「母千草」のストーリー

戦中のこと、夫が収賄罪で入獄した後、キミは幼い娘美津子を連れ歌を流して暮していた。夫の誠一は或る夜脱獄して姿を現したが、警官に追われて逃れた。キミは美津子を誠一の叔父房吉に預け、旅の一座に加って満州へ興行に出た。大戦は激烈となり、戦後は房吉もその日に困る生活となった。そこへ今は建築会社の社長となった誠一が訪れ、美津子を引取り、二人でキミの帰りを待つ。或日、舞鶴に帰ったキミから電報が来た。二人は早速かけつけ、長い労苦にふけたキミと抱合った。キミは一座の亀之助やお舟と再会を約して別れた。然し長い旅芸人の生活を経たキミは、派手な着物を着て仲間と酒を飲み、とかく世間から非難された。美津子の修学旅行について奈良へ行ったキミは他の父兄が「あんなお母さんでは美津子さんが可愛想だ」というのを聞き、大きな衝撃をうけた。彼女は旅行の途中から、娘の幸福を祈って姿を消し、再び旅芸人の仲間に加った。そして誠一や美津子がいくら願っても帰らなかった。こうして五年。美津子の結婚を知ったキミは式場の外から涙にぬれて見守っていたが、誠一にも新しい後妻の来たのを見て、彼等の幸せを祈りながら立去った。

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