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恋が何かも知らない、思春期のひと夏。シャルロット・ル・ボン監督「ファルコン・レイク」
2023年4月19日少年と少女のひと夏の揺らめきを描き、第75回カンヌ国際映画祭監督週間に出品、第58回シカゴ国際映画祭ゴールド・ヒューゴ(新人監督賞)を受賞したシャルロット・ル・ボンの長編監督デビュー作「ファルコン・レイク」が、8月25日(金)より渋谷シネクイントほかで全国順次公開。ティザービジュアルが到着した。なお本作は、Filmarksを運営する株式会社つみきが設立した映画レーベル〈SUNDAE〉の第1弾作品となる。 もうすぐ14歳になる少年バスティアン(ジョゼフ・アンジェル)は、母親(モニア・ショクリ)の親友ルイーズのもとでひと夏を過ごすため、家族4人でケベックの湖畔にあるコテージへ。そして自然に囲まれた日々の中、ルイーズの娘であり、メランコリックで大人びた3つ年上のクロエ(サラ・モンプチ)に惹かれていったバスティアンは、彼女を振り向かせようと幽霊が出るという湖へ泳ぎに行くが……。 『塩素の味』で文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞に輝いたバンド・デシネ作家、バスティアン・ヴィヴェスの『年上のひと』(訳:原正人/リイド社刊)を、俳優として「ムード・インディゴ うたかたの日々」「イヴ・サンローラン」「ザ・ウォーク」「フレッシュ」などに出演してきたシャルロット・ル・ボンのメガホンで映画化した本作。 主人公を撮影時14歳の新星ジョゼフ・アンジェル、ヒロインを約400人から選ばれたサラ・モンプチが演じ、グザヴィエ・ドラン作品の常連モニア・ショクリが主人公の母親役で出演する。 「初恋の激しさを繊細かつ感動的に表現した傑作」(Screendaily)、「残酷でありながら、繊細で美しい青春の肖像」(Ioncinema)など海外メディアも称賛。子どもから大人へと変化する人生一度のトワイライトゾーンを、16mmフィルムの親密な映像で捉えた注目作だ。 「ファルコン・レイク」 監督・脚本:シャルロット・ル・ボン 出演:ジョゼフ・アンジェル、サラ・モンプチ、モニア・ショクリ 原作:バスティアン・ヴィヴェス「年上のひと」(リイド社刊) 提供:SUNDAE 配給:パルコ 宣伝:SUNDAE 原題:Falcon Lake/2022年/カナダ、フランス/カラー/1.37:1/5.1ch/100分/PG-12/字幕翻訳:横井和子 © 2022 – CINÉFRANCE STUDIOS / 9438-1043 QUEBEC INC. / ONZECINQ / PRODUCTIONS DU CHTIMI 公式サイト:sundae-films.com/falcon-lake -
モロッコ旧市街に紡ぐ夫婦の愛と決断。マリヤム・トゥザニ監督「青いカフタンの仕立て屋」
2023年4月19日「モロッコ、彼女たちの朝」のマリヤム・トゥザニ監督が、仕立て屋夫婦の愛と決断の物語を描き、2022年カンヌ国際映画祭国際映画批評家連盟賞を受賞、2023年アカデミー賞国際長編映画賞モロッコ代表作に選ばれた「青いカフタンの仕立て屋」が、6月16日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほかで全国公開。場面写真が到着した。 モロッコの海沿いの街、サレ。旧市街の路地裏でミナとハリムの夫婦は、母から娘へと世代を超えて受け継がれるカフタンドレスの仕立て屋を営んでいる。ハリムは伝統を守る仕事を愛しながらも、自身は伝統からはじかれた存在だと苦悩している。そんな夫を誰よりも理解し支えてきたミナは、病に侵されて余命わずか。そこに若い職人のユーセフが現れ、人知れず孤独を抱えていた3人は、青いカフタン作りを通じて絆を深めていく。そしてミナの最期が刻一刻と迫る中、夫婦は“ある決断”をする。彼らが導き出した答えとは──。 「モロッコ、彼女たちの朝」のルブナ・アザバルが、過酷なダイエットを行って死の迫るミナを熱演。ハリム役を「迷子の警察楽隊」のサーレフ・バクリ、ユーセフ役をこれが映画初出演のアイユーブ・ミシウィが務める。 モロッコのセンシティブな問題を背景にした感動ドラマはもちろん、コーランが響く旧市街、新鮮なタンジェリンが並ぶ市場、大衆浴場(ハマム)、男たちがミントティーを楽しむカフェといった風情ある街並みも見どころ。そして、色とりどりの滑らかなシルク地に刺繍していく伝統工芸の美しさは心を奪う。 マリヤム・トゥザニ監督が「愛する人にありのままの自分を受け入れてもらう 。人生においてこれほど美しいことがあるだろうか」と思いを込めて紡いだ一作、注目したい。 「青いカフタンの仕立て屋」 監督・脚本:マリヤム・トゥザニ 出演:ルブナ・アザバル、サーレフ・バクリ、アイユーブ・ミシウィ 2022年/フランス、モロッコ、ベルギー、デンマーク /アラビア語/122分/ビスタ/カラー/5.1ch /英題:THE BLUE CAFTAN/字幕翻訳:原田りえ 提供:WOWOW、ロングライド 配給:ロングライド © Les Films du Nouveau Monde - Ali n’ Productions - Velvet Films – Snowglobe 公式サイト:https://longride.jp/bluecaftan/ -
世界的再評価が進む鬼才ウルリケ・オッティンガーの〈ベルリン三部作〉公開!
2023年4月18日世界的再評価の機運が高まっているドイツの映画作家、ウルリケ・オッティンガーの〈ベルリン三部作〉が、8月より渋谷ユーロスペースほかで全国順次公開。ティザービジュアルが到着した。 ニュー・ジャーマン・シネマの時代から精力的に作品を発表しながら、日本では紹介される機会が少なかったウルリケ・オッティンガー(1942〜)。2020年ベルリン国際映画祭でベルリナーレカメラ(功労賞)を受賞し、2021・2022年にはウィーンやベルリンの映画博物館などヨーロッパを中心に、大規模なレトロスペクティブが開催された。また美術館やギャラリーでは美術作品が展示され、映画作家として、芸術家として、世界的に再評価の機運が高まっている。そうした中、〈ベルリン三部作〉と呼ばれる「アル中女の肖像」(79)「フリーク・オルランド」(81)「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」(84)が日本公開される(「アル中女の肖像」「タブロイド紙が〜」は日本劇場初公開)。 ドイツ在住の作家、多和田葉子はベルリン国際映画祭での功労賞受賞式で「ダンテは『神曲(神聖喜劇)』を、バルザックは『人間喜劇』を書きました。オッティンガーの映画は、「人間と神々の喜劇」と呼べるのではないでしょうか?」と述べた。また映画監督リチャード・リンクレーターは「アル中女の肖像」を最愛の一本に挙げ、「何度も見たい、爽快な映画」と語っている。 ティザービジュアルの写真は「アル中女の肖像」のワンシーン。赤い帽子とコートを纏った主人公を演じているのは、初期オッティンガー作品の併走者であり、80年代西ドイツのファッションや前衛的アートの世界でアイコン的存在だったタベア・ブルーメンシャインだ。彼女は同作で衣装も担当している。キッチュでスタイリッシュな着こなしをはじめ、その佇まいは〈ベルリン三部作〉のユニークかつユーモラスな世界観と現代性を体現しているといっても過言ではない。 その他、〈ベルリン三部作〉のキャストは、マグダレーナ・モンテツマ、イルム・ヘルマン、クルト・ラープ、フォルカー・シュペングラーなど、ヴェルナー・シュレイターやR.W.ファスビンダーといった映画作家と共にニュー・ジャーマン・シネマを支えた面々。 また、「フリーク・オルランド」と「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」には、デルフィーヌ・セイリグが出演する。彼女は近年、フェミニストとしての活動に焦点を当てたドキュメンタリー映画が制作されたり、フランスで評伝が出版されるなど注目を浴びている。 さらに、パンク歌手のニナ・ハーゲン、ゴダールの「アルファビル」(65)に主演したエディ・コンスタンティーヌ、前衛的な芸術運動〈Fluxus〉に参加したウルフ・ヴォステル、戦後ドイツで最も影響力のある芸術家の一人であるマーティン・キッペンバーガー、ドリアン・グレイを演じる伝説的スーパーモデルのヴェルーシュカなど、知る人ぞ知る多彩なキャストも見どころ。 従来の規範を揺るがし、フェミニズム映画やクィア映画の文脈で論じられるなど、その先進性をもって再評価されるオッティンガー作品。分かりやすさをはねつける過激さを持ちながら、観ることの喜びに誘うユーモアと美意識に溢れている。そして、ベルリンの壁に分断された冷戦下の西ドイツの都市を捉えた映像は、歴史的記録としても貴重。知性と感性を刺激する3作を、スクリーンで体験したい。 オッティンガーはエゴイスティックな自然や予測不可能な人間と向き合う人です。彼女のつける演出は控え目で、監督と演者の両者の間には相互に対する大きな信頼と好奇心があります。こうして撮影された膨大な素材は、後に編集室で壮大な作品へと組み上げられるのです。ダンテは『神曲(神聖喜劇)』を、バルザックは『人間喜劇』を書きました。オッティンガーの映画は、「人間と神々の喜劇」と呼べるのではないでしょうか? 多和田葉子(小説家、詩人)ベルリン国際映画祭でベルリナーレカメラ(功労賞)受賞時の祝辞 「アル中女の肖像」国内劇場初公開 Bildnis einer Trinkerin|Ticket of No Return 1979年/西ドイツ/カラー/108分 監督・脚本・撮影・美術・ナレーション:ウルリケ・オッティンガー 音楽:ペーア・ラーベン 衣装:タベア・ブルーメンシャイン 歌:ニナ・ハーゲン 出演:タベア・ブルーメンシャイン、ルッツェ、マグダレーナ・モンテツマ、ニナ・ハーゲン、クルト・ラープ、フォルカー・シュペングラー、エディ・コンスタンティーヌ、ウルフ・ヴォステル、マーティン・キッペンバーガー Bildnis einer Trinkerin, Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger 飲むために生き、飲みながら生きる、酒飲みの人生。西ドイツのアート、ファッションシーンのアイコン的存在であったタベア・ブルーメンシャインの爆発する魅力。R.W.ファスビンダーが「最も美しいドイツ映画」の一本として選出し、リチャード・リンクレイターが最愛の作品とする。 「フリーク・オルランド」 Freak Orlando 1981年/西ドイツ/カラー/127分 監督・脚本・撮影・美術:ウルリケ・オッティンガー 音楽:ヴェルヘルム・D.ジーベル 衣装:ヨルゲ・ヤラ 出演:マグダレーナ・モンテツマ、デルフィーヌ・セイリグ、ジャッキー・レイナル、アルベルト・ハインス、クラウディオ・パントーヤ、エディ・コンスタンティーヌ、フランカ・マニャーニ Freak Orlando, Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』を奇抜に翻案し、神話の時代から現代までが5つのエピソードで描かれる「小さな世界劇場」。ユニークな映像感覚の中に、ドイツロマン主義の伝統とブレヒトやアルトーなどの近現代演劇の文脈が息づく。 「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」国内劇場初公開 Dorian Gray im Spiegel der Boulevardpresse|Dorian Gray in the Mirror of the Yellow Press 1984年/西ドイツ/カラー/151分 監督・脚本・撮影・美術:ウルリケ・オッティンガー 音楽:ペーア・ラーベン、パトリシア・ユンガー 出演:ヴェルーシュカ・フォン・レーンドルフ、デルフィーヌ・セイリグ、タベア・ブルーメンシャイン、トーヨー・タナカ、イルム・ヘルマン、マグダレーナ・モンテツマ、バーバラ・ヴァレンティン Dorian Gray im Spiegel der Boulevardpresse, Photo: Ulrike Ottinger © Ulrike Ottinger 伝説的なスーパーモデル、ヴェルーシュカが主演。デルフィーヌ・セイリグ、タベア・ブルーメンシャインらが特異な存在感を持って脇を固める。オスカー・ワイルド『ドリアン・グレイの肖像』や「ドクトル・マブゼ」などのモチーフを含み込み、バロックで、デカダンスで、ダダイスティックな独自の世界観を生み出している。 ウルリケ・オッティンガー Ulrike Ottinger 1942年6月6日、ドイツ南部コンスタンツ生まれ。1962年から1969年の初めまで、パリでアーティストとして活動。コレージュ・ド・フランスでクロード・レヴィ=ストロース、ルイ・アルチュセール、ピエール・ブルデューらの講義を受ける。西ドイツに帰国し、最初の映画作品「Laokoon und Söhne(ラオコーンと息子たち)」(1972-73)を制作。1977年にZDFと共同制作した「Madame X - Eine absolute Herrscherin」は、大きな反響を得た。そして〈ベルリン三部作〉と呼ばれる「アル中女の肖像」(1979)、「フリーク・オルランド」(1981)、「タブロイド紙が映したドリアン・グレイ」(1984)を発表。その後、オッティンガーの関心はアジアに向かい、中国で撮影された長編ドキュメンタリー作品「China. Die Künste - Der Alltag」(1985) 、モンゴルでの「Johanna d’Arc of Mongolia」(1989)や「Taiga」(1991-92)、韓国の都市生活を映し出すドキュメンタリー「Die koreanische Hochzeitstruhe」、そして日本では「北越雪譜」を著した随筆家・鈴木牧之の足跡を辿る「Unter Schnee(雪に埋もれて)」(2011)が新潟県で撮影され、多和田葉子が制作に携わり、出演もしている。その他、「Countdown」(1990)、「Prater」(2007)、12時間に及ぶ大長編ドキュメンタリー「Chamissos Schatten」(2016)を制作。60年代パリでの個人的な記憶と社会的、政治的、文化的な激しい動向を絡めた「Paris Calligrammes」(2019)はベルリン国際映画祭をはじめ世界中の映画祭で上映。2020年にベルリン国際映画祭でベルリナーレカメラ賞(功労賞)を受賞。2021・22年にはウィーンとベルリンの映画博物館や、エカテリンブルク、リスボン、ワルシャワ、グダニスク、パリ、コペンハーゲンなどで大規模なレトロスペクティブやシンポジウムが開催。映画および視覚芸術表現の領域において次代に向けた再評価の機運が高まっている。 配給・宣伝:プンクテ 公式サイト:punkte00.com/ottinger-berlin/ ツイッター:twitter.com/ottingerberlin -
松浦寿輝の芥川賞受賞小説を、荒井晴彦の監督・脚本ならびに綾野剛主演、柄本佑とさとうほなみの共演で映画化。ふたりの男とひとりの女が織り成す愛の物語「花腐し」が、2023年初冬にテアトル新宿ほかで全国公開される。ティザービジュアルと場面写真、キャスト・監督・原作者のコメントが到着した。 廃れゆくピンク映画業界で生きる映画監督の栩谷(綾野剛)と、脚本家志望だった伊関(柄本佑)、そしてふたりが愛した女優の祥子(さとうほなみ)。梅雨のある日に出会った栩谷と伊関は、自分たちの愛した女について語り始める。そして、3人がしがみついてきた映画への夢がボロボロと崩れ始める中、それぞれの人生が交錯していく──。 日活ロマンポルノ以来の名脚本家・荒井晴彦が、「火口のふたり」(19)に続く4本目の監督作として選んだ「花腐し」。湿度の高い愛の物語が紡がれる。 〈コメント〉 綾野剛/栩谷役 初めて映画を観た時の事を思い出した。なんだか銀幕の中はひどく残酷で、こちらがそれを安全圏から覗いているとわかりながらも淡々と物語は進んでいく。その当時は、感情を掴み取ることも、感情を移入することもなく、ただただ傍観していた。 しかし、観終わってみれば、独特な達成感というか、やり切った感が身体をほとばしり、それまで経験したことのない感情が湧き立ったものでした。 現在、世の中には沢山の作品が生まれ、沢山の感情をシェアする環境が備り、毎日が選択の連続を生きる中で、この映画は何者なのだろうと考える。 私にとって花腐しは“映画そのもの”でした。産まれる前から映像作品に携わってこられた映画人に魅せられ支えられ、ただただ映画の額面にようやく触れられた想いでした。 本作を皆様の映画鑑賞アルバムの1ページに添えて頂けたら幸いです。 柄本佑/伊関役 去年の何月でしたか、荒井監督から電話があり「佑にホンを送ったんだけど読んだ?田辺が返事がないんだよなって言っててさぁ、、、」と連絡をいただきました。そんな前置きがありホンを読んだ僕は「おっほっほっ、おもしレェー。」と呟きました。「火口のふたり」に続き荒井監督に呼んでいただいた喜びに加えて、とにかくホンが滅法面白い!! いち映画ファンとしてやらなくてはいけない仕事でした。 さとうほなみ/祥子役 脚本を頂いたとき、 ピンク映画業界に纏わるお話であったりそこを取り巻く人々の関係性であったり、 荒井監督が実際に見てきた景色がぎっしり詰まっているんだろうなと感じました。 ですが、映像化の想像があまり出来なかった中でもすでにこの作品に強く惹かれておりました。 祥子という人物の日常を生きているのは、とてもつらくとても幸せでした。 是非ご覧いただきたいと、心より思います。 監督:荒井晴彦 廣木隆一と竹中直人が「花腐し」をやりたがっていると聞いていた。2004年の湯布院映画祭で『ラマン』で来ていた廣木に、『サヨナラCOLOR』で来ていた竹中が、『花腐し』撮りたいんですよ、でも廣木さんが撮るなら、役者で出してくださいよ、と言っていた。帰って読んでみた。難しいな、あの二人、どんな映画にするつもりだったんだろうと思った。「花腐し」は廣木でも竹中でも映画化されなかった。 昔の師匠足立正生にちゃんとした映画を撮らせたかった。足立さんなら「花腐し」をシュールな『雨月物語』にできるかもしれない。原作者の松浦寿輝さんは、映画大学の同僚土田環の東大大学院の指導教授だった。2013年5月、土田に頼んで松浦さんと足立さんの対面をセッティングしてもらう。しかし、足立さんの書いてきたプロットは原作の要約で、こりゃダメだと思った。余計なお世話だった。 やはり何年も撮れていない斎藤久志でいこうと思った。その年の10月、中野太が初稿を書いた。斎藤は、中野の『新宿乱れ街』だねと言った。しかし、金が集まらなかった。 『火口のふたり』の公開が終わって、体力があるうちにまた撮りたいなと思った。『この国の空』の時のようなストレスが無かったのだ。「花腐し」を撮ろうと思った。榎望プロデューサーから紹介されたばかりの佐藤現プロデューサーにホンを送った。2019年10月だ。佐藤さんはやりましょうと言ってくれた。『火口のふたり』はキネ旬ベストワンになったが、コロナでパーティもできなかった。濃厚接触シーンが多い『花腐し』がクランクインできたのは2022年の10月2日だった。『火口のふたり』は安藤尋に撮らせるつもりだった。『花腐し』も自分で撮るつもりで書いたホンじゃない。2匹目のドジョウがいてくれるといいけれど。 原作:松浦寿輝 黒々としたトンネル 小説「花腐し」が、荒井晴彦の手と眼と感性によって、原作をはるかに越えた荒々しいリリシズムが漲る映画「花腐し」へと転生する。ただただ、唖然とするほかはない。降りしきる雨のなか、廃屋めいたアパートへ帰ってきた男二人が、玄関前の路上でへたりこむシーンのデスペレートな徒労感に、やるせない共感の吐息を洩らしつつ、時代も国も個人も、これから黒々とした終焉のトンネルへ入ってゆくのだと密かに思う。 「花腐し」 出演:綾野剛、柄本佑、さとうほなみ 監督:荒井晴彦 原作:松浦寿輝『花腐し』(講談社文庫) 脚本:荒井晴彦、中野太 製作:東映ビデオ、バップ、アークエンタテインメント 制作プロダクション:アークエンタテインメント 配給:東映ビデオ R18+ ©2023「花腐し」製作委員会 公式HP:hanakutashi.com Twitter:@Hanakutashi1110
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オペラが運命の出会いをもたらす感動ドラマ「テノール! 人生はハーモニー」
2023年4月17日一流オペラ教師とその日暮らしのラッパーが織り成すヒューマンドラマ「テノール! 人生はハーモニー」が、6月9日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで全国順次公開。豪華絢爛なオペラ座でのレッスン場面を据えたビジュアルが到着した。 パリのオペラ座・ガルニエ宮に、スシの出前でやってきたラップ好きのフリーター青年アントワーヌ。エリートレッスン生に見下された彼は、仕返しでオペラを真似るが、それがまさかの超美声だった。アントワーヌに才能を見出した一流オペラ教師のマリーは、猛スカウトを開始。そしてオペラに興味を持ち始めたアントワーヌは、“住む世界が違う”と思いつつも、マリーと内緒のオペラレッスンを始める──。 アントワーヌを演じるのは、人気オーディション番組〈THE VOICE〉で準優勝したビートボクサーのMB14。『蝶々夫人』『椿姫』『トゥーランドット』など、劇中すべてのオペラ曲を自ら歌い上げる。マリー役には「100歳の少年と12通の手紙」のミシェル・ラロック。さらに世界的テノール歌手のロベルト・アラーニャが本人役で登場する。 メガホンを執るのは、これが映画単独初監督となるクロード・ジディ・ジュニア。そして『エミリー、パリへ行く』「マンマ・ミーア!ヒア・ウィ・ゴー」の製作者が名を連ねる。 撮影は、数年がかりの説得を経て、多くのシーンを実際にオペラ座で行うことに成功。吹き抜けの間、グラン・ホワイエ(大広間)、シャガールの天井画など、豪華絢爛な舞台や背景も見どころだ。オペラが誘うハートフルな物語に期待したい。 「テノール! 人生はハーモニー」 監督:クロード・ジディ・ジュニア 出演:ミシェル・ラロック、MB14、ロベルト・アラーニャ 原題:TENOR/101分/フランス/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:古田由紀子/映倫G 配給:ギャガ © 2021 FIRSTEP - DARKA MOVIES - STUDIOCANAL - C8 FILMS 公式HP:gaga.ne.jp/TENOR 公式Twitter:@TENOR0609