解説
不毛の地アリゾナを舞台に奇妙な登場人物たちが織りなす、一風変わった人間喜劇。「パパは、出張中!」「ジプシーのとき」などで知られる旧ユーゴスラヴィア、サラエボ出身のエミール・クストリッツァ監督が初めてアメリカを舞台に選び、異邦人の目から見たアメリカン・ドリームとその夢の墓場を、不思議な浮遊感覚で描いている。脚本はクストリッツァがニューヨークのコロンビア大学映画学科で講師をしていた時、生徒のひとりとして彼に提出したデイヴィッド・アトキンスのオリジナル。製作は「ベティ・ブルー 愛と激情の日々」「デリカテッセン」のクローディー・オサール。撮影は、監督とは処女作『ドリー・ベルを覚えている?』以来のコンビ、ヴィルコ・フィラチ、音楽は「ジプシーのとき」に続き、旧ユーゴの人気ロックグループ“ホワイト・ボタン”のゴラン・ブレゴヴィッチ。主題歌は彼とイギー・ポップの共作で、イギーが歌う『イン・ザ・デス・カー』。出演は「シザーハンズ」「妹の恋人」のジョニー・デップ、「スーパーガール」のフェイ・ダナウェイ、「ミスティック・ピザ」のリリ・テイラー、「愛と精霊の家」のヴィンセント・ガロ、そしてディーン・マーティンとの底抜けコンビで50年代に一世を風靡した喜劇俳優のジェリー・ルイスら。
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「アリゾナ・ドリーム」のストーリー
広大なアラスカの雪原。イヌイットが獲物のオヒョウの腹を裂き、胃袋で息子に風船を作ってやる。赤い風船は空に舞い上がり、ニューヨークの埠頭で居眠りしていたアクセル(ジョニー・デップ)の元まで届く。漁業局で毎日、魚を数える仕事をしている彼の夢は、アラスカでオヒョウを釣り上げることだ。故郷アリゾナから叔父レオ(ジェリー・ルイス)の使いでポール(ヴィンセント・ガロ)が現われ、レオの結婚式の介添人を努めてくれと言い、アクセルを車に乗せた。キャディラックのディーラーをしているレオは、未だにアメリカン・ドリームを信じていた。彼はアクセルを仕事のパートナーにしようとしていた。アクセルと映画館に行ったポールはスクリーンの前に立ち、上映中の「レイジング・ブル」のデ・ニーロのセリフぴったりに喋ってみせた。彼の夢は映画スターになることだ。結局、車のセールスを始めたアクセルの前に、未亡人のエレイン(フェイ・ダナウェイ)と義娘のグレース(リリ・テイラー)が現われる。夫を射殺した過去のある母の夢は空を飛ぶことで、自殺願望のある娘の夢はカメになること。2人は互いに愛し、憎みあっていた。エレインに一目惚れしたアクセルは、その日から彼女のために飛行機作りに没頭する。レオとポールが彼を連れ戻しに来たり、グレースの妨害にあったりした後に完成した飛行機は、テスト中に落下した。その夜、彼はロシアン・ルーレットを提案したグレースを抱く。ある夜、レオの新妻ミリー(ポーリーナ・ポリスコワ)の知らせでレオが自殺を遂げたことを知ったアクセルは駆けつけるが、彼は虫の息で「夢は終わった。キャディラックは時代遅れだ。お前も大人になれ」と言い残して死ぬ。アクセルはエレインの40歳の誕生日に飛行機を贈る。エレインの飛ばす飛行機を相手に、ポールは「北北西に進路を取れ」の場面そっくりに逃げ回ってみせた。アクセルの心はエレインとグレースの間で揺れ動いた。その夜、嵐の中を出ていったグレースは、2人の見ている前で拳銃で自殺する。アクセルはアメリカにはもう、夢など残っていないことに気づく。レオの店でほこりを被った車の上でアクセルは、アラスカでレオとオヒョウを釣り上げる夢を見た。レオの手にしたオヒョウが空を泳いでいった。
「アリゾナ・ドリーム」のスタッフ・キャスト
スタッフ |
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キャスト | 役名 |
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「アリゾナ・ドリーム」のスペック
基本情報 | |
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ジャンル | コメディ |
製作国 | フランス |
製作年 | 1992 |
公開年月日 | 1994年7月30日 |
上映時間 | 140分 |
製作会社 | コンステラシオン=UGC=アシェット・プルミエール |
配給 | ユーロスペース |
レイティング | |
アスペクト比 | アメリカンビスタ(1:1.85) |
カラー/サイズ | カラー/ビスタ |
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