「顔(1957)」のストーリー
東海道線の小駅の近くで夜行列車から一人の男が転落、付近の病院で間もなく絶命した。東京への照会で男は飯島といい無免許で堕胎をしていたと判った。警察はこの事件を軽く見たが長谷川刑事は何かあると確信した。果してその夜、病院の死体置場に贈主不明の花束が届いた。ところでここに警察も知らぬ水原秋子という贈主がいた。彼女は元、安酒場で働いていたが、ふとしたことでファッション・モデルの幸運を掴みこれを手放すまいと懸命になっていた。この秋子には、二人の男がいた。一人はプロ野球二軍選手の江波。秋子は彼と結婚しようとしていたが、これを阻むもう一人が飯島であった。飯島は酒場時代の秋子の古傷にふれ彼女を苦しめていた。この悪縁を清算せぬ限り秋子は幸福を掴めそうもない。たまたま、秋子の大阪でのショウの帰りを追って飯島が夜行列車に乗った。洗面所で秋子と口論、もみ合ううち飯島は列車から落ちた。帰京した秋子は江波との生活設計を進めたが、長谷川刑事らの捜査も捗り事件の目撃者石岡三郎を見つけた。石岡は洗面所で秋子の顔を見たという。その新聞記事を見て秋子は遂にモデルをやめ江波と田舎に帰ろうと決心した。ところが秋子の最後のショウに長谷川刑事が石岡を連れ飯島殺し犯人の首実検に来た。驚く秋子。しかし石岡は犯人はいないと刑事に告げた。止むなく警察は石岡を尾行したが見事にマカれた。その頃、秋子のアパートでは江波が田舎へ行くため荷造りをしていた。そこへ現れたのが石岡。秋子がいないと分って去るが表で、帰って来た秋子に会った。石岡は秋子と旅館に連込み脅迫したが、そこを出たとたんトラックに轢かれ死んだ。だが秋子がアパートに戻ると、江波は石岡との関係を難詰、別れると言出した。秋子は、呆然として外に出た。長谷川刑事らは漸く飯島殺し犯人として秋子を突止めた。夜の銀座をさまよう秋子。それをパトロールカーのサイレンの音が、けたたましく追っていた。