「哀愁のモンテカルロ」のストーリー

南仏、地中海に面したアンチィブの港にヨットが碇泊している。持主は高名な作家ロバート・スターリング(レオ・ゲン)。彼が行きつけの料理屋へ行くとそこの主人の許婚が数時間前に来た客と駈落ちしたので、主人は狼狽し、客たちはその議論に花を咲かせていた。小説家は「一目惚れ」のありうることを主張し、こんな話をする。--スターリングはモンテカルロにいた。彼の船には、夫を自動車事故で失い、悲しみのまだ醒めぬリンダ(マール・オベロン)という未亡人が彼に誘われて乗っていた。ある宵カジノを訪れたリンダは賭博に熱中している一青年(リチャード・トッド)に心を惹かれた。青年は席を立った。負けて一文なしになったのである。後を追ったリンダは自殺しようとする彼を止め、事情をきいた。そして今後絶対賭博をせぬことを条件に賭博で失っただけの金を彼に与えた。彼女は青年を愛していることに気づいた。青年も巴里に同行しようとしきりにいうので彼女は遂に将来を彼に委ねようと決心したが、青年が巴里行の切符を買いにいっている間に思いなおして船にかえってしまった。しかし、列車の発車時刻が近づくにつれ、理性を失ったリンダはスターリングの忠告をよそに駅にかけつけた。汽車は発った後だった。呆然とリンダが想い出のカジノに這入ると、青年がいた。先夜と変って優勢をつづける彼は彼女に見向きもしない。絶望したリンダが崩折れようとした時、彼女を支えた腕はスターリングのそれであった。--話が終った時、スターリング夫人が入ってきた。併し誰も彼女がこの物語のリンダとは気づかない。