルインタビュー」は、いうまでもなく長澤まさみファン必見だ。「長澤まさみ×鈴木亮平×眞栄田郷敦 3ショットインタビュー」は、3者がドラマへの思いや見どころを和気藹々と語り合う。「渡辺あや×佐野亜裕美 インタビュー」では、作品の誕生秘話やタイトル決定の経緯が明らかに。 メイキングも要チェック。キャストたちは和やかながらも微妙な距離感を調整し、本番では完璧に演じ切る。クランクアップも収められ、監督は「新しいテレビドラマができた!」と宣言している。 さらに、カンヌでの国際映像コンテンツ見本市〈MIPCOM〉にキャストの三浦透子と佐野亜裕美プロデューサーが登壇する模様を捉えた「エルピス in カンヌ」、劇中で放映された「八頭尾山連続殺人事件 特集映像」、コントユニットのダウ90000が出演したスピンオフドラマ「8人はテレビを見ない」も。まさにパンドラの箱さながら、多彩に飛び出す特典一式にも期待できそうだ。 Story 大洋テレビのアナウンサー・浅川恵那(長澤まさみ)。かつてはゴールデンタイムのニュース番組でサブキャスターを務める人気者だったが、週刊誌に路上キスを撮られて番組を降板し、今は深夜の情報番組でコーナーMCを担当している。ある日、芸能ニュースを担当する新米ディレクターの岸本拓朗(眞栄田郷敦)に呼び止められた恵那は、ある連続殺人事件の犯人とされる死刑囚が、実は冤罪かもしれないと相談され……。 『エルピス―希望、あるいは災い―』 脚本:渡辺あや 演出:大根仁、下田彦太、二宮孝平、北野隆 音楽:大友良英 主題歌:Mirage Collective「Mirage」(SPACE SHOWER MUSIC) プロデュース:佐野亜裕美、稲垣護、大塚健二 出演:長澤まさみ、眞栄田郷敦、三浦透子、三浦貴大、近藤公園、池津祥子、梶原善、片岡正二郎、山路和弘、岡部たかし、六角精児、筒井真理子、鈴木亮平 ●商品情報 発売日:5月26日(金) ※レンタルも同日リリース 価格:Blu-ray BOX…26,400円(税込) DVD BOX…20,900円(税込) 封入特典:スペシャルブックレット(24P) 映像特典:メイキング、長澤まさみスペシャルインタビュー、長澤まさみ×鈴木亮平×眞栄田郷敦 3ショットインタビュー、渡辺あや×佐野亜裕美 インタビュー、エルピス in カンヌ、八頭尾山連続殺人事件 特集映像、スピンオフドラマ「8人はテレビを見ない」 ※商品の仕様は変更になる場合がございます。 発売元:関西テレビ放送 販売元:ハピネット・メディアマーケティング ©カンテレ
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徹底した娯楽とバイオレンスの巨匠として20世紀後半の日本映画界を怒濤のように駆け抜けた深作欣二。没後20年を迎える今年、改めてその魅力に光を当てるシリーズ企画の第2弾。今回は深作の実質的な最終作となった「バトル・ロワイアル」(00)に出演、その後の人生に大きな影響を受けたという山本太郎氏が登場。いまは国会議員として日々奔走している山本氏に、約20年ごしの“恩師”への思いを聞いた。 「山本太郎と心中する」という言葉 [caption id="attachment_22845" align="aligncenter" width="1024"] ©2000「バトル・ロワイアル」製作委員会 「バトル・ロワイアル 4Kリマスター版」(00)◎東映チャンネルにて4月放送[/caption] ──深作欣二が1962年に撮った「誇り高き挑戦」(62)のラスト、鶴田浩二はいままで嵌めていたサングラスを外し国会議事堂を眩しく見やる。2月15日、その議事堂と隣接する参議院議員会館の6階に山本太郎を訪ねた。現在、参議院議員でれいわ新選組の代表を務める山本は、22年前には「バトル・ロワイアル」(00)で「男子5番・川田章吾」として過酷な戦場にいた。15歳の中学生が主役である映画のオーディションに当時26歳だった彼はなぜ応募したのか。 山本: 深作欣二監督に会いたかったからです(笑)。小学校のとき、「蒲田行進曲」(82)や「里見八犬伝」(83)を、そのあと「仁義なき戦い」(73)を観ていました。受かる、受からないは二の次。 とはいえ、中学生が主役と聞いていましたから、自分の年齢からすると彼らを取り巻く大人の役が順当ですが、主役を獲りたかったんです。そこで、スポーティーな服を着て、若作りして、オーディション会場に向かいました。僕の順番が回ってきて、深作さんに「いくつだ?」と訊かれました。「いきなり来たか」と思って、腹をくくり「19です!」と大声で答えると、「違う。キミの身長だ!」(笑)。 オーディションで演じたのは、僕が藤原竜也と前田亜季の前で亡き彼女の写真を見ながら思い出を語るシーンでした。渡された脚本のコピーを机の上に置いて、僕が何も持たないでしゃべっていると、「手に何か持ってないとダメだな」と深作さんは自分の財布の中からカードを取り出して、僕に渡したんです。「三越カード」でした(笑)。「三越カード! こんな貴重なものをお借りしていいんですか?」と僕がおどけると場が和みました。 芝居が始まると深作さんの指摘や指示はきわめて具体的でした。「ちょっと読んでみて」って言われて、僕がやると、「それじゃあ、もうちょっとここをこういうふうに、こういう気分でやってみろ」と指示する。で、そういうふうにやったら「おお、なかなかいいねぇ」と褒めてくださる。で、「ここをちょっと変える別のパターンでやってみようか」と次に注文を出す。僕が返す……短いセッションの間に、自分が成長し、少しずつ芝居の幅が広がっていくのが分かるんです。「これはオーディションじゃない。大教授から受ける個人レッスンだ」と思えて、嬉しかったですね。 いまでも覚えているのは、前の戦いで亡くなった彼女を偲ぶセリフへの深作さんの注文です。「この段階では自分が経験した出来事からは時間が過ぎているわけだから、いま最近おきたことのようにセンチメンタルすぎないほうがいい。もうちょっと抑えて。その経験が少し遠い記憶になりつつある雰囲気で。もっと淡々とやってみて」とおっしゃった。この贅沢な時間がこのままずっと続いてほしい……と願いました。 ──しかし、オーディションの結果は待てど暮らせど来なかった。 山本: 深作さんとお会いする1カ月ほど前、阪本順治監督の「新・仁義なき戦い。」(00)の面接を受けていて、その結果が出る前に深作さんとの出会いがあったんです。けれどもその後、阪本監督の作品である役をいただける方向になり、出演するか否かを決めなきゃいけなかった。 一方、「バトル・ロワイアル」は使ってもらえるのかもらえないのか、分からない状況でした。痺れを切らしてマネージャーに「バトル」の状況を問い合わせてもらうと、「監督以外、全員が猛反対している」と。製作委員会や東映本社の方たちは、「中学生の話なのに、何であの役が山本太郎なんだ。無理がありすぎる」という理由で。それに対して深作さんが「太郎は絶対に使う」とテコでも動かず、キャスティングは揉めに揉めている。あるプロデューサーが深作さんに、「山本太郎と心中する気ですか?」と訊くと、「ああ、山本太郎と心中する」とおっしゃったと。 この言葉を聞いて、「人生のご褒美だ」と思いました。これを「一生の宝物」にしていこう。深作さんがそこまで言ってくださるのなら、結果的に「バトル」に出られなくてもいいから、とにかく待とう、と心を決めて、申し訳ないけれども、自分から面接を受けに行った「新・仁義なき戦い。」をお断りしました。 ──深作欣二はどうしてそこまで山本太郎にこだわったのか? 山本: どうしてかは聞きそびれました。今、考えると、リアルな10代、本当の中学生では出せない部分を、ちょっと上の年齢になるけれども、僕なら出来るんじゃないか、と見てくださったのかも知れません。 お金を払わないといけない現場 [caption id="attachment_22846" align="aligncenter" width="1024"] ©2000「バトル・ロワイアル」製作委員会[/caption] ──深作欣二と脚本の深作健太は、山本太郎のために「川田章吾」の役を膨らませた。川田は、かつてサバイバルゲームを勝ち抜き、その戦いで最愛の彼女に裏切られ、失ったことで心に傷を負う。登場人物の中でもっとも陰翳が濃い人物を深作は山本に演じさせた。 山本: 撮影に入ったとたん、「これはお金を払わなきゃならないレベルの現場だ」と襟を正しました。自分だけじゃなく、ほかの役者に対しての深作さんのダメ出しや指導の内容が全部勉強になるんです。 たとえば、教室を占拠した兵士たちが騒ぐ生徒に対し銃を乱射するシーン。何回テストを繰り返しても、生徒たちのリアクションに緊張感が足りない。そんなとき、深作さんがいきなり机を持ち上げて生徒たちの目の前の床に叩きつけた。若い生徒たちは何が起こったのか理解できず、慌てふためいた。深作さんがそんな生徒たちを指さし、「いまの表情だ!」。それでみんなが「これなのか」と納得できたんです。 そんなふうに役者の力を高めるための具体的・実践的な指導が毎日行われました。深作さんは抽象的なことは一切おっしゃらない。役者の演技が及第点に届くために何が必要かを、作り手側の意図をしっかりと把握させたうえで、具体的な言葉で語る。 たとえば、断崖の上で、僕と藤原竜也と前田亜季の三人が話している場面をロングショットで撮っているとき、僕らが一生懸命に気持ちを作って芝居をしていると、深作さんが近づいてきて、「いまはこれくらいの画角で撮っている。引きの画では、こまかな芝居をしても気持ちは伝わらない。立ち止まったり、膝をついたり、全身の動きで表現してくれ」と実によく分かるテクニカルな指導をなさった。 それに、深作さんは柔軟で合理的なんです。ある朝、長いシーンのセリフの大幅な改定稿が届いて、セリフは何とか覚えて言えましたが、気持ちが入らず、何回もNGを出してしまった。そのとき深作さんが即座に「カンペだ!」っておっしゃって、カンニングペーパー作るぞ、と大きい紙にセリフを書かせ、「太郎君。セットのどこに貼ってほしい?」。カンペなんてセリフ覚えが悪い役者だけが使うものだと思っていた僕が屈辱を感じていると、深作さんはそれに気づいて、「太郎くん、恥ずかしがるな。丹波哲郎だってこれを使ってたんや」(笑)。実際、カンペを見ながら芝居したら、セリフにとらわれず、気持ちがスムーズに入っていくんです。それで調子に乗ってずっとカンペを見ながらやっていたら、「おーい、男子5番、オールカンニングか」って言われて、「ですよね」みたいな(笑)。 撮影の途中、それまで撮ったラッシュを見るスタッフ向けの試写があったんですが、深作さんは役者全員をそこへ呼んでくれました。「いま自分たちは何を作ろうとしているのか」「あそこで撮ったカットにはどんな意味があるのか」を役者にも共有させ、一緒に映画を作ろうとされていた。僕にとって、こんなに開かれた映画作りは初めてで、こんなに役者にフェアな監督はほかにいませんでした。本当にこの現場が永遠に続けばいいのにと思っていました。 完成した作品を観終えたあと、興奮してしばらく何もしゃべれませんでした。15歳で水戸の空襲に遭い、仲間を失った深作さんが描いた渾身の反戦映画だと心が震えました。 「バトル」の連中は一生の教え子 [caption id="attachment_22848" align="aligncenter" width="886"] ©2000「バトル・ロワイアル」製作委員会[/caption] ──実は深作欣二は「バトル・ロワイアル」のあと、もう一度、山本太郎を自作に起用しようとした。 山本: 「バトル」と「バトル・ロワイアルⅡ[鎮魂歌]」(03)の間に、『愛と幻想のファシズム』(村上龍の小説)と『ザ・ワールド・イズ・マイン』(新井英樹の漫画)の映画化を深作さんと(深作)健太さんが企画されました。深作さんに「主演は藤原竜也で、太郎くんにはおいしい役を演ってもらう」と言われ、楽しみにしていたんですが、9・11の影響もあって実現しませんでした。そのあとの「バトルⅡ」も、深作さんは僕のためにある役を書いてくださったんですが、全体から見るとどうしても必要な役とは思えず、お話し合いの上でお断りしました。 ──「バトル・ロワイアル」の完成後、深作欣二は銀座の東映本社や築地のがんセンターの行き帰りに、当時、山本が住んでいた江東区枝川町のマンションにたびたび立ち寄った。枝川町はかつて深作が「狼と豚と人間」(64)、「解散式」(67)、「血染の代紋」(70)でギャングやヤクザが生まれ落ちた場所として描き、ロケしたところで、東京で最大の在日コリアンの集住区だった。 山本: そんな土地とはつゆ知らず、めちゃめちゃ家賃が安いので枝川町に住んでいると、そこへ深作さんが訪ねてきてくださいました。一緒にご飯を食べ、お風呂で背中を流し、打ち合わせの合間には昼寝もしていかれました。 来られるたびに、しだいにがんの病状が進行していくことが分かりました。ある日、枝川町から深作さんのご自宅(成城学園)までお送りする車中で、深作さんがぽつんとつぶやかれました。「俺はもう長くないことは分かっている。この先、『バトル』のクラスメイトたちの中で、万一、ヤクに手をつけたり、道を踏みはずしそうになるやつがいたら、太郎くんが軌道修正してやってくれ」。そう頼まれたんです。もう自分が余命いくばくもない。その上、今からまた映画を撮らなきゃならない状況にあるのに、最期まで役者みんなのことを心配し続けておられた。「バトル」で使った連中というのは、撮影のときだけではなくて、まさに本当の自分の一生の教え子っていうふうに思われていたんですね。深作さんはそんなふうに、僕だけじゃなく、キャストもスタッフも、メインだろうがサブであろうが、分け隔てなく接した。人に対してものすごく愛情の深い人でした。 それに、社会の底辺でもがき苦しむ人たちに光を与える映画を撮り続けた深作監督と出会えたことが、間違いなく僕のその後に繋がってるように思います。あれからしんどいことがあるたびに、「バトル・ロワイアル」の最後の字幕を思い出すんですよ。「走れ。」。あの一言に僕はいまでもお尻を叩かれています(笑)。 ──そう語る山本の姿は、兵器製造企業の武器密輸を命懸けで暴こうとした「誇り高き挑戦」の業界紙記者、鶴田浩二のあの横顔と、どこか重なり合うように思えた。 [caption id="attachment_22849" align="aligncenter" width="1024"] ©東映 「誇り高き挑戦」(62)◎東映チャンネルにて7月放送[/caption] 取材・文=伊藤彰彦 制作=キネマ旬報社(キネマ旬報2023年4月上旬号より転載) 山本太郎[俳優・参議院議員] やまもと・たろう:1974年生まれ、兵庫県出身。91年、『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の「ダンス甲子園」に出場し、芸能界入り。俳優、タレントとして数々の映画やドラマ、バラエティに出演。主な映画出演作に「バトル・ロワイアル」(00)、「光の雨」「GO」(01)、「ゲロッパ!」(03)など。2011年、東日本大震災を機に反原発運動を開始。13年、参議院議員選挙に出馬し当選。19年、「れいわ新選組」を旗あげ。政治家として原発問題をはじめTPP問題、労働問題、社会保障制度改革など幅広く活動中。著書に『山本太郎 闘いの原点-ひとり舞台』(ちくま文庫)など。 深作欣二 ふかさく・きんじ:1930年生まれ、茨城県出身。53年、東映に入社。「風来坊探偵 赤い谷の惨劇」(61)で監督デビュー。67年からはフリーとして東映、松竹、東宝、大映などでも活躍。73年から始まった「仁義なき戦い」シリーズは大ヒットを記録。同作を筆頭とする実録ヤクザ映画、現代アクションをはじめ、SF、時代劇大作、伝奇物、文芸物など幅広いジャンルの娯楽作品を手掛ける。実質的な遺作となった「バトル・ロワイアル」(00)まで、生涯に手掛けた長篇劇場映画は全60作。2003年、ガンのため死去。享年72。 『没後20年総力特集 映画監督 深作欣二』 ◉東映チャンネルでは1月から9カ月にわたり、全51本という過去最大級の規模で監督作品を特集放映。代表作から希少なドキュメンタリー作品まで、反骨のエネルギーにあふれた数々の作品を、ぜひこの機会に! ▶東映チャンネルの公式サイトはこちら 【没後20年総力特集 映画監督 深作欣二 Vol.4】 2023年4月放送予定 ●バトル・ロワイアル 4Kリマスター版[R15+] 5日(水)20:00-22:00、18日(火)22:00-24:00、27日(木)12:00-14:00 ●柳生一族の陰謀 4Kリマスター版 4日(火)20:00-22:30、11日(火)12:30-15:00、24日(月)12:00-14:30 ●赤穂城断絶 7日(金)20:00-23:00、16日(日)14:00-17:00、25日(火)12:00-14:50 ●バトル・ロワイアルⅡ【特別篇】REVENGE[R15+] 6日(木)20:00-22:50、19日(水)22:00-25:00、28日(金)12:00-14:50 ●宇宙からのメッセージ 9日(日)20:00-21:50、20日(木)22:00-24:00、26日(水)12:00-14:00 ●ガンマー第3号 宇宙大作戦 8日(土)20:00-21:30、15日(土)22:00-23:30、29日(土)12:00-13:30
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ホラーの帝王ダリオ・アルジェントが、殺人鬼に追われた盲目ヒロインの恐怖をスタイリッシュに描き、第72回ベルリン国際映画祭でのプレミア上映で反響を呼んだ「ダークグラス」が、4月7日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサほかで全国順次公開。昭和のアルジェントポスターをオマージュしたレトロポスター、ならびにアルジェントへ宛てた著名人の “ラブレター” が到着した。 レトロポスターでは、アルジェントの代表作「サスペリア」(1977)の名コピー「決してひとりで見ないでください──」が復活。悪夢の鮮血美学を予告する。 〈著名人ラブレター〉(敬称略・50音順) 相沢梨紗(でんぱ組.inc) 恐怖、鮮血、高揚、孤独。激烈なメンタル攻撃を受け、ふわふわと放心するような時間が愛おしくて大好きです。 無事、ととのいました。 綾辻行人(小説家) 2020年代になって、ダリオ・アルジェント監督の新作を観ることができるとは!生きてて良かったです。ありがとうございます。歓喜のあまり今、これまでの全作品を発表順に観直しているところです。 奥浩哉(漫画家) ダリオ・アルジェント氏へ、 あなたの最新作のホラー映画を見て、改めてあなたの才能の凄さに圧倒されました。あなたはホラー映画の世界で、独自のスタイルと個性的な世界観を持ち、多くの人々を恐怖と興奮の世界に誘ってきました。 私もクリエイターであなたの作品群は幼少期から 何度も観てますが、私の作品の血肉になっています。 今もなお、あなたがこのように生気に溢れた作品を 発表してくれることで私も大変勇気を貰えます。 敬意を込めて、感謝を表します。 高橋ヨシキ(アートディレクター/映画ライター/サタニスト) アルジェントの『ダークグラス』越しに、『わたしは目撃者』となって『ジャーロ』の『インフェルノ(地獄)』を見る。『スリープレス』な夜に轟く『鮮血の叫び』に、我々は『血の喝采』を送るのだ! 人間食べ食べカエル(人喰いツイッタラー) 耳に突き刺さるクールな劇伴と予想の斜め上をいく展開で唯一無二のグルーヴを生み出す。 新しさを取り入れつつも、このアルジェントの味は変わらない。丁寧さと乱暴の共存。 これが観たかった。これを待っていました。 平山夢明(作家) まさに御大が原点回帰の迫力。血、犬、ナイフ、そしてパイ! まさにこれはアルジェント版『暗くなるまで待って』と云っても過言ではない? 齢82を超えて、ますますコクと旨味マシマシの天才の手腕をとくとご賞味あれ! 松本光司(漫画家) ダリオ・アルジェントへ、 僕は子供の頃に観た、貴方の映画「サスペリア」や 「フェノミナ」で、ホラーは美しいんだという事を知りました。80を越えた今も、 嬉々と血まみれジャッロ映画を撮るエネルギーに、本当に感服します。 矢澤利弘(アルジェント研究会代表・県立広島大学教授) これほど公開を待ち焦がれた映画があっただろうか。ダリオ・アルジェントの映画が怖いなんて当たり前、映像美だなんて当たり前だ。理屈はいらない。もしアルジェントに伝えることができるとしたら、この一言だけ。「ありがとうございました」 柳下毅一郎(映画評論家) 少年は犬を愛するものだ、とハーラン・エリスンは語ったが 美女もまた犬を愛するのである 山崎圭司(映画ライター) チャオ、ダリオ。 これは貴方の集大成にしてニューモード。恐怖の原点である暗闇に獣の勘が息づき、 黒い手が殺しを奏でると古い石畳が紅に染まる。 娼婦は被害者であり、同時に真実を嗅ぎ当てる強かな追跡者。お見事! Copyright 2021 © URANIA PICTURES S.R.L. e GETAWAY FILMS S.A.S. 配給:ロングライド ▶︎ ダリオ・アルジェント10年ぶりの新作!盲目の娼婦に殺人鬼が迫る「ダークグラス」