「暴力」のストーリー
大阪のとある歓楽街の片隅に位置する日の出横町。そこには浮浪者の群れ、空き巣、万引き、刑務所から直行した男、どれもこれも一癖ありげなカゲを持った人生の黄昏族が集っている。この街のアイマイ宿、ことぶき屋の娘孝子は、養父の山田に強いられてポン引きをしている。またストリップ小屋の支配人富坂は孝子の肉体を狙っており、山田を通じて口説き落とそうとしている。しかも孝子は山田を恐れる母のせつと盲目の妹の靜子と、山田に追い出された実父の助藏をかばって、その日暮らしに生きていた。ことぶき屋に宿泊した若い女の鉄道自殺、女流作家の社会探訪、狂える詩人、この街にとってはありふれた数々の事件の中に、犯罪者の高見と木島がもぐり込んできた。孝子は高見にひかれ、高見たちの落ちていく四国の牧場に憧れた。その牧場こそ孝子を泥濘から救う唯一の場所だと思えた。しかしせつたちを説いて四国行きを決心させた夜、山田の密告により高見と木島は捕縛される。孝子の夢は無惨につぶれた。その夜、浮浪者となっている助藏が酔っぱらってことぶき屋に入り込み、せつをはさんで怒号を繰り返す。その二階では孝子への思いを遂げられなかった富坂が盲目の靜子に挑み、靜子は逃げようとして階下に落ちて負傷する。山田と助藏はその靜子を前にして乱闘を始め、激怒した山田は孝子やせつにまで暴力をふるう。孝子は今や一切の憤りを込めて、遂に山田を殺害した。虐げられた女のせめてもの反抗であった。しかしこの街にとっては所詮他人事である。今日も雑多な人の群れが忘却の彼岸に歩みを続ける。狂える詩人は敗残と絶望の詩を相変わらず絶叫している。